どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2011年8月13日土曜日

2000年08月02日 「ファーストフード考」


暑中お見舞い申しあげます。

いよいよ8月に突入です。
熱中症で病院に運ばれる人が昨年の2倍と聞きました。
植木屋を続けていたら今頃病院にいたかもしれません。

さて、本日は英国におけるファストフードを考えてみようというわけです。

日本と共通しているのはハンバーガーショップではないでしょうか。
これはもはや日本、イギリスに限ったことではないですけど。
ハンバーガー以外ですとフィッシュアンドチップス、サンドイッチ、ドネルケバブ、ピザ、チャイニーズといったところでしょうか。


まず英国を代表するファストフードであるフィッシュアンドチップス(F&C)ですが、これは白身魚のタラ(cod もしくは haddock)に小麦粉をといたコロモをつけて揚げたものをチップスとともに、お好みで塩と麦からできたモルトヴィネガーをドバドバとかけて食べるというもの。
不思議なもので歩きながらハフハフしつつ食べると美味しさがアップすると思うのは私だけでしょうか。

ちなみに英国ではフライドポテトのことをチップスと言い、ポテトチップスのことをクリスプス(crisps)と言います。
カロリーが高くてなんとも栄養バランスが悪そうですが、食べているうちに病みつきになり最近は最低でも週に一回はこれを食べずにはいられません。
英国人に言わせると魚そのものは白身なので言われるほど不健康な食べ物ではないとのことです。

全英には約8,500ものF&C屋があって年間約3億食も食べられているのだとか。
実はこれはこの前聴いていたラジオからの情報なのですが、そこでは加えて乱獲によるタラの減少で今後はタラの保護を考えていかないとF&Cが食べられなくなるというようなことを言っていて、F&Cファンとして真剣にラジオに耳を傾けた次第です。

ファストフードなんだから英国どこで食べても同じ味かというと否で、僕のいるヨークシャー州は英国北東部の代表的な漁業の町であるウィットビーとスカーボロを擁し、新鮮なタラが手に入るので英国で一番F&Cが美味い場所と言われています。

確かに思い出すにロンドンで食べたF&Cは高くてあまり美味いものではありませんでした。

味を決定する主な要因は①魚の鮮度 ②油 ③バターといわれるコロモ だと思いますが油が臭かったり、コロモがサクサクしていなかったりするとガッカリです。

とても興味深いのは油です。
どこは定かではありませんが、僕の見立てですと南ヨークシャー州とリンカンシャー州のあたりに境界線があってそれ以南ですとすべからく植物油、それ以北ですとすべからく動物油を使うのです。
どちらがヘルシーかなんて野暮な議論はさておき、動物の油で揚げたほうがなんともいえない風味があって僕は断然美味いと思います。
ここでいう動物油はラードといって豚からとったものかドリッピングといって牛からのものかがあるようです。


そしてファストフードは安くなければなりません。
せいぜい3ポンド以内。

Take awayといって持ち帰りか立ち食いが基本ですが、なかにはレストラン式になっていて店内で座ってたべるところもあります。
店で座って食べると値段は倍くらいします。

しかし時として座って食べなくてはならない場合があります。
それはタラがデカイときです。
通常のサイズは20センチくらいなのですが、その上のラージで30センチくらい、極めつけジャンボでは40センチ以上あってとても歩きながら食べられるものではありません。
これまでに何度かF&C有名店と誉れ高い店でジャンボを食しましたが、生きていて良かったと思える満足度でした。

英国人の友人などは、タラにチップスが付いてくるのにさらにブレッドアンドバターといって食パンにバターをコッテリ塗ったものを一緒に頼んだりします。
あくなき炭水化物と油への欲求ということでしょうか。
さすがにこれには見ているほうが食傷しましたが。

基本は塩とヴィネガーですが、好みですりつぶしたグリーンピースにミントソースをいれたマッシュドピーとかカレーソースをかけて食べる人もいます。

僕の記憶では、10数年前に英国に滞在していたころはF&Cといえば古新聞に包まっていたものですが、最近は見かけないので聞いてみると食遺品衛生上の見地から現在では古新聞を使ってはいけなくなったとのことでした。
繊細なのか大雑把なのかときどき分からなくなる不思議な国です。

F&C屋では大抵F&Cだけ売ってますという硬派な店が多いのですが、それでもサイドメニュー的においてあるのが①バタード・ソーセージ ②ピクルド・エッグ ③フィッシュ・フィンガー ④フィッシュ・ケーキ といったあたりでしょうか。

(左・タマネギのピクルス 右・タマゴのピクルス)

①はこちらの独特のパフパフの食感をもったソーセージにコロモをつけて揚げてあるもの。
②煎餅屋の店先で煎餅が入っているような、あるいは駄菓子屋でヨッちゃんイカが入っているような、そんな容器にゆで卵が酢漬けになって入っているというもので僕は怖くて食べたことはありません。
一体どんな味がするのか、そしてピクルスとはいえ所詮タマゴゆえにその保存期間は? などと疑いの視線でその怪しげなタマゴを見ています。
③は日本でもスーパーの冷凍食品売り場で売っているすり身魚のフライのようなもの。
④これはついこの前試してみました。
ケーキとはいっても甘いものではなく、ジャガイモを厚めにスライスしたもの2枚の間にほんの少々魚のすり身がサンドされ、さらにまわりにコロモをつけて揚げてあるものでした。
これとF&Cを一緒に頼んでしまい、あとでちょっと後悔しました。

何故かF&C屋というのはインド人、トルコ人、ギリシャ人といった移民系の方々が店を構えているケースが非常に多く、純英国人のやっているF&C屋というのはとても珍しいと思います。
店は一日中オープンしているわけではなく、例えばよく利用する隣村のF&C屋なんてのは16:00から21:00までの営業で、しかも日曜日、月曜日と週休2日を貫いており、どうやって生計を立てているのか他人事ながら気になります。
それは極端な例ですが、日本の牛丼屋のように24時間頑張るF&C屋はこの国には存在しないと思われます。

続いてサンドイッチバーですが・・・といきたいところですがF&Cに対する思い入れが激しい分、相当長く書いてしまいましたのでまたの機会にということで。

かくのごとく相当なF&Cファンになってしまいましたが、日本に帰国したあかつきにはこの味が恋しくなるのは想像に難くないので、この際カラダに悪かろうが心行くまでこの味を堪能しようと思っています。
読んでいて胸焼けしませんでしたでしょうか。

暑さのヤマもあと一息で越えることかと思います。どうぞお元気で。

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