どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2012年9月30日日曜日

2002年01月13日 「疲れました・・・」



疲れました・・・とは何やら遺書めいておりますが、実際少々へこんでこれを書いております。

何に疲れたか。
寒さと現在の住環境にほとほと嫌気がさしたと申しますか疲れました。

まぁ寒いと言ったってマイナス20度になったりするわけではないので大したことはないのですが、自室の寒さはなかなか厳しく辛くなってきました。

我が部屋には2つの電気式ヒーターがありますが、電気料金は家賃に含まれずに別精算となり、かつ暖房効果はそれほどではないくせに消費電力は相当なものでなかなかスイッチを入れようという気になれません。

当アパートは築およそ200年ほどの英国にてはゴク普通の建物ですが、大家がケチなため設備が古いままなのです。

特に僕の部屋は昔ながらの設備がそのまま残っており、今では全く使われなかった古いコインを電気メーターに入れると目盛が巻き上がる仕組みです。

コインは便宜上使うだけで、実際はメーターを月末と月初に測って精算することになっています。

で、この利きの悪いヒーターのスイッチを入れると電気メーターの回転がエラく早まるので、自分の脈も早まって気が休まらないというわけです。

繰り返し申し上げているように、最近は耐寒マイナス7度という寝袋にくるまって寝ていますが、フト「何で自分の家で寝袋で寝なきゃならんのよ・・・」と切なくなることもしばしば。

寝袋で寝ること自体に疑問を感じるようになりました。

加えて耐え難いのはカビです。

我が部屋は四角形をしているのですが、角部屋ということで2面が外に面していて、そこが結露して汗をかいてカビがはえるのです。

その壁に寄りかかっている、あるいは立てかけてあるもの全てがシットリと湿り、放っておくとそこにもカビがはえるというなんともいたたまれない状況です。

折角買ってきた書籍なども本棚にては壁から離して置かないと本が湿気を吸ってゴワゴワにうねってしまいかねません。

先日は換気をすべくカーテンと窓を久し振りに全開にしたところ、窓枠周囲がカビだらけならまだしも、キノコがふたつはえているのを発見して思わずめまいがしました。



料理をするにも換気扇というものがないため臭いはこもるし、換気のために窓を開ければ室温が一気に下がるという不便さ。

我が部屋は一階で表通りに面しているために、窓を開けたまま外出はおろか、トイレに行くこともままなりません。

窓を開けたまま部屋を離れて裏庭で洗濯を干している間に窓から物品が盗まれたという話も聞いたことがあります。

せめて自分が部屋にいる週末の日中は窓を開けて換気を心掛けているのですが、その間はフリースジャケットの上にダウンベストを着込み、毛糸の帽子をかぶって足から腰までは寝袋を膝掛けにして湯たんぽを抱えて過ごす、といった部屋の中でアウトドアしている不条理。

英国全ての家庭がこんなにひもじい思いをしているかといえば否で、大抵はセントラルヒーティングがホンワリときいていたり、はたまた暖かな暖炉がパチパチと音を立てて身も心も暖めてくれるという寸法です。

「COSY」もしくは「COZY」という英単語があり「暖かくて居心地の良いこと」を指します。

銀座コージーコーナーのコージーです。

冬場に知人・友人の家を訪ねたりしたときなどに「結構なお宅ですねぇ」というようなことを表現するときにこの単語を良く使います。

COSY、良い言葉です。

植物園の中にあるコテッジに住む友人の部屋に遊びに行くと、ここは植物園の温室と熱源を共有していることもあって、万年「ハワイ化」しており真冬でも暑くて窓を開けることがあるといいます。

こりゃ洗濯物も瞬間乾燥だろうなぁと羨ましくなりました。

もし仮にあと数年ケンブリッジにいるのであれば、即、ここを引き払って新しくコージーな部屋を探すところですが、僕の場合ケンブリッジ生活はあと7ヶ月です。

この寒さもあと2ヶ月ほどで緩むでしょうし、アパート解約の予告は1ヶ月前にせねばならず、諸事情をツラツラと考えるに今更の引越しはあまり現実的ではなく我慢することにしました。

アパートの隣人ビル君とも折角仲良くなって、頻繁に一緒にパブに飲みにいくようにもなりましたし。

そんな訳で前向きに「うぉーやるぜ、頑張ったるぜ!!」と盲目的に気分がノッているときは良いのですが、フト我に返り、冷静にまじまじと自分の状況を見つめたりすると、はぁぁっとタメ息が出てくるわけです。

カビはどう考えてもカラダには悪そうで、引越しのその日まで健康でいられることを神に祈る今日この頃でございます。

日本は成人の日で3連休でしょうか。

どうぞコージーな3連休をお過ごしください。


2012年9月10日月曜日

2002年01月06日 「寒いです」




日本は北海道で空港も閉鎖されたり大変な大雪なようで。
今シーズンは東京でも雪が降りましたでしょうか?

御存知のように現在の異常気象は地中海地方にも雪をもたらしているようで、ギリシア、スペイン、イタリアなども軒並み交通機関が麻痺しているようです。

田中外相もトルコで大雪に見舞われ、寝台列車で11時間揺られたとか揺られなかったとか。

まぁ異常ですね。

植物園のジョンは昨日から1週間オーストリアに行っています。

天気オタクで極端な天候を好む彼としては雪が多いのにひかれてのことだと思いますが、「スキーにもチャレンジするのだっ!」とはりきって独りで出掛けていきました。

彼の趣味のひとつが旅行で、今回も一緒に行かないかと誘われましたが彼の申し出に全て「YES」と言っていたら破産してしまいますので丁重にお断りしました。

その他にもミュンヘンに行こうだの、オーロラを見にフィンランドに行こうだの次から次へと企画が出てきて「フンフン」と聞き流すようにしています。

きわめつけは日本旅行計画です。

彼はスーパーマーケットで買物をするときに貰えるポイントをコツコツと貯めてエアマイルに変換し、そのマイレージでそろそろ日本に手が届きそうらしく、最近は顔を合わせれば「いつ帰るの、日本には?」としつこく聞いてきます。

まぁ折角の友人ですのでそれは歓迎してあげたいとは思いますが、ジョンだけのためにわざわざジョンを引き連れて帰国するような余裕はないため「もうちょっと待ったら?」とかわしています。

そんな中。

12月に植物園の21歳になるマークと話していたらばクリスマスプレゼントに話が及び、彼の壮大でロマンチックな計画を知るに至りました。

彼曰く
「クリスマスにね、ヴィッキー(彼女)にプレゼントとして日焼け止めをあげるわけよ。
そうすると何これ?ってなるでしょ。
そこでさらに次のプレゼントとしてハイってアンドーラ行きの旅行のチケットをあげるわけ。」
と鼻の穴全開で教えてくれました。

アンドーラとはスペインとフランスの国境にあるピレネー山脈にある公国です。

21歳の恋。

なかなかやるじゃないの、と思っていたらばフト彼は視線を落として「でも・・・」と言います。

「何サ。でもって?」
「これ、ジョンも一緒なんだ。」

いやいや申し訳ないけどその場で腹を抱えて笑っちゃいました。

そもそもジョンは2人が付き合い始めるころからお互いをよく知っていて、昨年も3人でシャモニーに出掛けたほどです。

因みにシャモニーではマークとヴィッキーのホテルとジョンのホテルは歩いて5分ほど離れていた、というか離したそうですが。

今度アンドーラでは同じホテルで、折角のロマンチックな気分もジョンがいい具合に醒ましてくれるのではないかというのです。

その時はアッハッハ・・・と笑っていた僕もその後ジョンの強烈な勧誘にあってアンドーラ行きに参加することとなりました。

恐らくこれはマークとヴィッキーがジョンをけしかけて、ジョンのお守りを僕に押し付けて二人の恋路を確保しようという作戦だったと思います。

まぁ理由はどうあれ、良く知る仲間だし、行ったことのない場所だしということで決めてしまいました。

まだまだずっと先の話で7月上旬です。

その頃のアンドーラはやたら暑いらしいのですが、そんな暑い思いを早くしてみたいと相変わらず寒い自分の部屋で湯たんぽを抱えながらアンドーラに思いを馳せる今日この頃です。

今日も朝から小雨が降り続き、恐らく太陽は一秒たりとも顔を見せないでしょう。

本当に洗濯物が乾かなくて困ったものです。

写真は1月2日の朝。

夜中に降った小雪、早朝に降りた霜で見事に凍った野バラ。

こういう凍り方はやはり湿度が高いからだと思われます。