どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2012年8月29日水曜日

2002年01月03日 「2002年」



新年明けましておめでとうございます。

暮れに御挨拶をなどと思っておりましたら、諸事情に流されて気が付けばご覧のように機を逸した御挨拶となりました。

今年は午年ということでケンブリッジから車で15分ほどいったところにニューマーケットという競馬ファンにはお馴染みのサラブラッドの産地として名高い街があり、新年御挨拶用のスナップを求めて繰り出してサラブレッドの銅像をカメラにおさめて準備は上々だったのですが。

撮った写真を改めて見てみると面白くともなんともなく、ボツにしました。

年明けはいかがお過ごしでしょうか。

私はクリスマスから元旦にかけてはゴク普通の日々を過ごしておりました。

こちらでのクリスマスは一昔前の日本のお正月にあたる「気合」の入り方で、世間はクリスマス、ボクシングデーあたりは完全に機能が失われたように静かでした。

具体的には店はお休み、公共交通機関も運休といった具合です。

25日のクリスマスだけは休みをとってアパートの隣人であるビル君の実家にお招きにあがり、心暖まるアットホームなクリスマスを過ごしました。

七面鳥のロースト、クリスマスプディング、ミンスパイ、モールドワインなどの典型的なクリスマス料理を御馳走になり、プレゼントを交換し、皆でテレビを見て、ついでにそこでうたた寝をし・・・と他人の家ながら随分とリラックスしました。


植物園はほとんどのスタッフがクリスマスから元旦まで休暇をとって植物園も静かなものでした。

僕だけが淡々と何事もなかったように通常通り6時過ぎに起床し、朝食をとり、お弁当を作り、働き、プールに通い・・・と過ごしていました。

当然大晦日も正月三が日も働いていました。

期間中は温室全般を任され、終日温室内の温度と湿度をチェックし、水を全てに施し、池の金魚にエサをやり、掃除をし、天井にはびこるコケを取り除いたりと真面目に働きました。

喜ばしいことは12月21日の冬至以降、確実に日が延びてきていることです。

「そんな大袈裟な。たかが1~2週間でしょ。」と言うことなかれ。
16時過ぎには自転車のライトを点けなければ危なかったのに、今は点灯せずともなんとか家に帰れます。

それにしても大晦日から今日までの寒さは呆れるばかりで、夜中の最低気温はマイナス8度、日中もせいぜい2度程度とかなり堪えます。

しかし、この程度の気温は日本でもマァあったことなのに、何故これほどまで堪えるのか。

最近、ハハーンと気付いたのが湿度の高さです。

東京の冬はカラッカラッに乾燥していますが、こちらは夏がカラカラ、冬はシットリということもあり体感温度が実際の気温よりも寒く感じるのではないかと思うに至りました。

自分の寝袋はマイナス7度耐寒と謳ってあるものの、最近の寒さはこれを下回るわけでやむなくヒーターをつけて寝ております。

この正月はこちらで迎える3度目の正月でした。

改めて時の経つのは早いものだと驚かされます。
何をするでもなく、酒を飲み、くだらないテレビを眺めつつボンヤリする正月って今更ながら良いもんだなぁと思ってしまいます。

「警視庁潜入24時。アナタはそのとき目撃者になる!」とかツイ見ちゃうクチなので。

今年はいよいよケンブリッジ生活にも一旦別れを告げ、再び英国北部のヨークに戻ります。

そろそろ次の展開も考えねばと思っております。

今後どうするかビジョンがあるといえばある、ないといえばないとなんとも優柔不断ではありますが、あまり力まずに自然体でやれればと思っています。




2012年8月20日月曜日

2001年12月22日 「暮れ模様」


12月21日は冬至。
日が短かくなるのは今日までで、明日からは夏に向けて日が少しづつ延びていくのかと思うとそれだけで喜ばしいものです。

因みに今日は日の出8:05、日の入15:54でした。

こうなると晴れていても日照時間はせいぜい5時間程度でしょうか。

夕暮れで手元が見えなくなるということもあり、植物園では冬の勤務時間が適用されて月曜から木曜は16:00、金曜は15:30に終ります。

早く終って何をするか。

最近とりつかれたように通っているのがプールです。

一ヶ月の定期券を購入し、ほぼ毎日1000~2000メートルをノンビリと泳いでシャワーを浴びて帰ってきます。

自分のボロアパートのショボいシャワーではなく、水圧も高め温度も高めのシャワーということも気に入ったことも通うことになった理由のひとつです。

植物園にては現在は温室の担当で、セントポーリア、トケイソウ、ラン、ヤシ、ベゴニアなどの面倒をみています。

受け持っている温室が3つあり、ふたつは最低気温18度と13度に設定されていてヌクヌクです。

こんなところに四六時中いる植物たちが羨ましくもあります。

このひとつの温室は主にシダ、コケなどがあるのですが、ここは湿度が高め、温度は低めと寒々しく、ジメジメした鬱陶しいところで、ここはさっさと済ませるようになってしまいます。

湿度を高めるためにわざと床に水をまいたりするのですが、水をまきながらジメジメした温室の窓ガラスを見ていてフト「ちょっと待てよ。これってアパートのオレの部屋と同じカンジじゃない?」と、かつて窓枠にキノコがはえたこともある自分の部屋とシダ・コケ温室が頭のなかで重なって悲しくなりました。

自分の部屋は相変わらず寒いのですが、この前購入したマイナス7度まで耐える寝袋に包まることで寝ている間に寒さを感じることはなくなりました。

しかしフト「なんで自分の部屋でキャンプ生活まがいの生活をしてるのだ?」という疑問がわいてきます。

この時期はクリスマス会、忘年会と忙しいのは万国共通のようで、多少のスタイルの違いはあれども忙しい毎日です。

21日はお昼から植物園内でほぼ全スタッフが集合してクリスマス昼食会がありました。

これが事実上の仕事納めになる人がほとんどで、「ではまた来年。メリークリスマス!」などと言って散っていきました。

その後近所のパブで何人かで飲み始め、気が付けば22時をまわっておりました。

同じパブで7時間も飲んでいたことになります。

千鳥足で帰宅し寝袋に滑り込みヌクヌクと快眠をむさぼったのでした。

皆はクリスマス休暇なれども、ワタクシは25日だけは休みますが、あとは大晦日も正月も通常通りに働きます。

別に一緒に過ごす家族がいるわけでもなく、寒い自宅にいるよりは元気一杯温室で働いたほうが快適というものです。

皆と同じ時期に有給休暇を使うよりは、ここはセーブして後でゆっくり旅行でもして過ごしたほうが賢明だという作戦です。

また、この時期は特別手当も出てお徳でもあります。

12月は大学ラグビー伝統の一戦であるオックスフォード大学対ケンブリッジ大学がイングランドラグビーの聖地トゥイケナムであり、休みをとって見にいきました。

現在オックスフォードのラグビー部には元関東学院大の渕上、元早稲田大の西岡の二人が在籍していて、二人の活躍を期待していたのですが生憎リザーブのまま出場機会はありませんでした。

この名門伝統校の各選手のプロフィールを見ていると、元アメリカ代表、元オーストラリア代表といったラグビーで名を馳せた人もいれば、思わず首をかしげてしまうような選手もいます。

皆エリート中のエリートだけあって「医学博士課程」「経済学修士課程」などの説明があるのですが、横に掲載されている顔写真は皆前科者のような人相でそのギャップが面白いです。

試合中は曇りときどき晴れといった具合でしたが、じっと座っていると寒いというのは昨年観戦して学習していましたので、今回はウイスキーのボトルを持ち込んでチビチビと舐めつつ暖をとる作戦をとりました。

「舐める」作戦であったのに気が付けばついつい飲んでしまい、気が付けばボトル半分を消費し身体は暖まったものの、帰り道はフラフラしてしまいました。

来年3月には関東学院、慶応、早稲田の3校が週ごとにケンブリッジ大学と対戦します。

日本からケンブリッジに週替わりで来て試合してくれるとは、自分にとっては夢のような企画で今からとても楽しみです。

先々週ジョンと行ったバードウオッチングも久々のヒットでした。

ケンブリッジから車で1時間ほどいったノーフォーク州のウェルニーという大湿地帯に集まる水鳥は一見の価値アリと聞いていましたので二人で出掛けました。

決まった時間に自然保護のレンジャーが餌付けをするのですが、そこに集まる白鳥などの水鳥たちの数に圧倒されました。

目の前で優雅に戯れる彼らの様子を双眼鏡越しに見ていても全く飽きることがなく、あっという間に時間が過ぎていきました。

外はかなり寒かったのですが、有難いことに観察小屋の中は暖房が効いていて助かりました。

水に首を突っ込んで逆立ちのような格好でエサを探すもの、体ごとかなりの長時間潜水してエサをとるものなど多種多様です。

もし野鳥のことを知っていて「あれは××でカナダから飛んできた」などと分かるとなお一層面白いのでしょうが、生憎現在は植物のことを覚えるのに精一杯です。

そういったわけで元気に働き、飲み、泳ぎ、学び、眠り、食べ・・・と特別なことは何もないながらも、まずまず楽しい暮れ模様です。



2012年8月7日火曜日

2001年12月05日 「ふんで、けって」


ハタと気付いてみれば12月です。

今年ものこり僅か、時の経つのは早いものです。

最近のニュースとしては「ジョージ・ハリソン逝く」が当日は大騒ぎでしたが、熱の冷めるのも早かった気がします。

日英共通の話題と思われるのは「ハリーポッター」でしょうか。

こちらは原産国だけにラジオ、新聞、テレビなどでも大きく取り上げられていますが、この騒ぎも公開当日から1週間程度でしょうか。

こうやって考えると英国人というのは結構淡白な感じもしますね。

さて今日は「こんなにツイていないなんて・・・」と思わずタメ息がでたノンフィクションストーリーです。

現在は温室の担当をしていて、日々15度前後の温室でヌクヌクとしているのですが、ここに猫が一匹迷い込んできました。

この猫は当植物園の責任者であるティムの飼い猫ですが、温室にては招かざる客ということで「ネコ様つまみ出し作戦」を決行することとなりました。

実はワタクシはこう見えて結構デリケートな人間でネコアレルギーなのです。
ネコ捕獲にあたり、噛まれて引掻かれた跡が数分後に赤くミミズ腫れになり、痒みもしばらくひかず困ったものです。


続いてサボテン展示の温室内の花壇に新たに砂を敷き詰め美化を図るという任務を遂行中にサボテンとサボテンの間に分け入って砂を撒くために屈んだところお尻をズボンの上からチクッと一刺しされました。

思わずアウッと叫ぶほどの鋭い痛み。

作業も終わりに近づいたころ、屈んだ姿勢から起き上がる際にサボテンにおでこから突っ込んでしまいました。

これはシャレにならない痛さで、慌てて手をおでこに当ててみるとおでこに無数のサボテンのトゲが刺さっているのが感じてとれます。

「一体どんな具合なのか?」と洗面所の鏡をのぞきこんで卒倒しそうになりました。

おでこにはグサグサグサっとトゲが無数に刺さっており、さながら「トゲ地帯」を形成しています。

もう大慌てで温室のボスであるロブのもとに助けを求めて走りました。

彼は笑いながらトゲ抜きで一本ずつ抜いてくれたのですが、「目に見えるトゲは全部取った。」と言い切るロブをよそに手をおでこにかざすとまだザラザラ、チクチクします。

そのうち自然に抜けると言われましたが心配です。

もう職業病とあきらめるしかなさそうです。

そして家にもどり夕食を終え食器を洗っていたら洗剤で手が滑り大型のサラダボールを粉砕してしまいました。
ハッと手を見ると薬指から血がポタポタと・・・。

そんな訳でネコにやられ、サボテンにやられ、サラダボールにやられ踏んだり蹴ったりの1日でした。

サラダボールもまた買わねばならず身も心も財布もズタズタです。

今日はもうこれ以上何も起きないことを祈るばかりです。

まだチクチク違和感のあるおでこをなでつつ、皆様のご健康をお祈り申し上げる次第です。