どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2011年6月29日水曜日

2000年03月29日 「BBC日本案内」

妹からのメールで「そんなにくだらないメール書いていてチャンと勉強してるの?」というスルドイというか、ちょっと腹立たしい指摘を受けました。

このメールを書いているのは、日頃日本語で話す相手もここヨークにはおらず、ストレス解消と申しますか、とてもリラックスして楽しい時間なのですが。

今朝食堂で友人から「19:00から日本のことをやる番組があるけど見に来る?」と誘われてBBCの観光案内番組を見たのですがこれが面白かったです。

若いイギリス人女性のレポーターが東京と京都をまわるというもの。
冒頭に「日本は世界有数の長寿国である」「日本では4という数字を忌み嫌う」という大雑把な紹介があり番組は始まりました。

中国風のBGMにのって新宿駅の雑踏のようす、コギャル達の厚底靴の紹介と続き、夜は六本木でカラオケ、宿泊はニューオータニといった具合。

ニューオータニの部屋の窓には障子があり「エキゾチック!ファンタスティック!」と大々的にとりあげ、ベッド脇のサイドボードにあるスイッチひとつで「Don’t disturb」というサインが廊下にでる仕組みで「ハイテクだ!オドロキ!!」と大騒ぎでした。

さらに一行は足を伸ばして芦ノ湖へ。
いざこうやって見てみると、芦ノ湖で運行されている海賊船のような大袈裟な船は説明に困りますね。
友人から「あれは何だ?」と聞かれしどろもどろでした。
白鳥の形をした船は映らなかったので助かりましたが。

京都では清水寺を訪れ「清水の舞台」ではなく「縁結びの石」をとりあげていました。
そんな石のことは見たことも聞いたこともなかったのですが、自分の勉強不足でしょうか。

宿泊は旅館で「ナント、床ニ寝マース!!」とこれまた大騒ぎ。
レポーターは一応浴衣を着ているのですが、どうにもぎこちないのです。
浴衣、着物の似合う西洋人はめったにいませんね。

その後は回転寿司に行って「ベリーナイス」と口で言っておきながら、顔はかなり渋かったのは笑えました。
京都への移動は新幹線なのですが、途中に見える富士山はやはり絶賛していました。

30分の番組のなかの僅か7,8分のコーナーだったでしょうか。

予想通り誇張気味の内容でしたがブラウン管をとおして見る祖国は僕の目にはかなり魅力的に映りました。

2011年6月26日日曜日

2000年03月28日 「ヨークは千葉?」


なんとなく感じていたのですが、ここヨークは千葉に似ているなと。

もうほとんど終りそうなのですが今ジンチョウゲが咲いています。
普段街を歩いていたりしてフワッと風が吹いたりしたときに、その風の温度や肌触りなどでフト昔の一瞬を思い出すことはありませんか?

僕はこのジンチョウゲの香りとまだキリッと冷たい空気のあいまった春独特の雰囲気に無性に胸が締めつけられるのです。

風景を見ていても、昔どこかで見た懐かしい風景というのがあります。
個人的に千葉の外房が大好きで、よく一人でドライブがてら犬吠崎方面に出かけたものですが、道中の農道の雰囲気、牧場や肥料のニオイ、屏風ヶ浦の切り立った断崖、平坦ながらもゆったりとうねった土地・・・。

ときおり感じていたのですが、ジンチョウゲの香りとキリッとした冷たい春風に吹かれていたら、ここは千葉か?と思ってしまったというわけです。

さてサマータイムが始まって最初の月曜日です。
これまでの月曜日とは変わりないのですが、習慣となっている夕方17時の夕食の時間にはまだ燦燦と日が射していて「ハテ今食べたのはなんだっけ?昼食だっけ?」と混乱してしまいます。

ある日を境に「ハイ、今日から1時間変わります」という風変わりな習慣にもこの国の人は慣れているらしく何の混乱もないように見えます。
日本だったら何日も前からテレビ、ラジオ、新聞などで告知が続き大騒ぎするかな、などと想像してしまいます。

1時間変わったのを知らなくて・・・と約束の時間に遅れる人もいるでしょう。
こちらでも混乱を最小限にするために週末の夜中にコソッと時間を調整しています。

それにしても日が長いというか、暗くなってから寝るまでが短いというか不思議な感覚です。

このままですと夏場には明るいうちに就寝となるのではと思ってしまいます。


2011年6月23日木曜日

2000年03月27日 「ミスターサマータイム再び」


現在3月26日21:30です。
日曜日恒例の夕食メニュー、冷凍ピザを平らげたところです。

ピザだけではいかにも身体によろしくないのではと心配になり、セロリひと束75ペンスのところ今日は半額というのを買ってきて半分食べました。

小遣帳をつけているので、今日のそのレシートをみていたら半額のはずのセロリが全額の75ペンスでうたれておりムショーに腹が立ちましたが、とても37ペンスのために自転車で隣村までいく気になれず泣き寝入りしました。

さて3月も残り僅かとなりました。
日の長さもこの前読んだ新聞によりますと日の出5:54、日没18:21とありずいぶん延びてきました。

今朝起きてパソコンのスイッチを入れると 「サマータイムを調整します・・・」 と前回サマータイム終了時と同様の賢いメッセージが出てきて、ラジオをひねるとやはり自分の時計より世間は1時間進んでいました。

これからどんどん日が延びるのかと思うとワクワクしますね。

まだ経験がありませんが夏の最盛期には夜10時過ぎても明るいのだとか。

楽しみです。

というわけで、今日から夏時間という平和な日曜日でございました。

2011年6月21日火曜日

2000年03月24日 「闘っています」


植物の名前を覚えるのに闘っています。

これは授業科目のひとつでPlant Identification Test といって毎週20個の植物が課題として与えられ、試験の時には机の上に並んだ植物をみてラテン語でこれは何かと解答用紙に書き込むというものです。

僕は要領が良くないのだと思いますが、この試験の準備にかなりの時間を費やしてしまいます。

まず全体をつかみ、そしてスペルを覚える、次に写真で撮影した20個の植物たちをパソコンで眺めながらこれは何と紙に何度も書いてカラダで覚えるわけです。
一度カラダに浸透したらあとは反射的にパッパッと答えられるようになるまで反復して試験にそなえます。

いつも高得点連発のデキル女の子に食事のときに、試験準備にどのくらい準備するのか尋ねたところ「そうネー90分くらいかしら」と人の苦労も知らずに涼しい顔。
羨ましい反面、ちょっとムッとしてしまいました。

この学名のラテン語というのは普段の生活には一切接点がなくて、もはや理屈ではなく丸覚えするしかないように思われます。
寿限無寿限無のようなもんです。

せめて日本語でヒノキと言ってくれれば90分で20個覚えられると思うのですが Chamaecyparis と言われても「チャマエシィパリス」とそのまま発音して、更に「お茶をパリで飲む」「朝飯前=お茶飯前」のようにかなりひねった連想記憶術まで動員せねば頭に入らないのです。
ときどきひねりすぎて自分でも訳が分からなくなることがあります。
ヒノキ=Chamaecyparisと頭の回線が繋がるように鋭意努力中です。

因みに植物名には「科」「属」「種」「品種」とありますので、Chamaecyparisで満足してはいけません。
CUPRESSACEAE Chamaecyparis lawsoniana “Winston Churchil”とここまで覚えねばならないのでございます。
属は大文字で始まり、種は小文字、品種は大文字で始まり更に「“ ”」をつけねば減点です。
当然スペルミスも減点。

そして切ないのはこれだけ苦労して覚えたものを忘れるスピードの速いこと。
ひとつ試験を終えて次の週の準備に取り掛かるころには、ついこの前覚えたのを半分以上正確に思い出せないというていたらく。

僕の現在の年齢からすると記憶モノは明らかに限界があると思い知る今日この頃です。

2011年6月18日土曜日

2000年03月23日 「単位の話」


英国の電圧は240ボルト、日本のそれは100ボルト。
感電したらどうなるのか不安になる電圧の高さです。
思えばなんで同じ地球上にいくつもの電圧やら周波数やら単位なんてものが存在するのかイライラすることがあります。

こちらに来るについて電気屋で一番小型の変圧器を8000円ほどで購入してきました。
音楽くらいは聴きたいと思い7000円ほどのCDラジカセを日本から買ってきて、帰国するときにはこちらに置いて帰る計画でした。
でも捨てて帰るラジカセとそれを聞くための変圧器がほぼ同等価格というのは、実にやるせないものがあります。

思えば僕がインドに住んでいたときの変圧器は大きさがレンガ2~3個分、重さが漬物石のような大袈裟なものでしたので、確実にテクノロジーは進化しているのでしょうが。

単位もまた然りで、こちらの本屋でラグビー雑誌を立ち読みしていて選手の身長、体重がでていると「どんだけ大きいんだ、コイツは?!」と興味をもって見るのですが、身長はフィート、体重はストーン(1 stone = 14 pound)で表示してあり全く見当がつきません。
ストーンってその昔天秤ばかりに石をのせて計っていたのだろうと想像しますが、今は石器時代じゃあないんですから勘弁して欲しいものです。

学校などではメートル表記を採用としているらしいと聞いたことがありますが、実際に生活していると混沌としていてバラバラ、マチマチで本当に不便です。
学校で「この木の高さは何フィート」「穴を何インチ掘る」「何ヤード線をひく」などと頻繁に使うので少しは慣れてきましたが。

通貨も「Bank of England」「Bank of Scotland」がそれぞれポンドを発行していて一応兌換性はあるものの、お隣のアイルランドのポンドは使えません。
車のスピードメーターも大きい数字でマイル表示、その横に小さくキロ表示がしてあるという中途半端さ。
「学校の成績はほとんどが甲で4が少し、Cはまぁなかったねぇ」「あれあんたの靴大きいね、何文?おれは42インチだぁ」みたいな感じでしょうか。

英国生まれのスポーツであるゴルフもヤードでプレイしていて、一旦グリーンにのると「残り3メートルのパット」などといきなりヤードからメートルになっちゃうのか不思議です。

電気コンセントのプラグの形も日本と違って3つ穴で、しかもプラグが大袈裟にデカいのです。
電圧がそれだけ大きいからでしょうか。
今世界はいかにモノを小さくするかということで技術を競っていると思っていたのですが、本体を折角小さくしても、プラグがこれじゃ全てブチ壊しという気がします。
ある意味いまだに重厚長大を貫くそのさまはあっぱれなお国柄ともとれますが。

そんな文句をいっていても世の中が自分の都合の良いように変わるとも思われず、まずはこのカオスに慣れることかと思っています。




2011年6月10日金曜日

2000年03月19日 「ステーキを食った話」


昨日土曜日は終日学校の先生の自宅へ行って庭造りを手伝ってきました。

「植栽をしたことがあるかい?いい勉強をさせてあげるよ。」と金曜日に声を掛けられてふたつ返事で引き受けました。
土曜日の朝先生が寮まで迎えにきて、どこに行くのかと思えば先生の自宅だったというわけです。

車で30分ほどの田舎村のその家には半年ほど前に引越したそうで、季節も良くなり余裕も出てきたのでいろいろ植えようということになったそう。植栽エリアの広さはせいぜい10x10メートルくらいでしょうか。
そこに数種類の低木と球根類を植えて、さらに一番日当たりの良い場所に座って落ち着けるスペースを作り、花壇の周りをレンガで縁取りするという作業内容です。
疲れましたが天気がとても良く、働いていて心地よかったです。

使用した一輪車、シャベル、フォークなどの道具類はよーく見ると「あれっ、コレ学校の備品じゃない?」ってことでかなり公私混同型の先生であることも判明しました。

昼はその村にあるフィッシュアンドチップス屋で満腹、大満足の昼食を御馳走になりました。
労働のあとは何を食っても美味いものです。

庭を完成させ、その足で近所のパブにいってビールを御馳走になっていると、「今晩は何を食べたい?」と聞かれ「オオッ、夕食まで!」と感激し、先生行きつけのドイツ料理の店に連れて行ってもらいました。
しかしドイツ料理って何だ?シャウエッセン的なソーセージくらいしか思いつかずメニューを見ていると、Steakの文字が。

思えばこちらに来てからというもの普段は学食のお粗末な「お味は二の次、量で勝負」の食事、休みの日はフィッシュアンドチップス、冷凍ピザ、菓子パン程度しか食べていなかったので、ググッとこのステーキにひかれました。
しかしここでステーキというのもずうずうしい気がしてためらっていると、先生が「このステーキにしようかな。」と言いましたので、ここぞとばかり間髪入れず「僕もそれでお願いします。」と便乗しました。

目の前に運ばれてきたステーキはニンニクの香りがたち、鉄板がジュージューといっています。
無言でひたすらステーキにかぶりつきました。
ここでまたしてもフライドポテトがでてきたのですが、ここはひとつ白いゴハンが食べたいものだと少々切なくなりました。
しかし、そんなことはさして問題ではありません。
「久し振りに肉食ったどーっ!」とカチドキをあげたくなるほど胸が高鳴りました。

ステーキといっても腰が抜けるほど高いわけでもないのですが、持ち前の貧乏性と申しますか、節約魂がそれをかなえさせないだけの話なので今後はたまにはこういったものも食べてみようかなと考えさせられる出来事でした。


2011年6月6日月曜日

2000年03月15日 「実技の話」


昨日「苗木を植える」という実技の試験がありました。
この苗木を植える方法が日本の植木屋で経験したそれとは全く異なっていました。

日本では(少なくとも自分が身を置いた植木屋では)例えば苗木のサイズが高さ150センチ、根っこの広がりが80センチだとすると、新しく植える場所にタテヨコ100センチ、深さ40センチほど、苗木のくるぶしまでの穴を掘ります。
苗木の位置を決めたら掘り返したときの土をランダムに埋めて、苗の回りを盛り上げて水鉢という小さなダムなようなものを作ります。
後はたっぷり水をやって根の間に水と土が行き渡るようにします。
これを「水ぎめ」といっていました。

で、こちらではどうなっているかというと同サイズの苗木を植えるとして。
まずタテヨコ120センチ、深さ100センチも掘るでしょうか。
その際、土を3段階に分けます。
地面の表面の草や芝が植わっている数センチのところが一番栄養分を含んでいてこれをどける。
次にTop Soilといって黒い土の層。
で最後にSub Soilといって赤茶けた粘土質のちょっと硬い層でここにはあまり栄養分がないといわれています。

苗木に限らず植物は根っこから分かれ出た毛のような細かい根っこから栄養分を吸収していて、これの部分を意識して効率よく栄養分を吸収できるように工夫して植えるのが英国流のようです。

そのためまず一番表面にあった栄養のある土を掘った穴に一番最初に投入して、根っこに一番近いところに栄養分の多い土を配するわけです。
固い土の層をほぐして根を張りやすくするという意図もあります。
次にTop Soil、最後にSub Soilと埋め戻していきます。冬場の英国の土は水分を充分に含んでいるからという理由で特に水はやらないのです。

最初は「なんでこんな小さい木を植えるのに、こんな大袈裟な穴を掘らなくちゃいけないの?」と少々イライラしましたが、ようやく色々と分かってきました。
特にSub Soilの部分は粘土質で硬くてスコップでは歯が立たず、つるはしで掘りました。
半年振りに植木屋パワーが炸裂し、だんとつトップで実技試験を終えました。

しかし、張り切りすぎてあとで腰が痛くなりシンガポールで買っておいたタイガーバームを塗って寝る羽目となりました。
翌朝目が覚めると部屋はタイガーバームの香りに包まれていました。



2011年6月3日金曜日

2000年03月14日 「御報告」


新たな展開がありましたので御報告します。

ケンブリッジ大学植物園(Cambridge University Botanic Garden)というがあり、ここで一年間みっちりと経験を積ませてくれて、しかも生活費程度の手当てもでるという制度があるというポスターを学校の進路指導部で見ました。
ダメもとで応募してみたところ、書類選考を通過し面接試験を受けて採用となりました。

この道でやっている学生にとっては羨望の機会で、全英から多くの応募があり競争率も高いときかされていたので、自分が選ばれるというのはちょっと信じられませんが、とにかく決まりました。

9月4日からの一年間で、そのあとはまた現在のヨークの学校に戻って今やっているコースのひとつ上のコースを取って仕上げをしたいと思っています。

つまり、3年の英国滞在が濃厚になってきました。

銀行員からこの道を選んだのもヒョンなきっかけで、ここヨークにもとりあえず一年間のコースの受講しか決めずに英国にきましたが、偶然というか、タイミングというか、出会いというか、人生何が起きるか分からないと思うと面白いものです。

この先庭に関するどんな職業に就こうとも、今の自分の知識と経験レベルではまだまだで、もっと植物を知らねばと思っていましたのでケンブリッジ大学植物園で学べるというのはベストの道だと思います。
日当たりを好むのか、酸性土を好むのかといった植物の性格、サイズ、色、手触りといった特徴、増やし方、育て方、手入れの仕方、病害虫の駆除、予防、植物同士の組み合わせ等々、もっと深く広く知りたいのです。

英語を話すにしてもボキャブラリーが乏しいと伝えられることも限定されてしまいますが、これと同様に庭をデザインしてそこに何を植えて何を伝えるのかは豊富で確実な植物の知識がなによりも大切だと思うのです。

そういったわけで身に余るチャンスの到来にとても興奮しています。
これからも益々研鑽を重ねていきたいと思っていますので今後とも何卒よろしくお願いします。