どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2011年8月28日日曜日

2000年08月09日 「土足 vs 土禁」




日本では家にあがるときは玄関にて靴を脱いでスリッパなどに履きかえたりしますね。

英国でも最近はそのほうが清潔だということなのか、家の中では靴を脱ぐというのを何軒かのお宅で見てきました。

でもそのまま土足でドカドカと入りこむことも多くて、それに慣れていない僕は結構ドキドキしてしまいます。
クリーム色のように淡い色合いのキレイな絨毯に土足というのは気が引けるものです。

逆に日本人は異常に「靴離れ」が良いとでも申しましょうか。
例えば電車でおばさんが靴を脱いでくつろいでいたりというのは良く目にする光景です。

日本人は下足といった言葉がしめすように靴とは汚いものだという観念が根強く浸透している国民なのかなと思います。
結構ムチャするヤンキーなお兄ちゃんも愛車は土禁(土足禁止)にしているケースを見かけたりします。
欧米では想像するに土禁の車は存在しないでしょうね。

逆にコチラの方々はその辺の観念が希薄すぎるのではないかと思うことがあります。
電車の対座式のシートでは空いていれば靴のままその上に平気で足を投げ出している人を見かけることはしょっちゅうですし、寮で友人の部屋を尋ねると靴を履いたままベッドに寝そべっていたり。
日本人のわたくしといたしましてはかなり抵抗があります。

そんななか昨日の出来事。
寮の部屋を掃除してくれるおばさんがいて、日中部屋に入ってゴミ箱のゴミを片付けてくれたり、掃除機をかけてくれたりします。

昨晩部屋に戻ると手紙がありました。

「マサヤ 申し訳ないのだけど掃除機にあなたの靴ひもが吸い込まれて絡まってしまい、ご覧の通りちぎれてしまいました。
ゴメンナサイ。
弁償はしますので。
クリスティーヌ」

僕の園芸用のドロにまみれてひもの切れた靴が「机の上」にそのゴメンナサイ・メモとともに鎮座しておりました。

彼女は本当に気さくで良い人で、当然悪気ないのは分かるし、靴ひもはどうでもいいんですけどね。

なんかカラダの力が抜ける一件でした。

為参考(原文ママ)
Masaya.
 Your brown boot lace got caught up in hoover.
 I’m very sorry but if you can get some more I’ll pay for them.
Christine

2011年8月24日水曜日

2000年08月08日 「バーベキュー」



今日はガーデンデザインのクラスメイトのひとりが発起人となって彼女の家で皆が集まってバーベキューをしました。

家族同伴の参加者も多く、いつも学校では見られない表情が垣間見れて興味深かったです。

普段鼻柱の強いオバサンだなぁと思っていたら旦那様も負けていない感じでバランスがとれていたり、更にその子供もそうだったりして一人でウケていました。

「You’re joking!!」を口癖にするオバサンと「You know what I mean~」を連発するオバサンがいるのですが、その二人に一時挟まれて「この前×××は×××ってことに気付いたのよ、分かるでしょ・・・」「ウッソー!!」みたいな会話の応酬のさなかではなかなか落ち着きませんでした。

このオバサンの「You’re joking!!」は特に軽薄な感じがして耳障りで日本語で言う「ウッソー!!」と非常に似ている気がします。

バーベキューとはいってもとてもシンプルかつアッサリしたもので脂身の多い豚肉、ハンバーガーの冷凍パテ、スーパーのソーセージといった程度のもので、仕込みに何時間もかけて云々といったシロモノではありません。

庭の隅にテーブルがひとつ用意されて、その上にはサイドディッシュとしてオーブンで焼いたジャガイモ、中東風の野菜サラダ、チーズ、ピックルス、ポテトチップ、パンなどが。あとはビールやワインを飲みながらひたすら喋るというのがスタイルのようでした。

開始時間が13時で終了時間が15時と、これもアッサリしていました。

庭をデザインするときにバーベキューのためのスペース、設備を設けるか?という話は頻繁にでるのですが、英国人のバーベキュー好きをこうやって目の当たりにするとそれはとても重要な問題なのだと理解できました。

台所に比較的近い庭の隅に15人くらい座れるスペースがあると良いのだな、と勉強になりました。

日本ではこの夏の時期では蚊が多くてちょっと実用的とはいい難い気がしますが。

肝心のコースの先生が欠席でしたが、それはそれで普段の不満や悪口(とはいってもそんなに悪質なものではありませんが)を酒の肴に穏やかな日曜日の昼下がりでした。



2011年8月19日金曜日

2000年08月05日 「悪夢ふたたび・・・」

ヨークからケンブリッジに向かう列車から


昨日は日帰りでヨークからケンブリッジまで行ってきました。

目的は3つ。
①社会保険の申請に関して保険事務所で面接があった 
②アパート探し 
③自分の畑で育てた野菜を世話になった知人宅に届ける

9月からケンブリッジ大学の植物園での生活が始まります。
引越しの時には友人から譲ってもらった自転車を持っていきたいと思い、そのときの手間を減らすべく昨日は電車に自転車をのせて、知人宅に野菜を届けるついでにしばし預かってもらおうという作戦です。

よって寮を出てから目的地まで自転車を伴い、背負ったリュックには畑で収穫したタマネギ、エンドウマメ、ラディッシュなどを満載し、さながら戦時中の買出しといったかんじでした。
タマネギは新鮮なためかとてもニオイがきつくて、特に電車のなかではヒヤヒヤしました。

ケンブリッジの保険事務所は職安と機能が一緒になっているらしく、それっぽいいでたちの人たちが沢山相談にきていました。

相談カウンターは厳重なガラス張りになっていて、例えるならアメリカ映画でよく見かける囚人と面会するようなかんじと申しましょうか。
社会保険の面接は別室なのですが、順番を待つのは同じ待合わせ室で辺りを観察しているとカウンター越しに「今日125ポンド払わねぇとマズイんだよぉ。どうにかしてくれよぉ」と突っかかっているオジサンがいたりして厳重なガラス張りというのも頷けるのでした。

アパート探しは1日では決め難くてもう少し時間が掛かりそうです。

夕方、重い野菜をかついでケンブリッジ市内からおよそ8キロ離れた町の知人宅に野菜を届けて夕食を御馳走になりました。

そもそも彼が「会社を辞めてそういう道をすすむのも良いんじゃぁない?こういう園芸学校もあるよ。」と紹介してくれた張本人で、その彼に一年の成果を報告して自分の育てた野菜を食べてもらいたかったのです。

ヨーク行きの最終電車が19:57で、ケンブリッジ駅まで車で送ってもらいました。

ヨークとケンブリッジはなかなか不便に繋がっており、途中ピーターバラというところで乗り換えなくてはなりません。
乗り継ぎが悪くてピーターバラでは1時間待たねばならなかったので、迷わず近所のパブに行きました。
軽く飲んで頃合いをみて駅にもどると、モニターに「ヨーク行き:キャンセル」と出ています。
駅員に尋ねるとポイント故障だかなんだかで来ませんとアッサリ言い放ちます。
しかし代わりにヨークよりも北のニューカッスルに行く列車がくるのでそれに乗ってくださいとのことで一安心。

遅れてきた電車に乗ってヨークの手前の駅であるドンカスター駅についたころ猛烈な眠気が襲ってきました。
しばしウトウトしてハッと気が付き外をみると電車は止まっていてYorkという看板が見えました。

「ヤバッ!」と慌てて出口に走ったものの非情にも電車はゴトッゴトッと動き始めました。

万事休す。

しばらく頭の中が真っ白でしたが、どうにか我にかえり次の駅で降りるか、それともこのまま乗り続けるか善後策を考えました。

次の駅といっても山手線ではありませんので、ヨークからはかなり離れています。

しかも駅名も Northallerton と聞いたこともなければ、発音もできないような駅で、へたに下車すると本当に何もないところでエジンバラ野宿よりもツライことになりそうでした。

日中は天気もよく日帰りでしたので短パン、ポロシャツ、ウインドブレーカーという軽装であったので今度こそ野宿というわけにはいきません。

「そうだ。車掌に相談しよう!」

なんでこんな簡単なことを真先に気付かないのでしょうか。
そもそも当初予定していた電車がキャンセルになったからこんなことになった、くらいの言いがかりでもつけてやるくらいの気迫が必要だと気合を入れて相談しました。
車掌は時刻表を見て、無線でどこかに連絡して、出てきた答えが次のダーリントン駅で降りなさいでした。

そうすれば02:45にヨークに行く電車がくると言います。

悪夢再び。

最悪のシナリオである野宿は避けられそうですが、2:45ってその時点で2時間以上もあります。
ダーリントン駅に降りると案の定、店などはただの一軒も開いておらず誰もいやしません。
この寒い駅のホームにいるのも耐えられず、気持ちを前向きに切り換えて電車がくるまでの約2時間ダーリントンの町をウロウロと徘徊して寂しい時間を過ごしました。

結局その電車に乗って寮に戻ったのは午前4時でした。
2度あることは3度あると言いますが、もう結構です。


無人のダーリントン駅


2011年8月13日土曜日

2000年08月02日 「ファーストフード考」


暑中お見舞い申しあげます。

いよいよ8月に突入です。
熱中症で病院に運ばれる人が昨年の2倍と聞きました。
植木屋を続けていたら今頃病院にいたかもしれません。

さて、本日は英国におけるファストフードを考えてみようというわけです。

日本と共通しているのはハンバーガーショップではないでしょうか。
これはもはや日本、イギリスに限ったことではないですけど。
ハンバーガー以外ですとフィッシュアンドチップス、サンドイッチ、ドネルケバブ、ピザ、チャイニーズといったところでしょうか。


まず英国を代表するファストフードであるフィッシュアンドチップス(F&C)ですが、これは白身魚のタラ(cod もしくは haddock)に小麦粉をといたコロモをつけて揚げたものをチップスとともに、お好みで塩と麦からできたモルトヴィネガーをドバドバとかけて食べるというもの。
不思議なもので歩きながらハフハフしつつ食べると美味しさがアップすると思うのは私だけでしょうか。

ちなみに英国ではフライドポテトのことをチップスと言い、ポテトチップスのことをクリスプス(crisps)と言います。
カロリーが高くてなんとも栄養バランスが悪そうですが、食べているうちに病みつきになり最近は最低でも週に一回はこれを食べずにはいられません。
英国人に言わせると魚そのものは白身なので言われるほど不健康な食べ物ではないとのことです。

全英には約8,500ものF&C屋があって年間約3億食も食べられているのだとか。
実はこれはこの前聴いていたラジオからの情報なのですが、そこでは加えて乱獲によるタラの減少で今後はタラの保護を考えていかないとF&Cが食べられなくなるというようなことを言っていて、F&Cファンとして真剣にラジオに耳を傾けた次第です。

ファストフードなんだから英国どこで食べても同じ味かというと否で、僕のいるヨークシャー州は英国北東部の代表的な漁業の町であるウィットビーとスカーボロを擁し、新鮮なタラが手に入るので英国で一番F&Cが美味い場所と言われています。

確かに思い出すにロンドンで食べたF&Cは高くてあまり美味いものではありませんでした。

味を決定する主な要因は①魚の鮮度 ②油 ③バターといわれるコロモ だと思いますが油が臭かったり、コロモがサクサクしていなかったりするとガッカリです。

とても興味深いのは油です。
どこは定かではありませんが、僕の見立てですと南ヨークシャー州とリンカンシャー州のあたりに境界線があってそれ以南ですとすべからく植物油、それ以北ですとすべからく動物油を使うのです。
どちらがヘルシーかなんて野暮な議論はさておき、動物の油で揚げたほうがなんともいえない風味があって僕は断然美味いと思います。
ここでいう動物油はラードといって豚からとったものかドリッピングといって牛からのものかがあるようです。


そしてファストフードは安くなければなりません。
せいぜい3ポンド以内。

Take awayといって持ち帰りか立ち食いが基本ですが、なかにはレストラン式になっていて店内で座ってたべるところもあります。
店で座って食べると値段は倍くらいします。

しかし時として座って食べなくてはならない場合があります。
それはタラがデカイときです。
通常のサイズは20センチくらいなのですが、その上のラージで30センチくらい、極めつけジャンボでは40センチ以上あってとても歩きながら食べられるものではありません。
これまでに何度かF&C有名店と誉れ高い店でジャンボを食しましたが、生きていて良かったと思える満足度でした。

英国人の友人などは、タラにチップスが付いてくるのにさらにブレッドアンドバターといって食パンにバターをコッテリ塗ったものを一緒に頼んだりします。
あくなき炭水化物と油への欲求ということでしょうか。
さすがにこれには見ているほうが食傷しましたが。

基本は塩とヴィネガーですが、好みですりつぶしたグリーンピースにミントソースをいれたマッシュドピーとかカレーソースをかけて食べる人もいます。

僕の記憶では、10数年前に英国に滞在していたころはF&Cといえば古新聞に包まっていたものですが、最近は見かけないので聞いてみると食遺品衛生上の見地から現在では古新聞を使ってはいけなくなったとのことでした。
繊細なのか大雑把なのかときどき分からなくなる不思議な国です。

F&C屋では大抵F&Cだけ売ってますという硬派な店が多いのですが、それでもサイドメニュー的においてあるのが①バタード・ソーセージ ②ピクルド・エッグ ③フィッシュ・フィンガー ④フィッシュ・ケーキ といったあたりでしょうか。

(左・タマネギのピクルス 右・タマゴのピクルス)

①はこちらの独特のパフパフの食感をもったソーセージにコロモをつけて揚げてあるもの。
②煎餅屋の店先で煎餅が入っているような、あるいは駄菓子屋でヨッちゃんイカが入っているような、そんな容器にゆで卵が酢漬けになって入っているというもので僕は怖くて食べたことはありません。
一体どんな味がするのか、そしてピクルスとはいえ所詮タマゴゆえにその保存期間は? などと疑いの視線でその怪しげなタマゴを見ています。
③は日本でもスーパーの冷凍食品売り場で売っているすり身魚のフライのようなもの。
④これはついこの前試してみました。
ケーキとはいっても甘いものではなく、ジャガイモを厚めにスライスしたもの2枚の間にほんの少々魚のすり身がサンドされ、さらにまわりにコロモをつけて揚げてあるものでした。
これとF&Cを一緒に頼んでしまい、あとでちょっと後悔しました。

何故かF&C屋というのはインド人、トルコ人、ギリシャ人といった移民系の方々が店を構えているケースが非常に多く、純英国人のやっているF&C屋というのはとても珍しいと思います。
店は一日中オープンしているわけではなく、例えばよく利用する隣村のF&C屋なんてのは16:00から21:00までの営業で、しかも日曜日、月曜日と週休2日を貫いており、どうやって生計を立てているのか他人事ながら気になります。
それは極端な例ですが、日本の牛丼屋のように24時間頑張るF&C屋はこの国には存在しないと思われます。

続いてサンドイッチバーですが・・・といきたいところですがF&Cに対する思い入れが激しい分、相当長く書いてしまいましたのでまたの機会にということで。

かくのごとく相当なF&Cファンになってしまいましたが、日本に帰国したあかつきにはこの味が恋しくなるのは想像に難くないので、この際カラダに悪かろうが心行くまでこの味を堪能しようと思っています。
読んでいて胸焼けしませんでしたでしょうか。

暑さのヤマもあと一息で越えることかと思います。どうぞお元気で。

2011年8月8日月曜日

2000年07月25日 「全英オープン」



夏真っ盛り、暑い毎日かと存じますがお元気でしょうか。

22日(土)から24日(月)までスコットランドに一人で行っていました。

先週はゴルフの全英オープンが開催されていて学校のホールでテレビ観戦していたのですが、この地続きの場でこのビッグイベントを生でやっているのかと思ったらいてもたってもいられなくなり、エジンバラまでの往復の電車チケットだけ確保してヨークから発作的に出発しました。

突然の思いつきでしたので値段が安くて便利な時間というチケットはありえず、かなり無理のある行程ではありました。

土曜日は朝6:30にヨークを出発しエジンバラに9:30着。
それからローカル電車に1時間ゆられルーカスという会場最寄の田舎駅まで行って、シャトルバスに乗り換え会場にたどりつきました。

春のイースター休暇で来たときとはうってかわって雰囲気が異なり、モノスゴイ人出で熱気に包まれておりました。

大会開催中は晴天に恵まれ全英オープンのイメージとしてある「強風」「冷たい海風」「どんよりとした雲」「雨」とはほぼ無縁の快晴が続いており絶好の観戦日和でした。

観戦方法として「一箇所にとどまって次々と来るプレーヤーをみる」「ひとつの組だけをひたすら追いかけて通してみる」のいずれかを採択するか思案しました。

後者の場合はその選手に思い入れが強くて他の選手は見なくていいという覚悟が必要ですが、どの選手を追いかけるかといえばそれはやはりタイガーウッズでしょう。

しかし全英オープン史上最高の人出であったらしく、おびたたしい数のギャラリーで、そのほとんどが「ウッズ狙い」でしょうから一緒にまわっても何も見れないと思われ前者の観戦方法にしました。

会場をウロウロして吟味したところ、6番のティーグランド横であれば「ティーショットが見える」「ティーグラウンド越しの5番と13番のダブルグリーンのパットが見える」「トイレ、売店に近い」という好条件であることを発見。
そこに決めました。

3日目と最終日を見たのですが、決勝ラウンドは全部で37組まわっていて第一組がスタートするのが8:40、そしてウッズの最終組のスタートは15:00です。

スタートしてから6番ホールに来るまでにはほぼ90分あって「じっと我慢の子であった」状態でした。

早い時間のそれほど人気がない選手のうちは途中でトイレにいったり売店にいっても元の場所を確保できますが、後半10組ほどになるといつの間にか人垣ができあがり身動きが出来なくなります。
トイレに行かなくてもいいように水分摂取も控えてかなりストイックなゴルフ観戦となりました。

それでも自分の2メートル前で世界屈指のプレーヤーが次々とティーショットを放っていくというのはなんとも夢のような経験でした。
当然ながらダブッたりチョロッたりするようなトラブルショットは皆無で打った球がシューッと空気を裂いてまっすぐ飛んでいきます。

キャディとプレーヤーの会話が聞こえたり、キャディバッグの中が見えたりして我慢して長時間粘っただけのことはありました。

さて大会3日目、僕にとっては初日を終えエジンバラに戻ると既に21時を回っており、そこから宿探しとなりました。

前回宿泊した安宿も含めていくつも当たったのですがどこも満室だとのこと。
この英国を代表するスポーツイベント、さらに史上最高の人出というだけあって予約もなく当日に宿を決めるなんてことは不可能なわけで宿も決めずに飛び出してきた自分の楽観的人生観が裏目にでました。
いくら悩んでもないものはないわけで、ついに最悪の選択肢である野宿をする決意をしました。

一応24時まではパブでビールを飲みながら屋根の下にいたのですが、閉店とともに外に出されてしまいました。
夏だというのに日が沈んだ22:00頃から急激に冷え込んできて日中の暖かさがウソのようです。
とりあえず持ち合わせていたフリースジャケット、長袖シャツ、ウインドブレーカーを着てみましたがそんなものでは到底歯が立たないほど寒さは厳しくなってきました。

気温は10度を下回ったと思います。

早起きしてきたこと、終日外を歩き回ったことなどで疲れはピークでしたが、寒さで眠るに眠れずホトホト困りました。

そんな折、ふと段ボール箱が目に入り、これをつぶして横になってみるとかなり暖かいのを発見し嬉しくなりました。

とはいっても大袈裟に横になるのも人目がはばかれ、隅の石のベンチに段ボールを敷いて30分ほど眠りました。
親が見たら段ボールで眠る息子をみてさぞ嘆いたことでしょう。

30分がある意味限界でした。
段ボールがあっても寒いのは寒いわけで風邪をひきそうでしたし、熟睡して不審者になにかを盗られても困ります。

ジッとしていても寒いだけなので、カラダを暖めるためにアテもなく深夜のエジンバラの街をひたすら歩きました。

そもそも日本のように24時間営業しているコンビニ、ファミレス、映画館などがないからこんな目に遭うのです。
歩くにしても4時間を越えたあたりで今度は足が痛くなってきてなんとも情けなくなりました。

「将来失敗しても最悪段ボールで暮らせるサ。命をとられるわけじゃなし、気楽にやるヨ」なんて言っていたのですが、イザ本当に段ボールを体験してみるとこれは想像以上に厳しいものだと悟りました。
特に真冬をあれで過ごすのは決死の覚悟が必要かと思われます。

その後も疲れて30分眠る、寒さで起きて歩く、疲れて眠る・・・と繰り返し時間が過ぎました。

4:30ころ東の空が白々としてきて頭上をカモメたちが鳴きながら飛び交い、冷たい海風が吹き上げてくる・・・。
やっと朝だ。
あの朝は生涯忘れがたいものだという気がします。


そんな夜を過ごしたことに懲りもせずルーカス行きの始発電車に乗って再びセントアンドリュースに赴き史上最年少グランドスラム達成の瞬間を見てきたというわけです。


今回改めて日本の特別ぶりを目撃しました。

会場にいるのは地元英国人はもちろんアメリカ、オーストラリア、欧州各国からのようでしたが、東洋人はそのほとんどが日本人のようでした。
その数もかなりのものです。
自分もその一人ですが。

更に日本選手、特に丸山のあとにはカメラマン、記者、役員など腕章をつけた「特別」な日本人がコース内をゾロゾロ金魚の糞みたいにくっついていきます。
日本選手以外でそんな選手はほとんどいません。
思うに日本企業のスポンサーの圧力で腕章をつけた怪しい特別な方々がコース内を我がもの顔で闊歩していたのではないかと思います。

午前中丸山にくっついていたじゃぁないという方々が午後はウッズの後ろにちょこんとくっついて歩いていたりして。
ちょっと違和感がありましたね。
特に「タイガーのティーオフまであと2時間です。」とラジオ中継を聞きながら、「ってことはここに来るのはあと3時間半後かぁ」とヘトヘトになりながらも忍の一文字で待ち続けたものとしては、そんな特別な腕章は「ズルイッ!!」と腹が立ってしまいました。

思いつきの衝動的な旅でしたが今回セントアンドリュースに行ったことは本当に価値があったと満足しています。
唯一残念だったのが大会2日目でジャック・ニクラウスが姿を消して1日違いで彼をナマで見れなかったことでしょうか。

そんな全英オープンのお話でした。




2011年8月4日木曜日

2000年07月20日 「バラバラ・・・・」



日本は梅雨明けして本格的な夏の到来かと思います。
こちらはいつもはアテにならない天気なのですが今週はどういうわけか厚い雲がなく爽やかで清々しい夏といった風情です。
湿気が少なく、さながら北海道の夏のようで、ラベンダーなどもそこらに雑草のように咲きほこっています。

さて何がバラバラなのかと申しますと数や単位です。
以前にヤード、メートル、ポンド、キロなど混在していてもうメチャクチャですとお伝えしたかもしれませんが今回はその追加です。

まずコーンフレークを食べるため牛乳を買いに行きますれば、ハーフパイント、1パイント、2パイント、4パイント、そして更に1リットル、2リットルとそれぞれ売っています。

スーパーで4パイント(2.27リットル)もの牛乳を3、4個まとめて買っているオバサンを見掛けると、さすが狩猟民族、肉食民族だなぁとヘンに感心してしまいます。
因みにお値段は2リットルで140円位ですので日本に比べると安いと思います。
味もかなり牛乳らしい牛乳のお味で、美味しいと思って飲んでいます。

そして例のティーボーンステーキはオンス表示でした。
本日のオススメ・メニューということで店主が黒板にチョークで「T-bone steak 20oz.」と手書きで書いてあったのですがクセ字であったため「20oz」が「2002」に見えて、「ウーム、2キロは食えんなぁ、いくらなんでも。でも14ポンドという値段を考えるとそのくらいの肉ってことか?」などとドキドキしたものですが、普段オンス表示はそんなにお目に掛からないので困惑したわけです。

単位とはちょっと異なりますが、日本からきて違和感があったのは缶ビールの容量。
500ccと440ccの2種類があってこの60ccの差は何かといつも考えてしまいます。

アルコール度数も日本ではビールは5~5.5%が主流ですが、こちらは3.5~7.0%くらいに幅があってアルコール度数が大きくなると値段も高くなるようです。
7.0%のビールも試したことがありますが僕の口には合いませんでした。

缶ジュースを持ってイッキ飲みする友人を見て「さすがにこちらの人たちは手がデカイなぁ。缶が小さく見えるもの。」と思っていたら缶が本当に小さかったなんてこともありました。
日本では350ccが主流ですが、こちらでは330ccが一般的のようです。

僕はスモーカーではないのでこの国のバカ高いタバコを吸うことはありませんが、一箱ざっと800円位します。
更にスゴイのはパブの自動販売機で買うと20本入っているはずの箱に16本しか入っておらず、お値段は通常の20本入りと同じだという理不尽さ。
この一本のタバコが50円もするのかと思ったら吸えませんね、僕は。
煙で腹は膨れませんので。

そんな数に関するバラバラなお話でした。

2011年8月1日月曜日

2000年07月19日 「贅沢」



学校が休みになって食堂も休業になったため最近は自炊をしています。
とはいっても鍋やフライパンを持っているわけでもなく、オーブンや電子レンジを使ったインスタントやレトルト食ばかりですが。

もっぱら1.50ポンドの冷凍ピザをオーブンで温めるか、チキンティカマサラという2ポンドのチキンカレーをレンジで温めるか、ということを交互に繰り返しているだけのことです。

たまにヨーク市内に出掛けるとあいも変わらずフィッシュアンドチップスかドネルケバブといったファストフードばかり食べています。
これらはお財布にそこそこ優しくて満腹感もあるので僕のような貧乏学生にはピッタリです。

最近は朝の1時間のランニングが日課となり、そのあと朝食としてコーンフレーク、バナナ、リンゴといったパターンか、食パンにマーガリンとマスタードをぬってハムを挟んだサンドイッチなどを作って食べています。

なにせ貧乏学生なので何をするにしても「高い」「もったいない」という気持ちが先行してしまいます。
金に糸目をつけなければそれなりに美味しいものも食べられると思うのですが、ヘンに節制するのでかえって日本でウマイもの食べていたなぁなどと感傷にひたることが多くなっています。

そんなことを言っておきながら、本日相当な贅沢をしました。

行きつけのパブに行く度に、黒板にチョークで書いてあってずっと気になっていた「ティーボーンステーキ20オンス 13.95ポンド也」をついに注文しました! 

今日は昨日に続き晴れ間がのぞく夏らしい気持ちの良い陽気でしたので、芝のビアガーデンで夕陽を浴びながらビールを飲むのはグッドアイディアではないかと一人でパブに繰り出しました。

パブへ向かって歩きながら「今日は天気も良いし、気分も良いからずっと気になってたアレを食べちゃおうか」と思いつき、もうそれからは頭の中がディーボーンステーキ一色に染まりあがってしまいました。

パブに到着してバーカウンターまずはいつものビールを頼んで一口ビールを飲んでから意を決して注文してみました。
黒板を指しながら「このティーボーンステーキくれるかな」と注文した声はこころなしか上ずっていました。
焼き加減もパブへ向かう道中あれこれ考えて決めた肉汁したたるミディアムレアを指定して裏庭にあるビアガーデンの席につきました。

まだ早い時間だったためか誰もおらず、暖かな夕陽を浴びながらビールを飲んでステーキを待ったのでした。

2杯目のビールを買って席についたころについにステーキが運ばれてきました。
このパブで他の食事メニューは5~6ポンドのものがほとんどで、ましてや10ポンドを超える食べ物はこのティーボーンステーキ以外には見当たらず、その特別ぶりが知れます。


肉は20オンス(約570グラム)で付け合せの野菜もしっかりついています。
肉は予想していたよりも柔らかく大満足でございました。

ただ味付けがね・・・。
ここでもやっぱり塩、コショウ、ヴィネガー、マスタードといった調味料しか供されず、醤油があれば・・・とちょっとそこだけが悔やまれました。

ステーキとビール2杯で約17ポンド。
日本でよく行っていたトンカツ屋でロースカツ定食とビールで3000円くらいだったので、まあそれと同じ感覚なのかと思えばそれほど大袈裟に贅沢ってほど贅沢なことでもないのですが。

とはいえ外食時には5ポンドでリミッターが働くため、今回は破格の贅沢だったというわけです。

ごちそうさま。