どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2014年1月28日火曜日

2003年07月19日 「3年ノーサンバランドへ」



どうやら夏休みシリーズの様相を呈してきましたが、今回はイングランド北東部のノーサンバランド地方(Northumberland)へ、ケンブリッジの植物園のジョンとマークの3人で「パフィン」という風変わりな海鳥を見に出掛けておりました。

言い出しっぺはジョンで、「パフィンをこのビデオにおさめたいのだ」という要望に従い、マークと僕はこの地方はパフィンは別としても海も山もいける風光明媚な場所なので「行こう行こう」と盛り上がり実現しました。

マークは彼女のヴィッキーを置いてきての3泊4日の旅で、主導権を握られている彼としては大英断の旅です。

天気オタクのジョンが「この4日間は保証するっ!!」と宣言しただけに4日間とも快晴。

海鳥を見る遊覧船ツアー、田舎道のハイキング、庭園巡り、そして仕上げは地元のパブでご当地ビール・・・と4日間はアッという間に過ぎたのでした。

海鳥を見るツアーでナショナル・トラスト所有のファーン島(Farne Island)に上陸すると、そこにはおびただしい海鳥が巣を作り子育てをしています。

子供を守らんかなと、我々の頭をツツキに鳥たちが襲いかかってきます。

最初にビデオ撮影に夢中なジョンが頭をつつかれた時はマークと僕は二人して腹を抱えて笑っていたのが、そのうちにそんな余裕がなくなるくらいに激しい猛攻撃。

船上でガイドが「帽子をかぶることをオススメします」と言っていた意味がようやく身をもって理解できました。

今回もジョンはみせてくれました。

「キャンプはねぇ・・・」と尻込みしていたくせに、初日の夜の天気が良く快適だったことに加え、神秘的な満月と宵闇のなんとも幻想的な空が気にいったようで、毎朝「今日もここにしよう」と自らキャンプ料金を管理人に払いに行っていました。

「いいねぇ、キャンプ。オレも大分アウトドアのベテランに見えるだろう?」とまあ現金なものです。

しかし、彼にとって致命的な大問題がキャンプ生活には隠されていたのです。

それは「バッテリー」。

彼のビデオ狂い振りは時に閉口モノですが、それはバッテリーあってこそ。

通常は3つの予備バッテリーを使い分け一日を凌ぐのですが、3泊4日は無理です。

「どうすんだろうね」とマークと話していたら、ジョンはスックと立ち上がり充電器を握りしめ、やおらお隣のキャンピングカーで来ていたおばさんに、「これ充電してもらえませんか?」。

マークと僕はのけぞってしまいましたが、キャンプ場の人々というのはえてして気さくで、「いいわよ、いいわよ」とジョンをキャンピングカーに招き入れたのでした。

キャンピングカーの窓越しに僕とマークに向かってガッツ・ポーズを見せるジョン。

僕らは更にのけぞってしまいました。

翌朝、ベーコンとタマゴで朝食等といって前日にスーパーで買い出してあったものを料理しようとしたところ、「燃料買い忘れた!!」とジョン。

マークと僕は、朝食諦めモードになったところ、ジョンが再びナベを抱えて、隣のキャンピングカーに。

「火を貸してくれませんか?」といって、見事にベーコンとタマゴを料理してきてしまいました。

様子を見に来たおばさんが、紅茶も差し上げましょうか?と言ってくれマークと僕は大恐縮しつつ「ハイ」と答えると、ジョンは「コーヒーがあったら、コーヒーの方が良いんですが。」

結局、紅茶、コーヒーなどをすすりつつ、美味しい朝食ではありましたが。



そんな笑いの絶えない旅で、一人旅もいいけどこうして気の置けない友人と楽しく旅をするっていうのも良いモンです。

僕はこれからケンブリッジに向かい、土曜日は温室の責任者のロブと奥さんのモニカと3人でサンドイッチで行われている「全英オープン」を観にいきます。

日曜日はそのロブの誕生日で、奥さんのモニカがロブに内緒でパーティーを企画しているとのこと。

来週一杯は、約一年振りにケンブリッジの植物園で働くことになっています。

トレーニーとしての期間を終え、もうこの植物園で働くことは無いだろうと思っていたのに、短期間とはいえ再び皆と働けるということで今からワクワクしています。

あとは引越しです。

この4年間で荷物がおびただしく増えていることに驚かされます。
取りあえずモノゴトを前に進めることが大切だと言い聞かせつつ。
それでは、また。

写真は
1.ホーリー島 (ボートを切って倉庫に。この発想がステキ)
2.朝食準備中
3.英国園芸史上の巨匠、ジーキル女史による植栽とされる庭



2014年1月23日木曜日

2003年07月19日 「ビザ」

立て続けになんですが、興奮してこれをしたためています。

キュー・ガーデンからは合格通知を貰ったものの、それは全てビザ次第ということで、ここ数ヶ月落ち着かずにおりましたが、先ほど連絡が入り無事許可になったとのこと。

キューに預けてあったパスポートにはキチンと許可のスタンプが押されてそれには2006年9月までとなっているとのことで、いよいよあと3年、念願叶って茨の道を歩くことになりました。

今後はロンドンでの住居を探したりせねばなりませんが、ともあれ野望に向け一歩前進したことをお知らせいたします。

2014年1月14日火曜日

2003年07月05日 「独り湖水地方へ」



スコットランドから戻り、洗濯をし、テント・寝袋を陰干し、間もなく今度は湖水地方に3泊4日で遊びに行ってきました。

何故、焦ったように遊んでいるかというと、今月一杯でヨークを引き払ってしまうと、この英国北部はかなり遠い場所となるからです。

今回の湖水地方は片道寄り道しつつノンビリ行ってもヨークからは3時間。

ガソリンも途中で給油せずにいけます。

日本でもかなり名の知れた観光地ですが、観光の中心地ウィンダミアは避けて、コニストンに2泊、ケズウィックに1泊しました。

起床し、洗顔すると村の喫茶店でフル・イングリッシュの朝食をとり(フライド・エッグ、ベーコン、ソーセージ、ビーンズ、トマト、トースト等)、当日の行動計画を練ります。

今回のテーマは「山歩き」。

朝食後、リュックに雨具、ミネラルウオーター、サンドイッチ、バナナ、チョコレート、双眼鏡、カメラなどを搭載し、18時過ぎまで毎日ひたすら山、谷を歩きまくりるというもの。

幸いに天気に恵まれ、初日以外は汗だくで山を満喫しました。



下山するとテントに戻り、ケチなシャワーを浴び一日の汗を流し、地元のパブへ。

前調査でこの地には1998年の全英最優秀ビールに選ばれた「コニストン醸造所のブルーバード」という地ビールがあると判明していたので、なんとしてもこれを飲むと意気込んで繰り出しました。

適度な運動の後、そして山の良い雰囲気も手伝って、夏風のフルーティーなこのビールはかなり美味しかったです。

ここでビールと一緒にパブで夕食にも手を出したいところですが、現在は超・緊縮財政ですので贅沢は許されず、テントに戻りパン、コールスロー、ワインをやりつつ、日が暮れるまで本、新聞を読む、といったパターンでした。

山歩きのいいところは、「気さくな山男・山女」に会うとういうことでしょうか。

すれ違うたびに挨拶を交わすのは言うに及ばず、立ち止まって話し込むことともシバシバで、これが結構楽しかったです。

特に、チャンとした地図を持っていなかったので、二股路などで「ウーム、右か、左か・・・」と悩んでいるようなときには、ホント親切に教えてくれます。

逆に僕が「コレは××で・・・」と植物のことを教えてあげると、「へー、何でそんなこと知ってるんだい?」と不思議な東洋人だったようです。

しかし、出会ってそういうやり取りをするのは、大抵50代、60代の熟年夫婦で、若い女の子のグループなどには出会わなかったです。

「キャー、お花のことそんなに詳しいんだぁー、もっともっと教えてー」・・・なんてね。

路に迷いそうになっていると前方から短パン、ポロシャツの頭の禿げたおじいさんが通りかかり、これまた親切に教えてくれました。

聞くと、定年になりこの湖水地方に居を移し、老後を山を歩いて過ごしているのだとか。

「じゃ、楽しみたまえ」と颯爽と歩き去ったその老人、カッコ良かったです。

分もああなりたいと憧れちゃいましたね。

そんな訳で、起き、食い、歩き、飲み、寝る、というシンプルな休暇、満足度はかなり高いです。

明日は例の隣村のおばあさんの庭の手入れをして「お小遣い」を少々稼ぎ、来週はケンブリッジのビル君と合流し、ロンドンにコンサートなどを観にいく予定です。

そして来週末は、ケンブリッジからジョン、とマークという二人が遊びに来て3人でイングランド北部のノーサンバランド地方に「パフィン」という風変わりな海鳥を見にいこうといっています。

こんな調子でカレンダーを見ると遊びの予定で、「ビッシリ」です。

一方、4人で暮らしていた我がアパートも既に2人が出て行き、現在50代のおじさんと二人暮らしです。

このおじさんとはあまりウマが合わないので、それが僕の「外出」に拍車をかけているともいえますが。

いずれにしても引越し準備もボチボチ始めねばなりません。

日本は梅雨時の鬱陶しい季節でしょうか。どうぞ体調万全でお元気で。

では、また。
写真は「ひたすら歩いた、快晴の湖水地方」の様子です。