どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2012年7月16日月曜日

2001年11月20日 「スペイン・バルセロナへ」



はてさてこの度はスペイン南部バルセロナに植物園のお天気オタクのジョンと二人で3泊4日で行ってまいりました。

茲許ヨーロッパ各国向けの格安飛行機各社が派手に格安戦争を繰り広げております。

今回はジョンが「信じ難いバーゲンだ!バルセロナ往復40ポンドだぞ!!」とエラく興奮して旅行を提案してきたので、僕としても一人旅よりは2人で行ったほうが何かと経済的なのでそれにのっかって旅が実現しました。

因みに40ポンドはザッと日本円で7000円くらいでしょうか。

それでロンドン⇔バルセロナ往復できるとはまさにバーゲン。

更に因めばバーゲンという単語はジョンがこの世で一番好きな言葉です。

これが噂のジョン なんと同じ年!


二人してとくにバルセロナで何がしたいということは無く、普通に観光してウマイものが食べれて楽しくできれば良いやという気楽な旅でした。

飛行機を決めて宿はジョン任せにしたところ普段のケチケチ・ライフスタイルに反してて一泊41ポンドの3ツ星ホテルを確保したとの報告がありました。

一泊の宿代が往復の飛行機代よりも高いとは少々納得がいかない部分もありましたが、これは結果的には良かったです。
ホテルのロケーションがほぼ街のド真ん中で、夜更かしのスペイン体質に合っていました。

部屋は節約のためにシングル×2ではなくツイン×1で。
事前にジョンが「オレはいびきをかくけどいいか?」と言うので耳栓を持参しました。

格安飛行機だけあってとても不便な時間の飛行機で、出発が朝7:15、チェックインが2時間前の5:15、それに間に合うようにケンブリッジを4:00のにバスで出発といった具合で、まだ星がまたたく時間に家をでました。

バルセロナ到着後は市内観光バス2日券というものを購入して市内の名所巡りを時間の許す限りしたのですが、あろうことか大雨、大風の荒天となってしまいました。

傘をさすのもはばかれるほどの荒れ具合で、オマケに気温も7度とさえません。

せっかく地中海の温暖な太陽を期待してきたのにケンブリッジとたいして変わらない寒さです。


強風で倒れてしまったヤシの木を見つけて「オレを撮ってくれ」と得意なジョン

バルセロナといえばガウディの建造物が有名です。
正直なところあまりそれらに関心はなかったのですがイザ実物を見てみると「コリャすげぇや」と感心するやら圧倒されるやら。

他に類を見ない物凄いオリジナリティで行って実物を見る価値は大であるかと思われます。

今回の旅はジョンという人間を知る旅であったといっても過言ではありません。

彼のような人物を私はかつて知りません。

他に類を見ないオリジナリティという点ではガウディに負けていません。

まず天気オタクだけあって、今回の荒天には大興奮、大喜びで、こちらがビショビショになって辟易としているときに一人で嬉々としていました。

翌日の地元の新聞は荒天を伝えるものばかりでしたが、彼は「これは良い記録だから」と言って新聞の売店でスペイン語も読めもしないのに全ての新聞を立ち読みして、一番劇的な写真が掲載されている新聞をおみやげに買っていました。

新聞スタンドで店員の嫌な視線をものともせず新聞を立読みするとは根性があります。

更に「ガイドブックによるとバルセロナの動物園には白いゴリラがいるらしい。そいつをどうしても見たいのだ。」と言い出し、風に吹き飛ばされそうになりながらようやく動物園にたどりつくと「荒天につき閉園」と看板がでていて本当に悔しそうでした。

そんなに白いゴリラが見たかったのかと、こっちがビックリです。

実物の白ゴリラが見られず看板で満足するジョン

荒天で動物園が閉園であったり、ケーブルカーが運休したりしてやることがないと思ったら大間違いで、「マサヤ、海岸に波を見にいこう。凄いものが見れるに違いない。」と言います。


渋々海岸に行ってみますと、海岸には高波が押し寄せ想像したとおり荒れに荒れていました。

彼は心底嬉しそうな笑顔で写真を撮りまくっていました。


かなりシリアスな高波にもめげず写真を撮りまくるジョン

お互い潮で顔面がしょっぱくなるまでそこにいて、そろそろ場所を変えようとしたところ、雨が強まったので近所のレストランに避難して軽食を注文した後も席には戻らず立ったまま店の玄関から外の荒れ具合を熱心にいつまでも見ていました。


ここまでいくとスゴイ奴と感心するしかありますまい。

今回の最大の問題点はふたりしてスペイン語がちんぷんかんぷんだったということです。

観光地バルセロナでありますから英語でオッケーだとタカを括っていたのですが、思ったように意思疎通ができません

タパスという小皿料理とワインという希望のパターンを貫くにはせめてメニューを理解できる程度のスペイン語力が必要なように思えました。

英語が通じる観光客をあてこんだレストランは美味しいとは言い難く、地元の人で溢れる美味しいレストランは英語が通じないといった具合です。

注文をとりにきたウエイターにアレコレ必死の思いで注文して、「なーんでこんな簡単な英語が分かんねーんだ、アイツらは!!」と憤ってしまいましたが、冷静に考えればここはスペインなんだからこっちがスペイン語を話すべきなのでしょうね
全体的にお値段は低め、お味はヨロシクて満足できました。

毎食会計を済ませるたびに「××ペセタだってさ、バーゲンだな!こりゃ。マサヤ!!」とニンマリするジョンの笑顔が今でも鮮明に思い出されます。

一日の行動を終え、夕食前にシャワーを浴びるためにホテルに戻り、ジョンが先にシャワーを浴びました。

間髪を入れず僕が続いて入りシャワーからでてくると小さなベランダに部屋のイスを出して、そこに腰掛けてどこで仕入れてきたのか赤ワインを優雅に飲んでいます。

僕はてっきり彼が着替えも済ませスグにでも夕食に出掛けられる体制にあるかと思っていたのです。

別に悪いことではありませんが、限られた時間で出来るだけ沢山のものを見よう、沢山のことをしようという発想に支配されていた僕は彼が悠然とワインを飲んでいるのをみて衝撃を受けました。

こんなスタイルもあるのだなぁ、と勧められたワインを飲みながら深く考えさせられてしまいました

初めてのバルセロナはガウディに唸り、フラメンコに感激し、タパスに舌鼓を打ち、ワインに酔い、ジョンの言動・行動に笑い、とても楽しいものでした。

これでスペイン娘とロマンスのひとつでもあれば文句はありませんが、ジョンと「バーゲンだ!!」と喜んでいるうちは夢のまた夢でしょうか。

そして日本人としてイギリスとスペインを比べずにはいられなかったのですが、愛すべきイギリスではありますが何となく「努力の足りない国」という気がしてしまいました。

うまく表現しづらいのですが、イギリスという国は進歩に対してとても臆病な国だと感じました。



どこでこんなものを買ってきたのか?ジョンが買ってきたソンブレロでひとしきり盛り上がる

バルセロナからケンブリッジに戻ったのは土曜日の昼の3時頃。


何故といって隣町のイーリーの大聖堂で行われる聖歌隊のコンサートを見るためでもあったのですが。


バルセロナの低い天井で熱気に溢れた情熱的なフラメンコを観た翌日に高い天井の寒い大聖堂でコートにくるまり手をさすりながら聞く聖歌。

静と動。

なんともいえない対比がそこにありました。











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