どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2011年4月29日金曜日

1999年11月15日 「図書館」


こんにちは。

現在11月13日(土)18:00です。
今日は8時半頃にゆっくり起きて洗濯をしたり雑誌を読んだりして、昼から図書館で土壌学の課題であるレポートを書くための素材集めをしていました。

図書館にはインターネット繋ぎ放題のコンピューターが設置してあるのですが、日本語環境がないためか、日本語を読むことも書くこともできません。

今の時代ネットサーフィンで色んな情報をあつめてレポートを書いたりするものなのでしょうが、それも英語サイトに限られるということで寂しいかぎりです。

2011年4月25日月曜日

1999年11月8日 「ミスターサマータイム」


早いものでもう11月。お元気でしょうか。
こちらでは早くもクリスマス商戦たけなわです。

申し上げたように10月23日から31日までの一週間は学校が中休みでした。前半3日間は寮に残って、休み明けにある試験にむけ「激勉」したり、学校のホールのテレビにてラグビーのワールドカップ観戦をしたり、比較的ゆっくり過ごしました。

この期間、寮にいる学生のほとんどが帰省して、それはそれは静かで平和な日々でした。

しかし寮の食堂も一週間閉鎖になってしまい、朝起きてから食べるものに困りました。
朝食は紅茶とビスケット、昼食はカップヌードル(ポットヌードルといってこちら風の独特なお味)、夕食は徒歩20分のパブでようやく人間らしいものをといった3日間でした。
この調子ですとこれからのクリスマス休暇、イースター休暇といった長期休暇のときはどうなっちゃうんでしょうか?
特にクリスマス時期は飲食店はおろかバスも電車も動きませんので餓死、あるいは孤独死しないか不安です。

一週間の休みの後半6日間はケンブリッジ、コッツウオルズの2ヶ所に行ってきました。

そもそも学生時代にホームステイしてお世話になった知人を訪ねたのですが、特にケンブリッジの「お父さん」は昨年の春サラリーマンだったときに旅行して再会したときに「会社を辞めてこっちの園芸学校にいけば?」と僕の人生を変えるアドバイスをしてくれた人です。

コッツウオルズの「お母さん」は10年振りの再会でした。
生憎「お父さん」は5年前に他界されたとのことでしたが、元気している彼女に会えてとても嬉しく思いました。

さて、このイギリスという国は鉄道網はエラく発達していていますが運賃が高いのがタマに傷です。
苦学生の僕はお安いバス旅行を迷わず選択しました。
しかもバスのチケットを学割で買いました。
学割がきく顔に見えないと笑わないで頂きたいものです。
日本で僕が「学割で」と言ったら「誰が?」と聞き返されること必至ですが、この国では正真正銘の学生です。
これにより電車で移動するよりもおおよそ半分くらいのコストで移動が可能です。
素晴らしい!

ケンブリッジにては News Agent (新聞売店)で日本経済新聞を見かけました。
ヨークの片田舎にきて2ヶ月半経ち、インターネットもあまり使えない環境で、ものすごく今の日本が知りたいっ!と矢も楯もたまらず購入するつもりで財布を出したのですが、その値段をみて腰が引けました。

ナント2.80ポンド。日本円で500円以上します。
さんざん悩んだ挙句その日には買う決心がつかず、ケンブリッジ出発の日の朝、清水の舞台から飛び降りる覚悟で日経を買いました。

その新聞のありがたさにページをめくる手が震える始末。
久し振りの日本語活字の新聞です。
とてももったいなくて一気には読めず、チョロッチョロッと読んでは「ホホーッ」「ムムムッ」「ナールホド」と3日間ほど掛けてすみずみまで読んで楽しみました。

日本で導入するか否か随分話題になった「サマータイム」も10月31日の午前12時をもって終りました。
時計の針を1時間戻したわけで、この日はいつもより1時間ゆっくり寝れます。
最近随分日が短くなったなぁと思っていたら、これにより更に拍車がかかり夕方5時前には暗くなってしまいます。

こちらではサマータイム廃止論もでているようで、仮に日本でサマータイムを採用したとしてその頃にはこちらでは廃止ということもあるかもしれませんね。

自分のパソコンの電源を入れると「サマータイムが終了し時間調整しますがよろしいですか?」というメッセージが画面上に現れ、「おおーっ、なんて賢いヤツ、お前って!」と思わずパソコンを抱きしめたい衝動に駆られました。

ケンブリッジの家に日本人の女性がホームステイしていたので久し振りに日本語で色々と話をしました。
ここで驚いたのは日本語が下手になっていたことです。ここで強調しておきたいのはあくまでも日本語が下手になっているということであって、決して英語が上手くなっているということではないということです。
なぜかとても舌足らずな不思議な感覚。山瀬まみみたいな感じです。
普段ヨークの学校には日本人はいませんので、話すのも聞くのも全て英語です。
使わないと語学は錆びるとどこかで聞きましたが、本当のようです。

でも、思考は日本語で、こうやってメールも日本語ですし、「勘定が合わないっ!!」といった銀行員時代によくみたイヤな夢もいまだにチャンと日本語で見ています。

近況としてはそんなところでしょうか。

すっかり冬らしくなり冷え込みが厳しくなってきました。
その寒さのなかポロシャツ一枚で平気な顔をして歩いている人が結構いて、鈍いのかタフなのか首をかしげてしまいます。
「そのお腹はだしちゃマズイんじゃぁないでしょうか」というボンレスハムのようなお腹のお姉さんたちも寒さに負けずにヘソ出しファッション全開で頑張っています。

日経で読みましたが、プロ野球も閉幕したそうで、今年も残り僅かになりましたが寒さに負けずにお元気にお過ごしください。

2011年4月22日金曜日

1999年10月29日 「中休み」


今週は学校が half term といって中休みのため、前半3日間は寮に残り勉強、研究に充当し、後半6日間はケンブリッジ、コッツウオルズに出掛けることにしました。いずれの街も学生時代にホームステイしていた家族がいるのです。

現在はケンブリッジに滞在しています。日中は植物園に行って終日ノンビリしたり、本屋であれこれと物色したりして過ごしました。

今日はこれからバスでコッツウオルズに向かいます。詳細はまた後日ということで、まずは元気に旅をしておりますことを報告します。

2011年4月19日火曜日

1999年10月17日 「秋の夜長に」

こんばんは。

現在金曜日21:00、一週間を終え一息ついているところです。

先週、先々週と週末は2週連続でラグビーのワールドカップ観戦に片道6時間ほどのウエールズまで行ってきました。チケット代、交通費、宿泊費と随分な出費でしたが、開催国に住んでいながらナマで見ないテはないとムリムリ行ってきた次第です。


日本代表チームの結果は残念でしたがナマの迫力、雰囲気を存分に堪能しました。特に先週のウエールズ戦では、スタジアムに向かう電車のなかはほぼ90%ウエールズの赤いジャージを着たサポーターで埋まる「ラグビー列車」で見たところ車内で唯一の日本人である僕は皆の好奇な視線にいたたまれなくなりタヌキ寝入りをしてその場を凌ぎました。

ラグビーは観戦にとどまらず、学校のクラブに所属し月曜と水曜の週二回ナイターのもと練習しています。チームメイトは20代前半のイキのいい奴らが大半で30を超えたオッサンは僕一人ですが、植木屋で鍛えた基礎体力をいかして若いモンには負けません。先週の火曜日の夜の練習試合でおでこを蹴られてものすごいコブができて、またしてもイビツ頭に拍車がかかってしまいました。さらに次の朝鏡を見てみると目の周りが内出血して四谷怪談のような風体で学校でも皆が振り返る目立った存在でした。

今は金曜日の夜ですと書きましたが、ようやく訪れた平和にホッとしています。というのは学校そのものは年配の生徒もいるのですが、寮にいるのは10代、20代の若者がほとんどで夜中に酔っ払ったヤツらが叫んだり、廊下を走り回ったりと大変なのです。そんな彼らも金曜の夜から日曜日にかけて帰省するため寮はひっそりと静かなのです。

授業も本格化してきまして、当初は何のことやらということが多かったのですが、最近は手探りながらもナルホドと理解度があがってきました。科目としては「芝から雑草までの草全般」「挿し木、接ぎ木、植物の繁殖」「土壌」「病害虫」「生物学」「樹木、森林管理」「エンジニアリング」「ランドスケープ」「野菜・果実」「ガーデンデザイン」などなのですが、「こりゃあまり関係がないな」と思われるものもあります。

エンジニアリングなんてその最たるものでチェーンソー、トラクターといった機械を使うことがあるためか、2サイクルエンジンとは、4サイクルエンジンとはなどと言いながら「つなぎ」と「安全靴」といった工業高校的いでたちで授業をやっているんですから、どこが園芸?って感じです。


授業の科目のひとつに「Plant ID」というものがあります。ID はidentification ということで、日本語でいうと植物同定試験となるでしょうか。これは毎週20の植物の課題を与えられ、試験のときには机の上にならべられた番号をふられた植物の名前を解答用紙に書いていくというものです。ここでいう植物名は学名、すなわちラテン語で「属」「種」「品種」についてスペルも含めて正確に答えねばなりません。植物の特性を判断するのはモチロンですが、記憶力がポイントで脳みそが硬くなりつつある自分には毎週ツライです。人間の記憶容量に限界があると仮にしたら、もっと他に覚える英単語とかありそうですが。

周りが静かなためでしょうか、筆がのってきました・・・。


こちらの生活にも慣れてきましたが、少々飽きてきたのは食べ物でしょうか。毎日イモばかりで、しかも脂っこいものが多いので日本食が恋しくもあります。でも、日本でフィッシュアンドチップスを食べたときに2,000円近く払ったのに味が似て非なるものであったことを思い出すと、いまの内に本格的イギリス料理を食べておくべきだなと思っています。

こちらの人は日本人と基本が違うと思うこともあります。例えば寮の食堂で朝食に僕は目玉焼き、ソーセージ、ベイクドビーンズ、牛乳、トースト、紅茶といったものをチョイスするわけですが、その隣で10代の太ったクラスメートはコーラとポテトチップスを食べています。彼が特殊な人間で例外なのではなく、結構そういう輩が多いのにはタマゲます。

朝食8時、昼食12時、夕食17時となっており、特に夕食はさしてお腹も減っていないのに、「これを逃すと翌朝までなにも食べるものがない」と思うとついつい食べてしまいます。学校のまわりにはコンビにはおろか「店」というものは一切無く、この村の唯一の商業施設であるパブまで街灯のない牛がモーッという脇を15分歩いてようやくたどりつくといった辺鄙さなので、まさに夕食は何かを口にするラストチャンスなのです。この食堂での食事はバランスも悪く、間違いなく肥満をよぶものですので今度会ったときに別人のごとく丸くなっているかもしれません。

毎日欠かさず図書館で復習、テスト勉強をし、クラブ活動で汗を流し、繁華街にも滅多に繰り出さず、テレビも見ないと品行方正な清く正しく美しい生活を実践しております。この一年の留学を終えて何をするのかといった問題も未解決ですので、その辺も日々思案しておりますが、まだこれといった考えも浮かばず不安です。

筆がのってきたのをいいことに随分長くなりました。今日はこのへんで。

日本は今が一番良い季節ではないでしょうか。どうぞお元気で。

2011年4月18日月曜日

1999年9月18日 「英国到着デス」

御無沙汰しております。
さて本日9月12日ようやくこれから一年間の滞在先であるヨークに到着しました。日本を離れたのが8月20日でしたのでほぼ3週間の道草をしました。シンガポールでの日々、いとこの結婚式、プーケット小旅行、ロンドンでの友人宅滞在などすべてが有意義で時間を気にせずにゆっくりのんびり過ごせたことは良かったです。また、この数週間の間に新たな出会いがあり、改めて自分は多くの人に支えられていることを実感しました。

このメールもなんとか送信できていますが、環境が変わり要領がつかめるまではこれまでのようにマメマメしく連絡できないかもしれません。書きためて送れるときにまとめて送ろうかと思っています。


今、学校の中にある寮の自分の部屋にいます。部屋は本当にさびしいもので4畳半にベッドと作りつけの机がある程度でなーんにもありません。南側に小さな窓がついていて森の向こうにある国道から車の音がかすかに聞こえる程度でまわりには何もありません。正直なところ少々寂しいです。

シンガポールでもロンドンでも友人・知人の家に居候させてもらっていたときにはそれなりに設備も充実していて都会暮らしの快適さを享受させてもらっていましたが、こうやって薄暗い狭い部屋に一人でいるとそのギャップを感じずにはいられません。

風呂なんて当然なくて共同シャワー、共同トイレです。本来の入寮は明日からのためとても静かです。食事もついに英国式となりました。今晩はビーフ、グリーンピース、ポテト、ニンジン、ヨークシャープディングがひとつの大きな皿にのってその上からグレービーソースがかかっていました。これはこれで僕は好きなのですが昨晩お世話になった銀行員時代の友人宅で御馳走になったおにぎりの味をフト思い出し、ボクってやっぱり日本人なのね、と再認識しました。

9月13日
今日はヨーク市内に買出しに行きました。洗濯干し、洗剤、石鹸、読書灯など両手いっぱい買い込みました。仕上げに床屋に行ったのですが、出てきたのがエラくごっついお兄さんでした。太い指を器用に動かしチョキチョキやってくれるのですが、僕の頭は扱いが難しいので心配しましたが何とかなったみたいです。

9月14日
今日から学校が始まりました。午前中は入学式みないなことと、クラスに別れて担任によるチュートリアル、午後は外で各種道具の扱い方の説明がありました。日本の植木屋道具とまったく違って、国が違うとこんなに違うのかとちょっとびっくりです。
言葉は慣れるまで時間が掛かりそうです。クラスではイギリス人がほとんどで留学生は僕ひとりでした。年齢はまちまちで、寮では自分は随分年上という印象でしたがクラスでは真ん中くらいでしょうか。転職してこのコースにきたという人が結構いました。ただし類似業種からの転身が多く、金融業からという人はいませんでした。

そんな滑り出しです。とにかく1日1日を大切にして楽しんでやろうと思っています。寮には電話線がないため、先生に頼んで事務所の電話ジャックを使わせてもらっています。頻度は落ちそうですがこれまで連絡はできそうですので今後ともよろしくお願いします。