どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2011年5月22日日曜日

2000年03月06日 「物騒な国?」


現在3月6日、日曜日の午前10時です。

週末の寮の食堂は「ブランチ」と称して10時から12時までの変則営業で、これから待ちに待った食事の時間です。

なにやら食堂方面が賑やかなので何かとおもったら警察がきています。
聞くと、昨晩午前2時ころに何者かがガラスを割って学校に侵入し、食券売りの自動販売機を破壊して金を奪っていったらしいです。販売機にはせいぜい40ポンド(約7000円)しか入っていなかったと思われ、なかなか大胆というか切羽詰っていたのでしょう。

昨日もラグビー仲間のジョージが浮かぬ顔をして歩いていたので声を掛けると、寮の駐車場にとめておいた車の窓ガラスが割られてカーステレオを盗られたとのこと。
この駐車場は以前にも車3台が盗まれたことがあって、あまり治安のよろしくない場所なのです。

以前車の購入を前向きに検討したことがありましたが、この盗難のリスクを聞いたり見たりして知っていましたので二の足を踏んだことがあります。
今乗っている自転車もクラスの友達から譲ってもらった「年季」と「サビ」の入ったオンボロ自転車で、誰も好きこのんでこんなものを盗るヤツはいないという点で安心できる一台です。
ピカピカの新車であればいつもヒヤヒヤしていなくてはなりません。

街中では自分の自転車の前輪だけ手に持って歩いている人をよく見かけます。
どこかに駐輪して鍵をかけて前輪だけは持って歩くという面倒臭さ。
でもそうしないと前輪はアッという間に盗られてしまうのでしょう。

僕の通う学校の周りには畑ばかりでほとんど何もなく、通りがかりの犯行ということは考えられず、何者かが狙ってわざわざどこからか来ているということだと思われます。
ヨークという平和な田舎町ではあるものの、日本とは違う心構えが必要です。
街を歩いていてヒヤッとしたことは今のところありませんが、これからは少し気をつけないとイカンと胆に命じた次第です。

では、これからイザ朝食へ・・・。

そして、朝食を終えて部屋に戻りました。
そんなに物騒でよろしくない国なのかというと、ついこの前ありました、良いことが。

この学校がある村には郵便局というものがないため、隣村まで自転車で行かねばなりません。
大した距離ではないのですが、ダラダラ坂があって結構しんどいのです。

ある日郵便局の窓口で郵便物を差し出して料金を払おうとして自分の財布の中にほとんどお金が入っていないことに気付きました。

お金を取りに寮に戻るとなるとダラダラ坂を登り寒風吹きすさぶ中自転車をこがねばなりません。
財布の中にはキャッシュカードがありましたが、最寄のATMは更にふたつ隣りの村まで行かねばなりません。

「ウーム、参ったなこりゃ」と悩んでいると、郵便局員と僕の会話を聞いていたオジサンが「そのATMのある村まで車で行ってまたここに戻ってくるんだけど一緒に来るかい?」と声を掛けてくれました。

まさに地獄に仏。

ホイホイと助手席に乗せてもらいATMで金をおろして郵便局に再び舞い戻りました。

車中ではラグビーの話で盛り上がり意気投合しました。
名前を尋ねると、「オイラかい?オイラは薄毛のクリスさ。」と頭頂部をキラリと光らせてその場を去っていったのでした。
ありがたや、ありがたや。

人の温かさにふれた、そんなハートウォーミングなエピソードでした。
でも、車の中でボコボコに殴られ半殺しにされ、脅されて有り金すべてATMで出金させられて挙句に殺される、なんてホラーな事態もありえたわけでちょっと紙一重だったかなとも思いますが・・・。

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