どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2012年11月16日金曜日

2002年04月05日 「春来る」


東京の桜は例年にない早咲きだったそうで、今ようやく春本番到来でしょうか。

こちらケンブリッジにもようやく春が来たようです。

先週末(3月31日)に時計の針を1時間進めてサマータイムに突入しました。

サマーと呼ぶにはいささか早い気もしますが、もはやウインターという気配は有難いことにありません。

それが証拠にモクレン、ヤマブキ、モモなどが咲きほこり、落葉樹は一斉に新芽をふいています。

僕も気持ちは夏に向けて短パン、ティーシャツといういでたちですが、気まぐれな天気に備えてフリースも手放せず、おっかなびっくりの春といった感じです。

さて、最近はどうして過ごしていたかというと3月の中旬に我が妹がアメリカはラスベガスで結婚式を挙げるというので、それに合わせて10日間の休暇を取って前半はラスベガス、後半は一人気ままにカルフォルニア、アリゾナ、ユタあたりの国立公園などを巡る旅をしてまいりました。


このアメリカ旅、色んなことがあって書くことがあまりに多く、「ハテ、どうしたものか」と悶々としているうちに今日になってしまいました。

本来の目的である妹の挙式は、おかげさまでつつがなく執り行われ、兄として感慨にふける一方でカジノデビューも果たしました。

後半の国立公園巡りでは、カルフォルニアで灼熱の砂漠をいったかと思えば、ユタにおいては雪がちらついたりして、改めてそのスケールの大きさにスゲー国だなぁと感心しておりました。


ケンブリッジに戻った後も週末に植物園で一般向けの公開行事があったりしてその手伝いをしたり、その次の週末も丁度週末当番に当たっていたため土日とも通常通り出勤したりして忙しく過ごして、気が付けばもう4月といった具合です。

時差と片道24時間におよぶ長旅の疲れが癒えたのか癒えないのか良く分からないまま日々は過ぎていきます。

ラスベガスから植物園に戻ったその日に試験があったのですが、何も準備できず参加だけしたのですが、やはり結果は思わしくなく「採点外」ということで返ってきてしまいました。

試験の結果は毎度掲示板に張り出されるのですが
Masaya Tatebayashi     Jet-lagged
となっており、「ウマイこと言う!」などと変に感心してしまいました。

そしてこういうことは重なるときは重なるもので、この週末にはオランダはアムステルダムに2泊3日の一人旅に出掛けます。

「アムステルダムに行くのだ」と言うと「大麻でも吸いに行くんでしょ」とか「飾り窓をのぞきに行くんでしょ」などと冷やかされるのですが、いえいえオランダですものチューリップを見に行くのですよ。

オランダのキューケンホフ公園というのがチューリップではとくに有名でヨーロッパにいる間に一度は見にいきたいと思っていたところ、丁度手頃な格安航空券を見つけたので行くことにしました。

ラスベガスでは結婚式という「オメデタ気分」で自制心を失ってつい分不相応なホテルに泊まってしまいましたが、このアムステルダムではユースホステルのタコ部屋に泊まります。

さらに飛行機の手配をした後に知ったのですが、丁度この週末から10年に一度といわれるオランダの大花博覧会「フロリアード2002」というものが開催されるらしく、これもシッカリ見て勉強してこようという意気込みでおります。

そんな訳で花のつぼみもほころび、庭もにわかに活気付いて忙しくなってきました。

一年で今が一番良い季節かもしれません。

どうぞ春爛漫楽しい毎日をお過ごしください。



2012年10月31日水曜日

2002年02月11日 「連休でしょうか」


さて今日は日曜日でしたが、植物園の週末当番だったために普段どおりに働いていました。

週末の当番は必ず二人一組でやることになっていて、今日の相棒はジョンでした。

昼飯のときに「今日仕事が終ったらウエルニーに野鳥の餌付けを見に行かないか?」と誘われ、仕事終了後、ジョンとジョンのお母さんを乗せて3人でウエルニーという湿地帯にある野鳥センターに餌付けを見に出掛けました。

ここは以前一人で出掛けてバードウオッチングの楽しさに目覚めた場所で、今の時期はアイスランドから白鳥が大群で飛来し、自然保護団体が決まった時間に餌付けをするのです。

観察小屋には餌付けの一時間半前に到着し、特等席を確保しました。

その後どんどん人が増えて18;30の餌付け開始時刻には押すな押すなの大盛況でした。


あたりが漆黒の闇に包まれた中で投光機に照らし出された水面におびただしい白鳥たちが餌が今か今かと待ち構えているのが分かります。

暗闇に白鳥たちの白い身体がまるで浮き上がるかのように目に映り、とても幻想的な光景でした。

普段植物ばかり追いかけているので、とても新鮮で楽しいひとときでした。

折角ですので写真を添付します。
フラッシュを使わなかったので手ぶれ写真になってしまいましたが雰囲気は伝わるでしょうか。

それでは楽しい3連休をお過ごしください。




2012年10月19日金曜日

2002年02月10日 「オリンピック開幕」


冬季オリンピック開幕といいながらも、テレビのスイッチをひねるとオリンピック番組はとても少なく、「ハテ、本当にオリンピックは始まったのかしら?」と首を傾げたくなります。

恐らく英国はスキーをはじめとしてウインタースポーツは今ひとつ盛んではないためではないかと想像しております。

もしこれがノルウエーなどの北欧三国あたりであれば伝えかたが違うだろうにと思います。

今日は何といっても「マーガレット王女死去」が国内のトップニュースでした。

街を歩けばそこら中に半旗が掛かっていて事の重大さがうかがえます。

今テレビではオリンピックそっちのけで盛り上がっているのは「ポップ・アイドル」という番組です。恐らく。

これはロングランの歌謡オーディション番組で、ン万人に応募者の中から予選をくぐり抜け、本選を勝ち抜いた参加者が、ふるいに掛けられて毎週一人ずつ落選し、ついに最後に残った一人がポップ・アイドルとしてデビューするというものです。

この落選を決めるのが視聴者からの電話投票で週を追うごとに熱を帯びてきて、今日がその決勝の日なのです。

決勝に残った二人はウィルとガレスという男性2人。

なんでこんなに詳しく知っているかといえば、新聞をはじめテレビ、ラジオなどマスコミの取り上げ方がスゴイので嫌でも知るところとなったのでした。

大衆紙であるザ・サンはいうに及ばずいわゆる高級紙であるザ・タイムズといった新聞、そして番組主催の局に限らず各放送局でもこの1週間は「ウィルか、はたまたガレスか?!」「アナタはどっち派?」とウルサイことウルサイこと。

まっ、平和なんですね。

さて改めて驚くべきは2002年も1ヶ月がアッという間に過ぎてしまったということです。

ウーン、早い、早すぎる。

1月は何をしていたのかと言えば、改めて振り返るに大したことは何もしておらず、淡々と植物と向かい合う、そんな日々でした。


しいて言えば、ケンブリッジ大学の単科コースで「庭園史」の受講をしているのですが、これのレポートの締め切りが1月末ということで提出のその日まで「ああでもナイ、こうでもナイ」とすったもんだしておりました。

6週間ほど前にやや小型のレポートの締め切りがあって、この時に段取りを誤ってかなりあたふたしたのを教訓に、今回は締め切りの10日前には完成して高笑いしておりました。

ところが時間があったので何度も読み返しているうちに「アラ、ここはこれよりもこっちの表現のほうがステキなのではなかろうか」とか、「ここにもっとダイナミックな意見を大胆に取り入れた場合、ものすごくアピールしちゃったりして」とか、こう後から後から修正のアイディアが湧いてきて収拾がつかなくなり、とうとう提出の前夜まで手直ししていたというわけです。


この庭園史のコースを受講して改めてイギリスの庭の奥深さと申しましょうか、イギリス人の古いもの嗜好が伺えたのでした。

フィールド・トリップと称した野外授業では16世紀頃の領主の庭園を実際に訪ね、その保存、維持、回復にまつわる話を聞いて彼らの情熱に圧倒されました。

感心半分、あきれ半分ってところでしょうか。

よく言われることですが本当に古いものを大切にしていて「古いことは良いことだ。ついでに古きゃあ古いほうが良いのだ!」という国民性のようです。

私の住んでいるボロアパートも竣工1870年ですから、堂々の「築132年!!」ということになります。

古いのは良いが、寒さとカビをもうちょっとどうにかしてくれと言いたいですが。


そんな寒さはまだ和らいだとは言えませんが、春の予感がここそこに感じられるようになってきました。

なんと言ってもスノードロップ、クロッカス、スイセンなどの春を告げる球根類が順番に見ごろを迎えようとしていますし、モクレン、ウメなどのつぼみもかなりスタンバイしています。

日照時間も日に日に延びてきて、現在は日の出07:26、日の入17:04と最盛期には16時前に真っ暗だったことを思えば格段の進歩と申せましょう。

そんな2月の模様を徒然なるままにお知らせしました。

どうぞ楽しい3連休をお過ごしください。





2012年10月14日日曜日

2002年02月05日 「スリップダウン」



お元気ですか。

私はちょっと風邪を引きまして、ダウンというほどでもないのでスリップダウンといったところです。

先週の木曜深夜と申しますか、金曜の未明、就寝中に何か背筋にゾクゾクするものを感じたのですがそれ以来調子がすぐれません。

先週末は植物園の休日当番に当たっており、土日ともに平常どおりに働き、月曜日にはかなり足元がフラフラで、午前中に温室に水をやったところでギブアップして帰ってきてしまいました。

そして今日、火曜日は喉が異常に痛んだために大事をとって仕事を休み、先ほど起きたところです。

まぁ風邪ですので放っておきゃぁ治ると信じて気楽にしています。

昨日はほとんど何も口にせずに床に就いたため、かなりの空腹を感じて「とり雑炊」を作って食べました。

風邪で頭もボーッとしているというのに我ながらマメな奴です。

消化と栄養を考慮し、かつ冷蔵庫の備蓄食料を眺めて作ったのですが、ことのほか美味しくて身体も暖まりウムウムと頷きながらモクモクと食べました。

食べ終えた後は食器も洗わねばならず、風邪でだるいので後回しにしようというサボリ心も芽生えないではなかったですが、料理、食事、後片付けが一つの動作としてもはや身体に染み付いているようで、チェッと舌打ちをしつつツイツイ全てを洗い終えてしまいました。

僕は薬はあまり好きではなく、よほどのことがないと口にしないのですが以前風邪をひいて辛かったときに買った薬の残りがあったので飲んでみました。

「LEMSIP」という、そこら中で売られている一般大衆風邪薬で、幾つかのシリーズがある中の「Max Strength」と謳ってある一番効きそうなやつです。

これは顆粒で、マグカップに入れてお湯を注いで飲むというもので味はレモン味。

まぁ気休めですね。

そんなわけで健康バカが売りの私ではありますが、ちょっとつまづいて平日の昼に手持ち無沙汰になり、このメールを書いています。

こんな日に限って窓の外は快晴!! 

神様はなかなかイジワルです。

2012年9月30日日曜日

2002年01月13日 「疲れました・・・」



疲れました・・・とは何やら遺書めいておりますが、実際少々へこんでこれを書いております。

何に疲れたか。
寒さと現在の住環境にほとほと嫌気がさしたと申しますか疲れました。

まぁ寒いと言ったってマイナス20度になったりするわけではないので大したことはないのですが、自室の寒さはなかなか厳しく辛くなってきました。

我が部屋には2つの電気式ヒーターがありますが、電気料金は家賃に含まれずに別精算となり、かつ暖房効果はそれほどではないくせに消費電力は相当なものでなかなかスイッチを入れようという気になれません。

当アパートは築およそ200年ほどの英国にてはゴク普通の建物ですが、大家がケチなため設備が古いままなのです。

特に僕の部屋は昔ながらの設備がそのまま残っており、今では全く使われなかった古いコインを電気メーターに入れると目盛が巻き上がる仕組みです。

コインは便宜上使うだけで、実際はメーターを月末と月初に測って精算することになっています。

で、この利きの悪いヒーターのスイッチを入れると電気メーターの回転がエラく早まるので、自分の脈も早まって気が休まらないというわけです。

繰り返し申し上げているように、最近は耐寒マイナス7度という寝袋にくるまって寝ていますが、フト「何で自分の家で寝袋で寝なきゃならんのよ・・・」と切なくなることもしばしば。

寝袋で寝ること自体に疑問を感じるようになりました。

加えて耐え難いのはカビです。

我が部屋は四角形をしているのですが、角部屋ということで2面が外に面していて、そこが結露して汗をかいてカビがはえるのです。

その壁に寄りかかっている、あるいは立てかけてあるもの全てがシットリと湿り、放っておくとそこにもカビがはえるというなんともいたたまれない状況です。

折角買ってきた書籍なども本棚にては壁から離して置かないと本が湿気を吸ってゴワゴワにうねってしまいかねません。

先日は換気をすべくカーテンと窓を久し振りに全開にしたところ、窓枠周囲がカビだらけならまだしも、キノコがふたつはえているのを発見して思わずめまいがしました。



料理をするにも換気扇というものがないため臭いはこもるし、換気のために窓を開ければ室温が一気に下がるという不便さ。

我が部屋は一階で表通りに面しているために、窓を開けたまま外出はおろか、トイレに行くこともままなりません。

窓を開けたまま部屋を離れて裏庭で洗濯を干している間に窓から物品が盗まれたという話も聞いたことがあります。

せめて自分が部屋にいる週末の日中は窓を開けて換気を心掛けているのですが、その間はフリースジャケットの上にダウンベストを着込み、毛糸の帽子をかぶって足から腰までは寝袋を膝掛けにして湯たんぽを抱えて過ごす、といった部屋の中でアウトドアしている不条理。

英国全ての家庭がこんなにひもじい思いをしているかといえば否で、大抵はセントラルヒーティングがホンワリときいていたり、はたまた暖かな暖炉がパチパチと音を立てて身も心も暖めてくれるという寸法です。

「COSY」もしくは「COZY」という英単語があり「暖かくて居心地の良いこと」を指します。

銀座コージーコーナーのコージーです。

冬場に知人・友人の家を訪ねたりしたときなどに「結構なお宅ですねぇ」というようなことを表現するときにこの単語を良く使います。

COSY、良い言葉です。

植物園の中にあるコテッジに住む友人の部屋に遊びに行くと、ここは植物園の温室と熱源を共有していることもあって、万年「ハワイ化」しており真冬でも暑くて窓を開けることがあるといいます。

こりゃ洗濯物も瞬間乾燥だろうなぁと羨ましくなりました。

もし仮にあと数年ケンブリッジにいるのであれば、即、ここを引き払って新しくコージーな部屋を探すところですが、僕の場合ケンブリッジ生活はあと7ヶ月です。

この寒さもあと2ヶ月ほどで緩むでしょうし、アパート解約の予告は1ヶ月前にせねばならず、諸事情をツラツラと考えるに今更の引越しはあまり現実的ではなく我慢することにしました。

アパートの隣人ビル君とも折角仲良くなって、頻繁に一緒にパブに飲みにいくようにもなりましたし。

そんな訳で前向きに「うぉーやるぜ、頑張ったるぜ!!」と盲目的に気分がノッているときは良いのですが、フト我に返り、冷静にまじまじと自分の状況を見つめたりすると、はぁぁっとタメ息が出てくるわけです。

カビはどう考えてもカラダには悪そうで、引越しのその日まで健康でいられることを神に祈る今日この頃でございます。

日本は成人の日で3連休でしょうか。

どうぞコージーな3連休をお過ごしください。


2012年9月10日月曜日

2002年01月06日 「寒いです」




日本は北海道で空港も閉鎖されたり大変な大雪なようで。
今シーズンは東京でも雪が降りましたでしょうか?

御存知のように現在の異常気象は地中海地方にも雪をもたらしているようで、ギリシア、スペイン、イタリアなども軒並み交通機関が麻痺しているようです。

田中外相もトルコで大雪に見舞われ、寝台列車で11時間揺られたとか揺られなかったとか。

まぁ異常ですね。

植物園のジョンは昨日から1週間オーストリアに行っています。

天気オタクで極端な天候を好む彼としては雪が多いのにひかれてのことだと思いますが、「スキーにもチャレンジするのだっ!」とはりきって独りで出掛けていきました。

彼の趣味のひとつが旅行で、今回も一緒に行かないかと誘われましたが彼の申し出に全て「YES」と言っていたら破産してしまいますので丁重にお断りしました。

その他にもミュンヘンに行こうだの、オーロラを見にフィンランドに行こうだの次から次へと企画が出てきて「フンフン」と聞き流すようにしています。

きわめつけは日本旅行計画です。

彼はスーパーマーケットで買物をするときに貰えるポイントをコツコツと貯めてエアマイルに変換し、そのマイレージでそろそろ日本に手が届きそうらしく、最近は顔を合わせれば「いつ帰るの、日本には?」としつこく聞いてきます。

まぁ折角の友人ですのでそれは歓迎してあげたいとは思いますが、ジョンだけのためにわざわざジョンを引き連れて帰国するような余裕はないため「もうちょっと待ったら?」とかわしています。

そんな中。

12月に植物園の21歳になるマークと話していたらばクリスマスプレゼントに話が及び、彼の壮大でロマンチックな計画を知るに至りました。

彼曰く
「クリスマスにね、ヴィッキー(彼女)にプレゼントとして日焼け止めをあげるわけよ。
そうすると何これ?ってなるでしょ。
そこでさらに次のプレゼントとしてハイってアンドーラ行きの旅行のチケットをあげるわけ。」
と鼻の穴全開で教えてくれました。

アンドーラとはスペインとフランスの国境にあるピレネー山脈にある公国です。

21歳の恋。

なかなかやるじゃないの、と思っていたらばフト彼は視線を落として「でも・・・」と言います。

「何サ。でもって?」
「これ、ジョンも一緒なんだ。」

いやいや申し訳ないけどその場で腹を抱えて笑っちゃいました。

そもそもジョンは2人が付き合い始めるころからお互いをよく知っていて、昨年も3人でシャモニーに出掛けたほどです。

因みにシャモニーではマークとヴィッキーのホテルとジョンのホテルは歩いて5分ほど離れていた、というか離したそうですが。

今度アンドーラでは同じホテルで、折角のロマンチックな気分もジョンがいい具合に醒ましてくれるのではないかというのです。

その時はアッハッハ・・・と笑っていた僕もその後ジョンの強烈な勧誘にあってアンドーラ行きに参加することとなりました。

恐らくこれはマークとヴィッキーがジョンをけしかけて、ジョンのお守りを僕に押し付けて二人の恋路を確保しようという作戦だったと思います。

まぁ理由はどうあれ、良く知る仲間だし、行ったことのない場所だしということで決めてしまいました。

まだまだずっと先の話で7月上旬です。

その頃のアンドーラはやたら暑いらしいのですが、そんな暑い思いを早くしてみたいと相変わらず寒い自分の部屋で湯たんぽを抱えながらアンドーラに思いを馳せる今日この頃です。

今日も朝から小雨が降り続き、恐らく太陽は一秒たりとも顔を見せないでしょう。

本当に洗濯物が乾かなくて困ったものです。

写真は1月2日の朝。

夜中に降った小雪、早朝に降りた霜で見事に凍った野バラ。

こういう凍り方はやはり湿度が高いからだと思われます。

2012年8月29日水曜日

2002年01月03日 「2002年」



新年明けましておめでとうございます。

暮れに御挨拶をなどと思っておりましたら、諸事情に流されて気が付けばご覧のように機を逸した御挨拶となりました。

今年は午年ということでケンブリッジから車で15分ほどいったところにニューマーケットという競馬ファンにはお馴染みのサラブラッドの産地として名高い街があり、新年御挨拶用のスナップを求めて繰り出してサラブレッドの銅像をカメラにおさめて準備は上々だったのですが。

撮った写真を改めて見てみると面白くともなんともなく、ボツにしました。

年明けはいかがお過ごしでしょうか。

私はクリスマスから元旦にかけてはゴク普通の日々を過ごしておりました。

こちらでのクリスマスは一昔前の日本のお正月にあたる「気合」の入り方で、世間はクリスマス、ボクシングデーあたりは完全に機能が失われたように静かでした。

具体的には店はお休み、公共交通機関も運休といった具合です。

25日のクリスマスだけは休みをとってアパートの隣人であるビル君の実家にお招きにあがり、心暖まるアットホームなクリスマスを過ごしました。

七面鳥のロースト、クリスマスプディング、ミンスパイ、モールドワインなどの典型的なクリスマス料理を御馳走になり、プレゼントを交換し、皆でテレビを見て、ついでにそこでうたた寝をし・・・と他人の家ながら随分とリラックスしました。


植物園はほとんどのスタッフがクリスマスから元旦まで休暇をとって植物園も静かなものでした。

僕だけが淡々と何事もなかったように通常通り6時過ぎに起床し、朝食をとり、お弁当を作り、働き、プールに通い・・・と過ごしていました。

当然大晦日も正月三が日も働いていました。

期間中は温室全般を任され、終日温室内の温度と湿度をチェックし、水を全てに施し、池の金魚にエサをやり、掃除をし、天井にはびこるコケを取り除いたりと真面目に働きました。

喜ばしいことは12月21日の冬至以降、確実に日が延びてきていることです。

「そんな大袈裟な。たかが1~2週間でしょ。」と言うことなかれ。
16時過ぎには自転車のライトを点けなければ危なかったのに、今は点灯せずともなんとか家に帰れます。

それにしても大晦日から今日までの寒さは呆れるばかりで、夜中の最低気温はマイナス8度、日中もせいぜい2度程度とかなり堪えます。

しかし、この程度の気温は日本でもマァあったことなのに、何故これほどまで堪えるのか。

最近、ハハーンと気付いたのが湿度の高さです。

東京の冬はカラッカラッに乾燥していますが、こちらは夏がカラカラ、冬はシットリということもあり体感温度が実際の気温よりも寒く感じるのではないかと思うに至りました。

自分の寝袋はマイナス7度耐寒と謳ってあるものの、最近の寒さはこれを下回るわけでやむなくヒーターをつけて寝ております。

この正月はこちらで迎える3度目の正月でした。

改めて時の経つのは早いものだと驚かされます。
何をするでもなく、酒を飲み、くだらないテレビを眺めつつボンヤリする正月って今更ながら良いもんだなぁと思ってしまいます。

「警視庁潜入24時。アナタはそのとき目撃者になる!」とかツイ見ちゃうクチなので。

今年はいよいよケンブリッジ生活にも一旦別れを告げ、再び英国北部のヨークに戻ります。

そろそろ次の展開も考えねばと思っております。

今後どうするかビジョンがあるといえばある、ないといえばないとなんとも優柔不断ではありますが、あまり力まずに自然体でやれればと思っています。




2012年8月20日月曜日

2001年12月22日 「暮れ模様」


12月21日は冬至。
日が短かくなるのは今日までで、明日からは夏に向けて日が少しづつ延びていくのかと思うとそれだけで喜ばしいものです。

因みに今日は日の出8:05、日の入15:54でした。

こうなると晴れていても日照時間はせいぜい5時間程度でしょうか。

夕暮れで手元が見えなくなるということもあり、植物園では冬の勤務時間が適用されて月曜から木曜は16:00、金曜は15:30に終ります。

早く終って何をするか。

最近とりつかれたように通っているのがプールです。

一ヶ月の定期券を購入し、ほぼ毎日1000~2000メートルをノンビリと泳いでシャワーを浴びて帰ってきます。

自分のボロアパートのショボいシャワーではなく、水圧も高め温度も高めのシャワーということも気に入ったことも通うことになった理由のひとつです。

植物園にては現在は温室の担当で、セントポーリア、トケイソウ、ラン、ヤシ、ベゴニアなどの面倒をみています。

受け持っている温室が3つあり、ふたつは最低気温18度と13度に設定されていてヌクヌクです。

こんなところに四六時中いる植物たちが羨ましくもあります。

このひとつの温室は主にシダ、コケなどがあるのですが、ここは湿度が高め、温度は低めと寒々しく、ジメジメした鬱陶しいところで、ここはさっさと済ませるようになってしまいます。

湿度を高めるためにわざと床に水をまいたりするのですが、水をまきながらジメジメした温室の窓ガラスを見ていてフト「ちょっと待てよ。これってアパートのオレの部屋と同じカンジじゃない?」と、かつて窓枠にキノコがはえたこともある自分の部屋とシダ・コケ温室が頭のなかで重なって悲しくなりました。

自分の部屋は相変わらず寒いのですが、この前購入したマイナス7度まで耐える寝袋に包まることで寝ている間に寒さを感じることはなくなりました。

しかしフト「なんで自分の部屋でキャンプ生活まがいの生活をしてるのだ?」という疑問がわいてきます。

この時期はクリスマス会、忘年会と忙しいのは万国共通のようで、多少のスタイルの違いはあれども忙しい毎日です。

21日はお昼から植物園内でほぼ全スタッフが集合してクリスマス昼食会がありました。

これが事実上の仕事納めになる人がほとんどで、「ではまた来年。メリークリスマス!」などと言って散っていきました。

その後近所のパブで何人かで飲み始め、気が付けば22時をまわっておりました。

同じパブで7時間も飲んでいたことになります。

千鳥足で帰宅し寝袋に滑り込みヌクヌクと快眠をむさぼったのでした。

皆はクリスマス休暇なれども、ワタクシは25日だけは休みますが、あとは大晦日も正月も通常通りに働きます。

別に一緒に過ごす家族がいるわけでもなく、寒い自宅にいるよりは元気一杯温室で働いたほうが快適というものです。

皆と同じ時期に有給休暇を使うよりは、ここはセーブして後でゆっくり旅行でもして過ごしたほうが賢明だという作戦です。

また、この時期は特別手当も出てお徳でもあります。

12月は大学ラグビー伝統の一戦であるオックスフォード大学対ケンブリッジ大学がイングランドラグビーの聖地トゥイケナムであり、休みをとって見にいきました。

現在オックスフォードのラグビー部には元関東学院大の渕上、元早稲田大の西岡の二人が在籍していて、二人の活躍を期待していたのですが生憎リザーブのまま出場機会はありませんでした。

この名門伝統校の各選手のプロフィールを見ていると、元アメリカ代表、元オーストラリア代表といったラグビーで名を馳せた人もいれば、思わず首をかしげてしまうような選手もいます。

皆エリート中のエリートだけあって「医学博士課程」「経済学修士課程」などの説明があるのですが、横に掲載されている顔写真は皆前科者のような人相でそのギャップが面白いです。

試合中は曇りときどき晴れといった具合でしたが、じっと座っていると寒いというのは昨年観戦して学習していましたので、今回はウイスキーのボトルを持ち込んでチビチビと舐めつつ暖をとる作戦をとりました。

「舐める」作戦であったのに気が付けばついつい飲んでしまい、気が付けばボトル半分を消費し身体は暖まったものの、帰り道はフラフラしてしまいました。

来年3月には関東学院、慶応、早稲田の3校が週ごとにケンブリッジ大学と対戦します。

日本からケンブリッジに週替わりで来て試合してくれるとは、自分にとっては夢のような企画で今からとても楽しみです。

先々週ジョンと行ったバードウオッチングも久々のヒットでした。

ケンブリッジから車で1時間ほどいったノーフォーク州のウェルニーという大湿地帯に集まる水鳥は一見の価値アリと聞いていましたので二人で出掛けました。

決まった時間に自然保護のレンジャーが餌付けをするのですが、そこに集まる白鳥などの水鳥たちの数に圧倒されました。

目の前で優雅に戯れる彼らの様子を双眼鏡越しに見ていても全く飽きることがなく、あっという間に時間が過ぎていきました。

外はかなり寒かったのですが、有難いことに観察小屋の中は暖房が効いていて助かりました。

水に首を突っ込んで逆立ちのような格好でエサを探すもの、体ごとかなりの長時間潜水してエサをとるものなど多種多様です。

もし野鳥のことを知っていて「あれは××でカナダから飛んできた」などと分かるとなお一層面白いのでしょうが、生憎現在は植物のことを覚えるのに精一杯です。

そういったわけで元気に働き、飲み、泳ぎ、学び、眠り、食べ・・・と特別なことは何もないながらも、まずまず楽しい暮れ模様です。



2012年8月7日火曜日

2001年12月05日 「ふんで、けって」


ハタと気付いてみれば12月です。

今年ものこり僅か、時の経つのは早いものです。

最近のニュースとしては「ジョージ・ハリソン逝く」が当日は大騒ぎでしたが、熱の冷めるのも早かった気がします。

日英共通の話題と思われるのは「ハリーポッター」でしょうか。

こちらは原産国だけにラジオ、新聞、テレビなどでも大きく取り上げられていますが、この騒ぎも公開当日から1週間程度でしょうか。

こうやって考えると英国人というのは結構淡白な感じもしますね。

さて今日は「こんなにツイていないなんて・・・」と思わずタメ息がでたノンフィクションストーリーです。

現在は温室の担当をしていて、日々15度前後の温室でヌクヌクとしているのですが、ここに猫が一匹迷い込んできました。

この猫は当植物園の責任者であるティムの飼い猫ですが、温室にては招かざる客ということで「ネコ様つまみ出し作戦」を決行することとなりました。

実はワタクシはこう見えて結構デリケートな人間でネコアレルギーなのです。
ネコ捕獲にあたり、噛まれて引掻かれた跡が数分後に赤くミミズ腫れになり、痒みもしばらくひかず困ったものです。


続いてサボテン展示の温室内の花壇に新たに砂を敷き詰め美化を図るという任務を遂行中にサボテンとサボテンの間に分け入って砂を撒くために屈んだところお尻をズボンの上からチクッと一刺しされました。

思わずアウッと叫ぶほどの鋭い痛み。

作業も終わりに近づいたころ、屈んだ姿勢から起き上がる際にサボテンにおでこから突っ込んでしまいました。

これはシャレにならない痛さで、慌てて手をおでこに当ててみるとおでこに無数のサボテンのトゲが刺さっているのが感じてとれます。

「一体どんな具合なのか?」と洗面所の鏡をのぞきこんで卒倒しそうになりました。

おでこにはグサグサグサっとトゲが無数に刺さっており、さながら「トゲ地帯」を形成しています。

もう大慌てで温室のボスであるロブのもとに助けを求めて走りました。

彼は笑いながらトゲ抜きで一本ずつ抜いてくれたのですが、「目に見えるトゲは全部取った。」と言い切るロブをよそに手をおでこにかざすとまだザラザラ、チクチクします。

そのうち自然に抜けると言われましたが心配です。

もう職業病とあきらめるしかなさそうです。

そして家にもどり夕食を終え食器を洗っていたら洗剤で手が滑り大型のサラダボールを粉砕してしまいました。
ハッと手を見ると薬指から血がポタポタと・・・。

そんな訳でネコにやられ、サボテンにやられ、サラダボールにやられ踏んだり蹴ったりの1日でした。

サラダボールもまた買わねばならず身も心も財布もズタズタです。

今日はもうこれ以上何も起きないことを祈るばかりです。

まだチクチク違和感のあるおでこをなでつつ、皆様のご健康をお祈り申し上げる次第です。





2012年7月31日火曜日

2001年11月23日 「スペイン後日談」



以前のバルセロナ話にちょっと付け足しです。

今回の旅行でジョンの、というか英国人の実質主義みたいなものを肌身で感じました。

これはジョンがたまたまそうなのかもしれませんが、当たらずとも遠からずだと思います。

まず彼はファッションには全く興味はなく「庭仕事」「天気」「株投資」「養蜂」「ポイントがたまるスーパーでの買物」「旅行」「ワイン」「チーズ」といったものに関心が注がれています。

自分は日本人であり、これまで日本で暮らしてきて日本人らしい画一的な価値観が知らず知らず染み付いているようなのですが、ジョンといるとその違いに気付かされます。

着るものにはブランド品は見当たらず質素そのものです。

暖かくて身体を守れれば良しといったかんじです。

ワイン、チーズというと何となくお洒落な印象を持つかもしれませんが、それは日本でお洒落なものとして広がったというか広げた人がいるからだと思いますが、こちらでのそれはもっと実質的なもので、まずもって一本ン万円のワインなどは滅多にお目にかかれません。

ジョンとよくワインを買いに行きますが、彼がウーンウーンと悩んでいるのはいつも4ポンド以下のワインです。

これはスゴク高くて良いワインだと自慢していたのが13ポンドでしたから。

今回は3泊4日の旅ということでかなり駆け足だったものの、随所に英国人らしい落ち着きというかゆったり感を発揮していました。

朝食もさっさと食べてホテルを一刻も早く出ることがこれまでの僕の発想でしたが、彼は毎朝1時間半くらいかけてゆっくりと食べながら昨日の面白かったこと、今日の行動予定などについて話をしたり新聞を読んだりととにかく余裕なのです。

夕刻も一旦ホテルに戻ってシャワーを浴びた後すぐに夕食のために外出するのかと思いきや、ホテルの部屋のバルコニーに椅子を持ち出して優雅にワインを一杯、といった具合です。

寸暇を惜しんでより多くの名所を飛び回る日本人の観光スタイルとはかなり隔たりがあります。
どちらが良いとは一概に言えませんが、このジョンという男からはまだまだ学ぶことがある気がしてなりません。


バルセロナ往復に使った格安飛行機ですが、注意深く新聞広告などを見ているとロンドン→タブリン片道1ポンドなんていうものもあります。

どうしたらこういうことが可能なのかわかりませんが、とにかく実在します。

ただし片道ですので復路が結構高かったり、その他に条件がついたりします。
当然空港利用税は含まれていません。

せっかく英国にいるのだからこういった格安飛行機を使ってより多くのヨーロッパの国を見たいものだと思います。

バルセロナから戻る際に飛行場でチェックインを済ませてソファーに座っていると、「GO」という今回利用した格安飛行機が着陸するのが見えました。

時間は午前10:35。

これは僕らがバルセロナ往路に乗ってきたのと同じパターンの飛行機です。

そして僕らが乗る復路の出発予定時刻は11:15。

すなわち着陸して乗客・荷物を降ろしてから次の乗客・荷物をのせて離陸するまでがナント40分ということです。

機内清掃などもなされているとは思われず、席にビスケットのこぼれカスが落ちていたのもうなずけたのでした。

機内誌によるとロンドン、バルセロナ間の飛行時間が2時間。
登載可能燃料が2万リットル。
1時間あたりの燃料消費が3千リットル、ロンドン、バルセロナ往復でも1万2千リットル。

ということは当初から機体整備、燃料補給は見込まずにトンボ帰りを意図したフライトスケジュールになっているということです。
恐らくパイロットも客室乗務員も交代無しでしょう。

更に想像するに1日にロンドン~バルセロナは2便づつあるので機体は一旦ロンドンに戻ると夕方の運行までの4時間で整備、燃料補給をする無駄のないハードスケジュールなのではないかと思われます。

乗員も2往復だったらこれはスゴイですが、さすがにそれはないでしょうが。

今や全盛の格安飛行機には色々と面白い舞台裏がありそうです。

そんなバルセロナ後日談でした。




2012年7月22日日曜日

2001年11月23日 「3枚のトンカツ」



お天気オタクのジョンによりますと明朝はなんでもマイナス3度まで気温が下がるとのことで、温室の換気用の小窓を全て閉めて帰ってきました。


お天気オタクと何やら個人的な趣味レベルのようですが、植物園としては彼の発言を重視していて、こうやって窓を閉めて帰れという指示が上のほうからくるあたり大したもののような気がします。


さて帰宅したあと何をするか、今日はちょっとした計画がありました。


名付けて「3枚のトンカツ作戦(豚汁付き)」です。


何度か申し上げているように最近は自分の畑で採れるネギ、ニラをはぼ毎日食べていているのですが、いい加減に体臭がニラっぽくなってきたような気がして少々の不安を感じておりました。


そんな中、寒くなってきたことだし何かカラダが暖まるものはと考えたところ「豚汁」というナイスなアイディアがひらめきました。
ネギも使えるし、他の野菜も摂取できる理想的な料理と申せましょう。


高速道路のサービスエリアの食堂などにも豚汁定食があるくらいですから、それだけで十分なおかずになりうるという気がしましたが、ここはひとつ豪華にトンカツも揚げてみようということに。


順調に支度は進み、初めて作るわりには豚汁なんて出色の出来です。


豚、ニンジン、サツマイモ、タマネギといったシンプルな具を加えて仕上げに刻みネギと七味を振って出来上がりです。


味見をしつつ「うーん、オレって天才かも」と悦に入り、いよいよメインディッシュのトンカツへ。


トンカツはこれまでも何回か作っているので手馴れたものです。


ただ問題は自分の部屋はそもそも料理をするという前提で設計されていないということです。


つまり換気扇というものがないわけです。


これまでの経験から部屋にある服は全てクローゼットに格納し、部屋にひとつだけある窓を全開にして料理開始。


僕の部屋は1階でその窓は往来に直に面しているので行きかう人々が覗いていくのですが、そんなことは気にしちゃいられません。


頭のなかはトンカツと豚汁のことで一杯です。


トンカツを揚げる鍋も小さいので、一枚づつまめまめしく揚げていきます。


一枚、また一枚と揚げていくうちに、かなりの煙が立ち込めて部屋のなかの視界がかなり下がってきました。


もうちょっとで3枚目のトンカツが揚がるというときに「ピピピピッッッ!!!」というけたたましい音が部屋のどこかからしました。


これは最近大家のおばちゃんが設置した火災報知機です。


とてもシンプルな報知機で「煙がでてまっせー」と知らせてくれるだけで、消防署に直結していたり、スプリンクラーが水を撒いたりするといった気の利いたことは一切してくれません。


やっとトンカツが揚がってこれから香ばしいサクサクの出来立てを食べようって時に。


音だけはイッチョ前に大きく、まったく鳴り止まないので「どうしよう」とオロオロしながら、まず大家に電話をしたところ留守。


次にアパートのメンテナンスをするおっちゃんのところに電話をすると奥さんがでて「今食事中だから30分したら掛けなおして」とつれない返事。


この国は車の盗難が多く、車に警報機をつけてある車が多いのですが誤作動も多く、警報機がなったところで「また鳴ってらぁ」という程度にしか思っていないことは承知していたので、チョットうるさいけどこのままでは折角のトンカツが冷めてしまうと思われ、警報を無視することにしました。


耳栓を両耳に突っ込んでトンカツを食べ始めました。


するとアパートの2階に住む、かの天才ホーキング博士の助手をかつてしていたというスチュワートが、まさにこの警報機の音で目が覚めたという寝起きの不愉快そうな顔で「どうした?」と訪ねてきました。


警報機を止められずに困っていると言うと、彼がゴニョゴニョと警報機をいじってやっと鳴り止んだというわけです。


食事中もまだ部屋の中は煙でかすんでいましたが、部屋の窓を開けたままでは明朝マイナス3度になるという冷気が入り込んできて、折角のトンカツを一気に冷却してしまいますので、窓を閉じて煙にややむせながら食事をしました。


3枚のトンカツは1.5枚は今晩のおかずに、0.5枚はカツサンドにして明日のお弁当に、最後の1枚は明日の夜にカツ丼にという割振りをして、トンカツを最大限に味わおうという男のロマン漂う壮大な作戦です。


トンカツ、豚汁とまさに本格的トンカツ屋の味に満足しつつ、煙とニオイが充満する自分の部屋で「オレは何をしているのだ?」という疑問もわかないでもありませんでした。


できればもうちょっと優雅に落ち着いて食べたいものです。


「トンカツを揚げて食べました。」といえばそれだけのお話ですが、劇的といえば劇的なトンカツ話でしたのであえてお知らせした次第です。

2012年7月16日月曜日

2001年11月20日 「スペイン・バルセロナへ」



はてさてこの度はスペイン南部バルセロナに植物園のお天気オタクのジョンと二人で3泊4日で行ってまいりました。

茲許ヨーロッパ各国向けの格安飛行機各社が派手に格安戦争を繰り広げております。

今回はジョンが「信じ難いバーゲンだ!バルセロナ往復40ポンドだぞ!!」とエラく興奮して旅行を提案してきたので、僕としても一人旅よりは2人で行ったほうが何かと経済的なのでそれにのっかって旅が実現しました。

因みに40ポンドはザッと日本円で7000円くらいでしょうか。

それでロンドン⇔バルセロナ往復できるとはまさにバーゲン。

更に因めばバーゲンという単語はジョンがこの世で一番好きな言葉です。

これが噂のジョン なんと同じ年!


二人してとくにバルセロナで何がしたいということは無く、普通に観光してウマイものが食べれて楽しくできれば良いやという気楽な旅でした。

飛行機を決めて宿はジョン任せにしたところ普段のケチケチ・ライフスタイルに反してて一泊41ポンドの3ツ星ホテルを確保したとの報告がありました。

一泊の宿代が往復の飛行機代よりも高いとは少々納得がいかない部分もありましたが、これは結果的には良かったです。
ホテルのロケーションがほぼ街のド真ん中で、夜更かしのスペイン体質に合っていました。

部屋は節約のためにシングル×2ではなくツイン×1で。
事前にジョンが「オレはいびきをかくけどいいか?」と言うので耳栓を持参しました。

格安飛行機だけあってとても不便な時間の飛行機で、出発が朝7:15、チェックインが2時間前の5:15、それに間に合うようにケンブリッジを4:00のにバスで出発といった具合で、まだ星がまたたく時間に家をでました。

バルセロナ到着後は市内観光バス2日券というものを購入して市内の名所巡りを時間の許す限りしたのですが、あろうことか大雨、大風の荒天となってしまいました。

傘をさすのもはばかれるほどの荒れ具合で、オマケに気温も7度とさえません。

せっかく地中海の温暖な太陽を期待してきたのにケンブリッジとたいして変わらない寒さです。


強風で倒れてしまったヤシの木を見つけて「オレを撮ってくれ」と得意なジョン

バルセロナといえばガウディの建造物が有名です。
正直なところあまりそれらに関心はなかったのですがイザ実物を見てみると「コリャすげぇや」と感心するやら圧倒されるやら。

他に類を見ない物凄いオリジナリティで行って実物を見る価値は大であるかと思われます。

今回の旅はジョンという人間を知る旅であったといっても過言ではありません。

彼のような人物を私はかつて知りません。

他に類を見ないオリジナリティという点ではガウディに負けていません。

まず天気オタクだけあって、今回の荒天には大興奮、大喜びで、こちらがビショビショになって辟易としているときに一人で嬉々としていました。

翌日の地元の新聞は荒天を伝えるものばかりでしたが、彼は「これは良い記録だから」と言って新聞の売店でスペイン語も読めもしないのに全ての新聞を立ち読みして、一番劇的な写真が掲載されている新聞をおみやげに買っていました。

新聞スタンドで店員の嫌な視線をものともせず新聞を立読みするとは根性があります。

更に「ガイドブックによるとバルセロナの動物園には白いゴリラがいるらしい。そいつをどうしても見たいのだ。」と言い出し、風に吹き飛ばされそうになりながらようやく動物園にたどりつくと「荒天につき閉園」と看板がでていて本当に悔しそうでした。

そんなに白いゴリラが見たかったのかと、こっちがビックリです。

実物の白ゴリラが見られず看板で満足するジョン

荒天で動物園が閉園であったり、ケーブルカーが運休したりしてやることがないと思ったら大間違いで、「マサヤ、海岸に波を見にいこう。凄いものが見れるに違いない。」と言います。


渋々海岸に行ってみますと、海岸には高波が押し寄せ想像したとおり荒れに荒れていました。

彼は心底嬉しそうな笑顔で写真を撮りまくっていました。


かなりシリアスな高波にもめげず写真を撮りまくるジョン

お互い潮で顔面がしょっぱくなるまでそこにいて、そろそろ場所を変えようとしたところ、雨が強まったので近所のレストランに避難して軽食を注文した後も席には戻らず立ったまま店の玄関から外の荒れ具合を熱心にいつまでも見ていました。


ここまでいくとスゴイ奴と感心するしかありますまい。

今回の最大の問題点はふたりしてスペイン語がちんぷんかんぷんだったということです。

観光地バルセロナでありますから英語でオッケーだとタカを括っていたのですが、思ったように意思疎通ができません

タパスという小皿料理とワインという希望のパターンを貫くにはせめてメニューを理解できる程度のスペイン語力が必要なように思えました。

英語が通じる観光客をあてこんだレストランは美味しいとは言い難く、地元の人で溢れる美味しいレストランは英語が通じないといった具合です。

注文をとりにきたウエイターにアレコレ必死の思いで注文して、「なーんでこんな簡単な英語が分かんねーんだ、アイツらは!!」と憤ってしまいましたが、冷静に考えればここはスペインなんだからこっちがスペイン語を話すべきなのでしょうね
全体的にお値段は低め、お味はヨロシクて満足できました。

毎食会計を済ませるたびに「××ペセタだってさ、バーゲンだな!こりゃ。マサヤ!!」とニンマリするジョンの笑顔が今でも鮮明に思い出されます。

一日の行動を終え、夕食前にシャワーを浴びるためにホテルに戻り、ジョンが先にシャワーを浴びました。

間髪を入れず僕が続いて入りシャワーからでてくると小さなベランダに部屋のイスを出して、そこに腰掛けてどこで仕入れてきたのか赤ワインを優雅に飲んでいます。

僕はてっきり彼が着替えも済ませスグにでも夕食に出掛けられる体制にあるかと思っていたのです。

別に悪いことではありませんが、限られた時間で出来るだけ沢山のものを見よう、沢山のことをしようという発想に支配されていた僕は彼が悠然とワインを飲んでいるのをみて衝撃を受けました。

こんなスタイルもあるのだなぁ、と勧められたワインを飲みながら深く考えさせられてしまいました

初めてのバルセロナはガウディに唸り、フラメンコに感激し、タパスに舌鼓を打ち、ワインに酔い、ジョンの言動・行動に笑い、とても楽しいものでした。

これでスペイン娘とロマンスのひとつでもあれば文句はありませんが、ジョンと「バーゲンだ!!」と喜んでいるうちは夢のまた夢でしょうか。

そして日本人としてイギリスとスペインを比べずにはいられなかったのですが、愛すべきイギリスではありますが何となく「努力の足りない国」という気がしてしまいました。

うまく表現しづらいのですが、イギリスという国は進歩に対してとても臆病な国だと感じました。



どこでこんなものを買ってきたのか?ジョンが買ってきたソンブレロでひとしきり盛り上がる

バルセロナからケンブリッジに戻ったのは土曜日の昼の3時頃。


何故といって隣町のイーリーの大聖堂で行われる聖歌隊のコンサートを見るためでもあったのですが。


バルセロナの低い天井で熱気に溢れた情熱的なフラメンコを観た翌日に高い天井の寒い大聖堂でコートにくるまり手をさすりながら聞く聖歌。

静と動。

なんともいえない対比がそこにありました。











2012年7月3日火曜日

2001年10月21日 「Anthrax」


Anthraxとは何ぞや?
トヨタの新しい車の名前か、はたまた新しい毛生え薬の名前か。

シンキングタイム・・・。

ハイ、正解は今話題の「炭ソ病」です。(ソは変換不能)

9月11日以来、テレビ・ラジオのニュースそして新聞などはテロに関する話題が中心です。
職場やパブで世間話するにもある程度こういう単語を知らないと会話が成り立たない状況です。

Anthraxなんて学校で習わなかったなぁとボヤいても始まりません。

一方自分の生活は呑気そのものです。

今日は土曜日ですが植物園の休日当番だったので午前中一杯は温室で水をやっていました。

最近は急速に秋から冬へと向かっており、日の出7:33日の入17:57と日の長さが著しく短くなってきました。
これがピークの冬至には16時前には暗くなるのですから気が重いです。

今日は午後から6カ国対抗ラグビーのテレビ中継があるので、それに間に合うように買物をして帰宅してテレビの前に缶ビールを並べて準備万端で観戦しました。

試合のあとホロ酔いのままそのままベッドに横になりうたたねをして目が覚めると・・・。アパートの前に駐車してあった僕の車のフロントガラスに駐車違反の切符が貼ってあります。

普段爪に火を灯す思いで節約生活を送っているというのになんたること。

泣く泣く罰金30ポンドを週明けに払わねばなりません。

最近は植物園内に許可をもらってある自分の小さな畑でネギとニラが収穫期を迎えており食卓はかなり楽しいことになっています。

あと2~3週間で霜が降りるようになると思いますので、それまでに何とか食べつくそうと思って連日ネギとニラづくしです。

「オイ、最近ネギとニラばっかりじゃないか。」
「だってアナタがつくったんじゃない。」
「それにしたって限度ってものがあるぞ。見ろよ、このネギの量。ちょっとはサ加減ってものがあるだろ。」
「そんなこと言ったって、今日採れたものは新鮮な今日のうちに使ったほうが良いと思って・・・。シクシク。」
「何も泣くこたぁないじゃないの。分かった、オレが悪かった。」
などという会話が今にも聞こえそうなタテバヤシ家の食卓です。

あと新しいことといえば齢36にして新競技に着手することにいたしました。

それはボートです。

ボートといっても横山やすしの競艇のボートではありませんよ。

8人、4人、2人もしくは1人で漕ぐボートです。

ケンブリッジ大学対オックスフォード大学のレガッタは有名ですが、ここイギリスはボート発祥の国で盛んですし、いかにもケンブリッジらしく、かつ来年ヨークに戻ってからも続けられそうで興味がありました。

見るからにボートマンのパブのオヤジさんに相談したところ今度クラブを紹介してくれることになりました。

果たしてどのくらいできるものなのか分かりませんが、今期目標のひとつである「運動量を増やす」には合致しているので良いかなと思っています。

練習後にみんなで飲みに行くのは別の今期目標である「酒量を減らす」には逆行してしまいますけど。

ボートを通じて新しい友達が増えればそれもまた楽しいものです。

冬に向けてまっしぐらですが、あと2~3週間は紅葉も楽しめそうですので機会を見つけて紅葉狩りに出掛けようと思っています。食欲の秋、どうぞ食べ過ぎにご注意を。



2012年6月28日木曜日

2001年10月06日 「車購入始末記」




唐突ですが車を買いました。

現在の貧乏学生の身分では車などはいささか分不相応ではありますが、買ってしまいました。

この国に来た目的のひとつにより多くの庭園を見てまわるというものがあるのですが、多くの庭園は「車ナシでどうやったらここに来られるの?」というくらい辺鄙なところにあります。

これまではレンタカーを借りたりしていたのですが、それもかなりの出費でこれなら安い中古車が十分買えると踏んだのです。

別にオネエちゃんを助手席に乗せて遊ぼうというわけではなく、あくまでも学術的要請に迫られてのことで自己投資と言えましょう。

そんなわけで「車を買うゾ!」と決意したのが今年の1月頃で、それからかれこれ9ヶ月の長い道のりを経て今日に至るわけです。

まずはどうやって車を手に入れるかが問題でした。

①新車 ②知人・友人から ③個人間売買仲介専門誌 ④正規ディーラー直営中古車センター ⑤町の中古車屋
考えられる全てを詳細に検討した結果⑤を選択。

そして予算、車そのもの(メーカー、年式、走行距離、主設備など)、保険、税金など考えうる限り多角的に研究を重ねる日々でした。

これにしようと決断の一歩手前まで何度いったことでしょうか。

試乗の度に雨漏りがしたり、ワイパーが動かなかったり、オイル漏れがあったり、値段が折り合わなかったり・・・。

自分でもビックリしたのは、中古車屋のオヤジと一緒に試乗したとたんに雨も降ってないのに屋根からドバドバと室内に雨漏りがしたときです。

僕とオヤジの膝はビッショリで「こんな車は買えないよ。」と言うと、オヤジは笑いながら「大丈夫、大丈夫」と繰り返します。

僕は真剣に買おうと思っていただけにそのふざけた態度にちょっとカチンときて「可笑しくないぞ」と言って精一杯なめたらイカンぜよ光線を放ってやりました。

そんな紆余曲折を経て結果的にはフォードの6年落ちの小型車にしました。

これも試乗したときには前輪付近から異音はするし、時計は壊れているといった具合で相当迷いましたが、中古で探している限りは「完全な車」は望めないというのは分かっていましたので、最終的にはこれで妥協しました。
9ヶ月も悩んでイヤになっちゃったというのもありますが。

お蔭様で英国での車をめぐる事情にはかなり明るくなり、最近では車を見ただけで「アレはざっと××ポンド」と値踏みまで可能になりました。
もはや特技の域ですね。

なにも中古車を買ったくらいで大袈裟な・・・という声も聞こえてきそうですが、自分にとっては超ビッグな買物で震えがきましたのでちょっと御報告する次第です。

金額的には車としては大したことはないのですが、自分の小切手では信頼してもらえず、銀行振り出しの小切手を用意したというあたりに特別振りがうかがえます。

大きくお金が動くといえば普通は結婚、自宅購入といったあたりでしょうけど、いずれも僕には縁がなさそうなので車というのは我が人生で一番デカイ買い物ということになりますね。

そしてこの辺りで「ハハーン」ときたら相当鋭いですね。
この車の購入は前節「寝袋」と見事なまでにリンクするのです。

庭巡りはかなり遠方に繰り出すこともありうるのですが、僕は車内で寝袋を使って寝て宿代を浮かせようという壮大な構想を持っているのです。

宿代がおよそ一泊あたり6000円くらいでしょうか。

これが丸々浮いてしまうのですから、その節約効果は絶大と申せましょう。

「ナーンダ車なんか買っちゃって結構贅沢してるんじゃない」と思われたらとんでもございません。
贅沢転じて節約となる、でございます。

かくして晴れて車のオーナーになりましたからには安全運転にて全国庭巡り行脚作戦を華々しく決行しようと決意を固くした次第です。