どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2013年4月26日金曜日

2002年09月06日 「引越のことなど」


9月。

お知らせしましたように水曜日に無事ヨークに引っ越しました。

土曜に荷物を全て車に積み込み、そのまま4泊ケンブリッジの友人宅を泊まり歩き、しばしケンブリッジ、ロンドン界隈をゆっくり歩いておりました。

学校は来週の火曜日からで、それまでは、ヨークの新しい部屋で独りになり、どことなくセンチメンタル、かつメランコリックな気分でいます。


引越し。

これはなかなかドラマチックでしたね。

2年間住んだGWYDIR STREET(ぐぅわいだぁ すとりーと)は、ビル君という隣人に恵まれ、ケンブリッジ内でも指折りのパブが2件も近くにあり、街の中心地まで徒歩15分、植物園徒歩15分、駅徒歩10分と、とにかくアクセスが良く、馴染みのパン屋、新聞屋、カフェもできて、気に入っておりました、2点を除いては。

その2点とは。
①部屋が結露し、そこにカビがはえること
②大家のおばちゃん(ジル)が極度のおしゃべりなこと

①は特に冬に室温と外気温の差で起きると思われますが、その結露を煽ったのは、僕 が電気代をケチって暖房(電気ヒーター)のスイッチを限界まで入れなかったかもしれません。

2年間に渡り育て上げた「カビ君」たちはタンスの裏、チェストの裏、本棚の裏、TVの裏などに広がり、最後には凄惨を極めておりました。
(記録として写真もとってありますが、食事中のことも考慮して添付はやめておきます)

ここで大家のジルとのカケヒキがあったのですが、このカビに加え、「電気代」「市民税」「敷金」を絡めつつ説明せねばなりますまい。

電気代」とは、2000年9月に入居した際、ジルが言うには「本来は部屋に備え付けてあるメーターがゼロになったら、コインを入れてメーターを巻き上げるのだけど、この部屋は壊れているので、今一緒に目盛りを読み合わせして、後で清算しましょう。」といって一緒に目盛りの数字を読み上げ、それをメモしてありました。

14ヶ月後の2001年11月上旬に「1度電気代を払ってもらおうかしら」といって、再び数字を読み合わせると、その数時は逆に減っていて電気代請求の根拠がなくなってしまいました。

ジルは「困ったわねぇ。じゃあ月平均10ポンドってことで良いわ」とアッサリ言うのですが、こちらとしては「冗談じゃあございません」デス。

普段、苦学生、ケチケチ学生を標榜するワタクシとしては、電気ヒーターは電気代がかさむとして、膝には寝袋、上半身はダウン、頭にはニット帽で過ごし、寝るときもマイナス7度対応の寝袋で過ごしてきたのに、それを「平均」などという一言で片付けて欲しくはないっ、と訴えたところ、そこで電気代の件は頓挫してしまいました。

そのことを隣人ビル君とパブでビールを飲みつつ話すと、「でも、お前は毎日料理するだろ、暖房だって全く使わない訳じゃあないし。それはお買い得かもよ」と言われ、ジルに13ヶ月分として130ポンドの小切手を送りました。

電気代は調査する、といったそれ以来、今後どうするかも決めないまま、その件についてはまったく音沙汰がなくなりました。


「市民税」
これは日本の固定資産税と市民税の中間にあたる気がしますが、まあ、家一軒ごとに課税され、大家はそれを店子の数で割って請求してくるのだと思います。

ある日、あるところで「学生は市民税は払わなくていい」と小耳に挟み、大いに興奮しました。

2年分の約300ポンド、払うと払わないでは雲泥の差があります。

ある日、ジルに出くわした際、市民税の件にことが及び「僕は学生なので払わなくて良いと思うのですが・・・」というと、ジルの顔色がササーッと変わり、「イイエ、あなたの今の身分は学生ではないから払う義務があるのよっ!」と、かなり攻撃的に言ってきました。

実際、本件は小耳に挟んだ程度で、市役所に行って確認せねば、と思っていたので、確認前に議論するのは得策とは思えず、その場をなんとかつくろい別れました。

しかしその時に「This kind of argument is getting us nowhere」と言ったところ「アーギュメントですって?!、これはカンバセーションよっ!!」とジルの興奮した鼻息で3メートル程飛ばされそうになりつつ、「英語なんて嫌いだよ、クソっ」と情けなくなりました。

その後、市役所、無料市民相談所、などで相談したところ、払う払わないは大家と店子の間の取り決めだということで、決定打が見つからないまま、悶々としていましたが、あの口から先に生まれてきたようなジルに議論、しかも英語で勝てるはずもなく、諦めかけていたところ・・・・。

なんと救世主となったのは、隣室のビル君でした。

彼は普段から交流しているので、僕の事情を分かっていて、ジルにうまく取り入って、学校側から僕が学生である旨の手紙を貰えればそれで放免するとのことで、拍子抜けするほどアッサリ解決してしまいました。

その時にビルが言うには「ジルが、部屋をでるまでにカビをふき取れ、と言っていたぞ」とのことでしたが、「何で、オレが?」と突っぱねようとしたところ、「敷金の事があるだろ。やっぱり出来るだけキレイにした方が良いよ」と説得され、暇を見つけては、ゴム手袋とマスクをして、英国版カビキラーで、シューッシューッ、ゴシゴシとしてはみたものの、2年間に渡り育ってしまったカビはそんなものでは落ちません。

でも、「何でこんなこと・・・」と涙ぐみつつも出来るだけのことはしました。

そして、事態は更にフクザツになりますが、僕の部屋がカビだらけの状態だったためかどうかは知りませんが、9月からの入居者が決まらずにいたところ、ある日植物園の同僚のマークが「実は急な事情が出来て部屋を探してるんだけど、オマエの部屋見せてくれない?」と言われ、表事情、裏事情も全て説明して見せた所、かなり切羽詰っていたようで、ナント翌日大家と契約してしまいました。

かくして、僕が8月31日に車でマークの家に荷物を取りに行き(マークは車がないので)、そのまま僕の部屋にめでたく入居する、という、当初想像だにしない結末となりました。

一番喜んだのは大家のジル。

なんてったって家賃の取りもれがない無駄の無い見事な家賃リレーのバトンタッチとなった訳ですから。

最後は、部屋を雑巾で拭き、掃除機をかけてマークに引渡しをしましたが、やおらジルが部屋に入ってきて、「カビは拭いたのか」「洗面台は洗ったのか」等といろいろ「ケチ」を付けてきました。

想像はしていましたが、敷金「238ポンド」から幾らか取ろう作戦です。

結果的には、
①電気代は昨年払った130ポンドで放免
②カビを含め部屋の掃除代50ポンドを敷金から差引
で話が付きました。

市民税が浮いたこと、電気代も実質過去約半年が浮いたことで、溜飲はかなり下がったものの、このオバチャンともう2度と会わなくて良いのかと思うと、それが何よりです。


後日談を幾つか。

(壱) 「さらばっGWYDIR STREETよ!」と意気込んで出発したものの、その晩から宛てにしていた友人の家の電話番号が、引越しのドサクサで見つけられず、結局その晩は、「また来たよ、GWYDIR STREET・・・」とビル君の部屋の床で寝袋で1泊したこと。

(弐) マークは新しく入居したものの、大家はやはり部屋の全面的な塗り替えが必要だと思ったらしく、塗装が完了するまでの3日間何処かで寝泊まりしてくれと言われ、話が突然だったマークは最初の1泊はユース・ホステルに泊まったのだとか。

当然、代金は大家持ちながら、「申し訳無いっ、マーク君!!オレが変な部屋を紹介したばかりに・・・」と少し罪悪感が。

そして、水曜日の午後からこのヨークの住人となりました。

部屋探しの段階で第一条件が「セントラル・ヒーティングがあり、カビの恐れがないこと」だっただけに、今度は暖かい冬が送れそうです。

どうなりますやら。

日本はこれからかなり良い季節じゃあないでしょうか。

どうぞ、去りゆく夏を惜しみつつ、来るべき秋を元気に満喫下さい。

それでは、また。



2013年4月12日金曜日

2002年08月21日 「2002年・夏」



残暑お見舞い申し上げます。

と書いておきながら、こちらは申し訳ないですが1年の内で一番良い季節です。

英国の夏は、日照時間が長く、湿度は低く、数々の花が次から次へと見頃を迎え、冬の鬱陶しさとは対照的に過ごしやすく、良い季節です。

湿度が低いというのがカギだと思いますが、街中でクーラーのある施設はスーパーか大型の本屋くらいのもんで、車に至ってはよほどの高級車でない限りエアコンはついていません。

朝晩は少々冷えこむこともあって、朝の通勤時間帯などにはダウンジャケットを羽織っている人を見かけたりもします。(これはちょっと着すぎ、と思って見ていますが)

実際、夜中には10度を切ることもあるので油断は出来ません。

今日は8月20日。
丁度3年前の今日、成田を発ったのですが、「丸3年かぁ」と思うと長いような、短いような、不思議な感覚にとらわれます。

とにかく自分の中では記念日。
密かに祝杯をあげます。

さて、8月。僕も少々夏休みらしいことを幾つかしてみました。

第一は「北海で泳いだ」こと。

北海と大袈裟に言ったって、そもそもイギリスの東部は北海に面しているのでそれほど鼻息を荒げて言うほどのことはありませんが。

でも「北海油田」なーんていってイメージで沸くのは寒々しくかつ荒々しい海で、ここで泳ぐというのは一生の記念になるのでは?と思って決断した次第。

アパートの隣の部屋のビル君の実家に誘われて遊びにいった際、海岸まで徒歩5分ということで夕方に散歩がてら出掛けました。

するとビル君が「泳ぐぞ」と言って、スルスルと着ているものを脱ぎ、短パンいっちょうで、「入水時には少々の気合と勢いが必要なのだ。後から付いて来い」と、ヨロヨロと走って海に入りました。

海の中から「来いヨー、気持ちイイぜっ!!」と手を振るので、ためらいつつも試したところ冷たい海水の返り討ちにあい、即引き返しガタガタと震えておりました。

「そうやって風にあたるから余計に寒いんだよ、慣れれば海の中の方が暖かいゾ」と ビルは言うし、夕方とはいっても既に19:30を回り、相当日が西に傾いた状況ではサッサと一泳ぎして、早々にここを引き上げた方が得策に思え、意を決し入水しました。

まあ、慣れれば少しはマシではありましたが、回りを見渡したって日中ならまだしもそんな時間に泳いでる人は1人も見当たらず、海岸ではコートを着て犬の散歩をしている人達がニヤニヤしてこちらを見ています。

海から上がって裸足で、短パンからポタポタと海水をしたたらせつつ家路についたのでした。

そんな訳で北海スイミングのデビューを飾りました。


第二は「フォーク・フェスティバル」。

これもビル君の企画で、ケンブリッジで毎年夏開かれる「フォーク・フェスティバル」にビル君の友人達と繰出しました。

これは木曜日~日曜日までの計4日間通して行われる、英国最大のフォークフェスティバルで、毎日昼頃から野外コンサートが始まり、深夜12時頃に終わり、その会期中は近所の大きな空地で4泊キャンプ生活をする、というもの。

これはかなりメジャーなイベントで、英国中ならずもアメリカやヨーロッパ各国から熱心なファンが来てのお祭り騒ぎの4日間です。



そういう人のためのキャンプ場なのですが、僕らはスグに帰れる場所に家がありながら敢えてテント生活を選択し、浮世離れした4日間を過ごしました。

会場には3つのテント・ステージがあり、そこに入れ替わりで色んなバンドが出てきます。

観客は見たいバンドを見れば良くて、あとの時間は会場内でビールを飲み、芝生でゴロゴロして過ごします。

ビル君の友人達と総勢7~10人のグループで、既に以前のビア・フェスティバルなどで知った顔も何人か含まれていました。

ビア・フェスティバルで見かけた・・・、という一抹の不安が的中し、初日は「フォーク・フェスティバル」なんだか「ビア・フェスティバル」なんだか分からない程飲んでしまい、何のバンドを見たのか皆目記憶に無く、その反省から2日目からは朝の内に見たいバンド、ステージなどを決めて、のんべえ達とは別行動を意識してとるようにしました。

事前に出演者リストを見たときは、知っているバンドはただの一つだけ(因みにチャンバワンバで、「果たしてこれはフォークなのかっ??」と疑問)で、「果たしてこれで楽しめるのか!?」と不安では有りましたが、ナンノナンノ実際に見て聞くとこれは良いモンでした。


「フォーク」というだけあって、基本的にはギター、バイオリン、バンジョー、アコーディオンなどの素朴なもので、「アイリッシュ風味」「スコティッシュ風味」「デキシーランド・ジャズ風味」「ゴスペル風味」・・・と色んな風味が混じった素朴な音楽をリラックスして楽しんだのでした。

今回の発見は「The Be Good Tanyas 」(カナダ、バンクーバー出)、「IndigoGirls」(アメリカ、アトランタ出)の2組で、「良い音楽に出会ったっ!!」と大満足して、その場でCDを購入し、以来毎日ズッと聞いています。

特に後者は僕が知らなかっただけで、アメリカなどでは相当メジャーらしく、植物園にいるアメリカ人のベンにその話をしたら、「ナニーッ!!インディゴ・ガールズを生で見たのか!!」と頭を抱えるほど興奮する始末。

この2組、オススメです。

丸4日間、屋台メシを食い、ビールを飲み、音楽に酔い、テントで寝る、そんな「食う、寝る、遊ぶ」の4日間でした。

そして、最近は我が菜園が収穫絶頂期を迎えており、ほぼ毎日ニラを使って健康的に過ごしております。

自分が育てた野菜はやはりウマイもの。毎日食べ続けても飽きません。

ニラは収穫しても後から後から新芽を吹くので、食べても食べても追いつきません。植物園の連中にもお裾分けして好評を頂戴しております。

更に、かぼちゃも収穫期で煮物、かぼちゃポタージュなどを作り、これも秀逸の出来。

煮物などは「煮崩れしないように面取りして・・・」等と主婦的テクニックも駆使し、マズマズなんじゃあないでしょうか。

そんな夏を過ごしています。

が、そんなケンブリッジ生活もいよいよ残り2週間を切りました。

引越しもボチボチ始めました。

この2年間で思いの他、所持品が増えたことは驚きに値します。

冷蔵庫、冷凍庫なども中を見つつ、8月31日の引越しまでに片付けるように計算をしつつ料理しております。

引越し、新居、などに付いては語ることが多く、またの機会にお知らせします。

暑い夏、どうぞ健康第一でお元気でお過ごし下さい。
それではまた。