どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2014年4月26日土曜日

2003年09月10日 「新学期」

ついに始まりました。
新学期です。

興奮していたためか、6時過ぎには目が覚めてしまい、ネコにエサをやり紅茶をすすりつつゆったりとした幕開けです。

これからの一ヶ月間は「導入期間」といって、コピー機をどうやって使うか、どうやってそれぞれの建物に入るか、などの基本的な説明やIDカードを作ったり、広大な植物園内の各施設の説明などにあてがわれ、いわゆる「ソフト・ランディング」です。

ソフトとはいっても今日(火曜日)はいきなり「土壌学」の講義があり、約2ヶ月遊びまくった脳ミソには刺激が強すぎました。

今年のメンバーは合計13人。

ドイツ、スペイン、韓国、日本、そしてイギリスと国籍もマチマチなら、男女比は7:6とほぼ半々。

加えて言えばゲイもいます。
僕ではありませんので念のため。

年代も下は19歳から上は39歳(僕は上から2番目)とバラエティに富んでいます。

歴もそれぞれで、韓国人の女の子は流暢な(ほとんどネイティブ)日本語を話すので聞いたら東大の大学院と米ハーバードで建築のマスターを取ったのだとか。

恐れ入りました。

キュー・ガーデンに携わるにはウェッブサイトを見てもらえれば分かるかと思いますが、インターンシップなど様々な方法があるのですが、このキュー・ディプロマは扱いが別格なのです。



キューの中にある「園芸学校校舎」には歴代の生徒の写真が年代ごとに飾られ、細かく見るとケンブリッジ大学の植物園の総責任者や温室の責任者などの妙に若い写真も見つけることができます。

因みに僕は41期生になります。

初日は写真撮影の嵐で、ID用の写真、集合写真、そしてプレス用の写真と称してスコップなどを持ってわざとらしくポーズを決めたりました。

新聞や、雑誌などに今後載るそうで、かなり恥ずかしい内容になっています。

日本の新聞社も教えろというので「朝日」「毎日」「読売」「日経」「産経」を言っておいたので、ひょっとすると・・・。
今思えば「東スポ」と言えば良かったかなと後悔しています。

そして極めつけはBBC。

BBCは言うまでもなく英国の国営放送ですが、彼らは今年の6月からキューにへばりついて「キューの1年間」という番組を作成中だそうで、キューについて広く、植物、歴史、建物、イベントなどを取材していて、その一環として「キュー・ディプロマの生徒たち」というのも追っているのだそう。

初日の校長先生をはじめ主要なスタッフを交えたセレモニーからカメラクルーが入り、「こりゃエライことダ・・・」と固唾を飲み込むばかり。

今日は個人的にインタビューをさせてくれというので、引き受けたのはいいのですが、当然にしてエイゴですので、アガッテしまったことも加わって言いたいことの10分の1も言えず、後悔しっぱなしです。

アレがオンエアされて英国内に恥をさらすのかぁ・・・と思うと穴があったら入れて下さい!!という感じです。

そんな思わぬ展開をみせつつ、季節は夏から秋へと淡々と進んでいくのでありました・・・・。

2014年4月8日火曜日

2003年09月07日 「引越し(仕上げ編)」



気が付けば9月。
早いものです。

思えば6月20日に学校を終えてからの約2ヶ月、「これ以上はムリ」というほど遊びました。

キャンプをしながらスコットランド、湖水地方、イングランド北部を回り、ケンブリッジにては友人宅を泊まり歩き飲み歩き、無事にロンドンへの引越しを済ませ、仕上げとして先日まで約一週間イタリア北部とスイスにアルプスの山々を見てきました。

車を借りて総移動距離が1000キロを超え、移動し過ぎという嫌いもありましたが、それでもイタリアのドロミテ山塊、スイスのインターラーケンから上がったところにあるグリンデルワルドから見るアイガー北壁、ユングフラウなどの名山を堪能して2003年の夏休みを締めくくったのでした。

山や景色は幾つの言葉を並べても語れるものではありません。

取り敢えず「スゲー」の一言です。(写真を一枚だけ添付します)

語るべきはやはり食べ物でしょうか。

パスタ、ピザ、ワインをこれでもか、これでもかと繰り返して食べておりました。

ウマイっ!そして安いっ! 嬉しいじゃあないですか。もし許されるのならイタリアに別荘を建てて一年の4分の1位は居てやってもいい、という気分になります。

加えてリゾットもイケたし、スイスにてはフォンデュが美味かったです。

チーズとワインってのは、誰が考えたのか、ギョウザとビール位にシックリときますね。

しかしスイスは物価が高すぎて、貧乏学生の許容範囲を越えてしまい、こだわるべきはポルトガル、スペイン、フランス、イタリアといった南欧の物価の安いところだなぁと改めて思いました。

さて、ロンドンの新居に帰ってみると、大家さんはフランスの別宅に行ってしまい9月21日まで帰ってきません。

しかし、いきなりそんな怪しげな東洋人を住まわせ、鍵から何から一切預けて3週間も家を空けるとは、随分と信用されたものです。

因みに「契約書」も交わしていませんし、「敷金」の類も不要とのこと。

世田谷、目黒の駒場近辺には「東大生のみ」という下宿も存在すると聞きますが、フトそんなことを思い出してしまいます。

今日は旅の疲れかグッスリと眠り、昼前に起きてから、ネコにエサをやり、庭で紅茶をすすりながら新聞を読み、自転車で近所を徘徊といったノンビリとした週末です。

あさってからいよいよ新生活が始まります。

今は期待と不安が丁度半々といったところでしょうか。

この年齢でこういった気分を味わえるというのもシアワセなのかもしれません。

キューでは、胸に刺繍の入ったポロシャツ、ティーシャツ、フリース、スエットシャツなどを支給されるのですが、これは職員にのみ着ることが許されるもので、いわば「アカクロ・ジャージーの早稲田ラグビー」もしくは「清原がPL卒業時に憧れた読売のユニフォーム」といったところでしょうか。

僕も一介の園芸人として、このシャツには思い入れがありますので、月曜日に支給されるであろうこのシャツに袖を通す瞬間のトキメキを今からドキドキしながら落ち着かない週末です。

ネコのためか、ややクシャミがちな土曜日の夜。

ここキューはロンドンヒースロー空港が近いために引切り無しに旅客機が低空で通り過ぎて行き、夕方にはJALのマークも見かけました。

そうかぁ、この飛行機は12時間かけて日本からきたのかぁ、と少々感傷的にもなりつつ。