どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2016年3月10日木曜日

2004年10月23日 「パリ不思議体験の記」


前略

先週末に月、火とくっつけて3泊4日でパリに行ってきました。

実は一ヶ月ほど前に高校時代の後輩の女の子から「パリに行きますが会いませんか?」とメールが来て、かねがね「パリには行かねば」という気持ちがあったので、「OK!パリで逢いましょう」となりました。

その彼女は相当な歌舞伎ファンで現在パリで行われている市川海老蔵の襲名披露を見るためだけに遥々やってきた模様。

なんていったって土曜日の夜来て日曜日に歌舞伎を観て月曜日の昼過ぎには帰っちゃいましたから。

「時間が許せば一緒に見に行きませんか?」というので、時間は許すけどチケット代が許せばネ、とかえしたところマアマア手の届く範囲でしたのでパリにて歌舞伎初体験をいたしました。

そもそもミュージカルなどは必ず途中で寝てしまうタイプなので、「歌舞伎なんて大丈夫か?」という不安がありましたが、開演前に彼女の熱心な解説で予習をした結果、かなり楽しんでしまいました。

というか、面白かったですし、日本人であることを誇りに感じたりして。

つくづく自分の教養の無さに嫌気はさしましたが。

当たり前ですが、ホンモノの歌舞伎。

ホンモノの日本文化。舞台、流れてくる音楽など、日本で過ごした小さい頃をフト想い出してムショーに懐かしくなりました。

というのは僕の祖父がこういったのが好きでテープなどを流して聞いていたのでそれを想い出したこと。

さらに、小学生の頃見ていたNHKの「新・里見八犬伝」の舞台に
多少通づるところがあったこと、などで一気に胸がきゅーっとなってしまいました。

舞台の上にはフランス語で字幕が出る仕組みになっていてフランス人にも分かるようになっています。

日本語の字幕も出せばいいのに・・・。

演目は①鳥辺山心中②口上③鏡獅子で、口上はフランス語を交えてで、「にらみ」なども初めてナマで見ました。

隣に座った彼女が「ニラまれると良い事があるんですよ」なんて解説してくれて、「おおー、こっちニラまないかなぁー」とこぶしを固め
て期待したりしましたが、どうやら視線はあさっての方を向いていた気がします。

更にパリ在住のやはり高校時代の後輩(といっても全く面識無し)も合流し、中近東でよくあるシーシャという水タバコを体験したり、その後ベトナム料理屋でフォーという麺を食べたり、DIMEという日本の雑誌にある「前頭葉刺激地帯」という記事で見かけたことのあるミドリという和食屋で寿司を食べたり、「一体オレは何処にいるのだ?日本か、パリか、ベトナムか、はたまた中近東か??」ととても不思議な気分でした。

加えてこの高校時代の後輩の女の子たちは、確かに同時期に同じ学校、寮にいたことは事実ではありますが、それほどというか全く親しかった訳でもないのにこうやってフランスの空の下で時を越えて再会を果たすというのはとても不思議なものがありました。

さて、宿は相変わらず貧乏旅行でパリにてテントを張りキャンプしました。

初日は様子があまり分からず夜中にかなり寒い思いをしましたが、翌日以降は装備も整えてそれなりに快適なキャンピング・ライフでした。
因みに一泊11ユーロ也。

一方、その日本から来た後輩の女の子とは彼女のホテルのロビーで待ち合わせしましたが、それはそれは豪勢なホテルでたまげてしまいました。
因みに一泊300ユーロ也。

彼女が帰った後はかねてからの「やらねばリスト」に長期間登載してあった「モネの庭訪問」を果たすこととなりました。

これはジベルニーというパリから電車で約1時間いったところにあり、モネが創作活動をした家があり、併設の庭には彼が描いて有名になったハスが浮かぶ池のある庭があります。

この庭に対する期待があまりにも大きかったため、現物を見てかなりガッカリしてしまいました。

彼の絵でみるから良いのであって、庭としてのレベルはあまり高くないと感じました。

例えば鉢植えの鉢はテラコッタではなく、既成のプラスチックの鉢ばかりです。

更に日本人観光客のツアースポットになっているようで、次から次へと観光バスが日本人団体を連れてきます。

「スミマセーン、シャッター押してもらえますかぁ?」とおばさんに言われシャッターを押したのがキャノンのイクシーなるデジカメ。

液晶モニターがバカでかく、ボディーが驚くほど薄く、「いまどきのイクシーってこんななのかっ!?いいなー。しいなー」と自分のレンガ、もしくは豆腐一丁のようなデジカメを見て切に思いまし
た。

凄いですね、日本のテクノロジーって奴は。

家の中も見学できるようになっており、モネが収集した広重などの浮世絵のコレクションが圧巻です。

特に歌舞伎を観た直後で、妙に日本伝統文化鑑賞モードが異常に高くなっているときでしたので、庭そっちのけで浮世絵を堪能しました。

これ一枚をくすねて、テレビ東京のお宝鑑定にだしたら幾らつくだろうか・・・などと下世話なことを考えておりました。

最後に。

イギリス人はフランス人が嫌いで、フランス人はイギリス人が嫌い。というのは一般論ですが、やはりそうかな、と。

というのは英語で話しかけても本当に冷たいものでした。

道に迷ってもあまり親切には教えてくれません。

明らかに分かっているのに英語では答えてくれませんでした。

フランスなんだからフランス語で、というのは当然のスジではありますが、困ってるんだから答えてくれたっていいじゃんサ、とかなりカチンときました。

これは都会だからでしょうね。

田舎ではあまりこういう経験はしませんでした。

写真を2枚。

一枚はなにやら怪しげな、水タバコ喫茶で水タバコに耽るワタクシ。因みにワタクシは喫煙しませんが後輩が「私もタバコは吸いませんが水タバコは大丈夫です。絶対楽しめます」と説得され恐る恐る吸ってみたところこれが本当に楽しめました。

二枚目はパリの夕暮れ。セーヌ川沿いにエッフェル塔が見えます。ロンドンの方が庶民的で好きですね。

ではまた。



2016年2月9日火曜日

2004年10月11日 「秋~悲しき近況など」



つい昨日、忙しくなってきたけど調子は良いカンジです、なんてことをいったばかりですが・・・。

今朝は日曜日だってのに、6時半から起きて、月曜日にある植物名の試験に向け机に向かい、朝食もしっかりと作って食べて、「今日はやることが山ほどあるあるのだ。時間はムダには出来ん」と庭仕事のバイトに繰り出すべく我が愛車(自転車)で出掛けようとしました。

そこで見た光景を理解するのにしばらく時間が掛かりました。

というのは自転車が無いのです。

さらに地面にはチェーン錠が落ちています。

「アレ、酔ってパブに自転車を置いてきたっけかな・・・」などとつらつらと考えつつ、落ちていたチェーン錠を拾い上げて納得。

盗まれたのです。

どうやら犯人は昨晩僕が帰宅した21:00から今までの間に明らかに狙いをつけて僕の自転車を奪っていったようです。

というのは、自転車の盗難は結構頻繁にあることなので、かなりシッカリとした鍵をつけており、気まぐれで失敬、といったものではなく専用の鍵カッターを使った大胆なプロの犯行です。

無残に切られた鍵の残骸をみて力が抜けましたが、ここまでくると「あっぱれ!お見事!!」と褒めたくなってしまいますね。


これで盗られるのだったら何をしても無駄といったところです。

まあこんなことは英国ではよくあることなので、「超・高級自転車」には乗っておらず、かといってそれなりに遠出など快適に出来るものというコンセプトで自転車を選びましたので、そりゃショックですが、回復もまあまあ早いです。

困るのは、この自転車につけてあった前後のライトも自転車ごと消え失せたこと、鍵も壊されたこと。

自転車は必需品で無いと生活に支障をきたしますので、気持ちを入れ替え早速新車を買いましたが、これに合わせてライト前後と鍵をも新調せねばならず、かなりの痛手です。

自転車屋で店員の「×××ポンドです」という声を聞いて思わず「アウチっ!!」と言ってしまったほどです。

鍵は今度はまさにケチらず最高のものを買いましたが、これとてその気になったプロが狙えば赤子の首をひねるが如く、でしょう。

警察に知らせたところで出てくる確率はほぼゼロでしょう。

でも大家夫婦はかなり同情してくれて、警察に被害届を出して、それをもとに「大家の自転車だった」ということにして大家の「家財保険」を請求してくれるとのこと。

上手くいくかは分かりませんがいずれにしても有難いことではあります。

英国に来て、犯罪の憂き目にはこれまで遭ったことがなかったので、ちょっとショックです。

でもこれが自転車でよかったな、とも。

これがパソコンだったり、あるいは自分自身だったりして怪我はたまた命を落とすようなことでなくて良かったです。

おかげで今日の予定は狂いっぱなしで困ったモンです。

自転車を新調したってのにちっとも嬉しくないですよ。

アンニュイな日曜日の夕方でございます。

ではまた。ごきげんよう。


タテバヤシ

追伸)このアンニュイって今日の今日まで「日本語」だと思っていましたが違うんですね。
変換しようとしても全然ダメなので辞書を引いてみたらナント、ENNUI、フランス語だったとは知りませんでした。
知ってました?


2016年1月26日火曜日

2004年10月10日 「秋~多忙なる近況など」



秋深しといった風情です。

今月末にはサマータイムが終了し冬に向け一直線ですが、最近の朝の暗いこと。

植物園まで自転車をこいでいくのですがその間は前後共にライトを点けないと危ないほどです。

そして吐く息はどこなく白い。

「きこり」セクションに移り一週間が経ちました。

最近のトピックスを幾つか。

まず本日、かねてから念願だったボートクラブに加入しました。

これは近所にあるボートのクラブで「パットニータウン・ローイングクラブ」といって、テムズ川でボートを漕ぐというもの。

シングルスカル、ダブルスカルといったスカル、そしてフォア、エイトといったボートまであって今日は植物園の仲間であるアンディと二人で入会申し込みをしました。

という訳でこれから週末は二人して、初めて挑戦するボートなるもので汗を流し、新境地を開こうというのものです。

思えば最近は運動はサボリ気味でしたので何かしらこうやって強制的にでも身体を動かすというのはいいもんではないかと思います。

これから2回の新入向けのセッションを経て晴れてテムズ川にデビューします。

そしてキューガーデンで英国を代表する2名の有名女性にこの半年内で会いました。

というか目撃しました。

一人目は女王陛下、クイーンエリザベスです。

彼女はモノモノしい警備の中、御付をゾロゾロ引きつれ、キューガーデン名物のパームハウスを見に来ました。

そして二人目は元英国首相マーガレット・サッチャー。

これは昨日、やはりパームハウスを中心に来園した様で女王に比べれば格段に少人数の御連れとともに園内を歩く姿を目撃しました。

「これが鉄の女と呼ばれたサッチャーかぁ」と感心はしましたが、女王、サッチャーともにたんなる老婦人といった感じでさほど感動はしませんでした。

僕にとってはやはりイングランドラグビー「元」キャプテンのローレンス・デラーリオに近所のスーパーで遭遇した時のほうが100万倍コーフンしました。

トピックス最後としては再来週に3泊4日でパリに行ってきます。

特筆すべきは渡英以来貯めてきたスーパーでのポイントを今回は初めて使ってパリ=ロンドン往復をほぼタダでやってしまおうということです。

スーパーでポイントをコツコツ貯めるジョンを笑ってきましたがついに僕もスーパーのポイントで旅をするようになりました。

パリでは当然買物が目的ではなく、今月一杯開園のモネの庭を訪ねることです。

のモネの庭はワタクシの「やらねばリスト」にかなりの長期間に渡って登載してあったのもので、ついに念願かなうとったところです。でも蓮などの季節は過ぎているためちょっと寂しい庭だとは思いますが。

貧乏旅行は相変わらずで、パリという大都会でありながら宿泊はシャンゼリゼから15分という場所にあるキャンプサイトでキャンプです。

なんと一泊11ユーロ。

い。

パリでキャンプとは逆になかなか粋ではないかと、今から楽しみです。

課題、試験など最近はちょっと忙しくなってきました。

コレに加えてボート、さらには庭仕事のバイト・・・なんて大丈夫かしら、と一抹の不安はありますが、ともかくはやってみようと。

テムズ川にデビューしましたらば、また改めてご報告いたします。

写真は最近湖水地方に山歩きに行ったときのもの。

ちょっと気取っております。

では、また。