どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2014年7月23日水曜日

2006年11月10日 「きんと雲2号」



唐突ですが「きんと雲2号」を入手しました。

どうも、「オマエの話は作ってんじゃあないの?」と突っ込まれそうな、小説よりも奇なるホントのお話。

先週ボクは大枚はたいて購入した自転車で颯爽ときんと雲さながらのスムーズなサイクリングを楽しんでおりました。

ところが買ってからたった4日目に、こいでる最中に突然ペダルが異常に重くなったのです。

こりゃ何かペダルか車輪に絡まったかっ?と丹念に見てみるも何も発見できず、原因不明のまま重いペダルをこぎ続けたのでした。

キューという植物園は約300エーカーという広大な敷地を有し、園内の移動は職員に限って自転車が認めらています。(許可制)

例えば温室前の花壇で作業をしたとして、「じゃ、これから一時間の昼休み。またね。」といって、それからトボトボ歩いて戻っていたのでは歩いて往復して昼休みが終わりかねません。

そんな訳で自転車は必需品。

その重いペダルを「クソーっ」と懸命にこいで移動しているだけで、心臓にかなり付加が掛かり大汗をかき、たいそうな運動になりました。

これじゃ「きんと雲」どころか「鉄ゲタ君」です。

週末こそはなんとかせねばと爪を研ぎつつ迎えた今日、日曜日にまたしても車を片道40分も走らせ、自転車屋に行ったのでした。

「やあ、先週自転車を買ったんだけど、どうも調子が悪いので見て欲しいんだ。このペダルの重たさ、異常でしょ?」

「お預かりして調べます。一時間ほど経ったらまた戻ってきてください」
ということで、近所のパブで昼食を済ませて、戻ってみると、おニイさんが意気揚揚と
「シャフトの調子が悪かったようなんで、部品を交換して直しておきました」
と言うので、
「フムフム」
と頷きつつヨクヨク見てみると、元のものとは似ても似つかないペダルとギアが着いています。

「あのサ、直してもらったのは有り難いんだけどサ、これって元のとぜーんぜん違うじゃんサ」

「生憎、同じモノは無いもんですから。でもコレ元のよりも良いヤツですよ」

「あのサ、元のより良いか悪いかどうやってボクが分かるのサ。そもそもボクはね、安物買いの銭失い的な自転車に懲りて、遥々車を40分も飛ばして来ている訳よ。これじゃ、ここで、これを買う意味が無いじゃあない?あのサ、たった4日、買ってたった4日目にこんなことになるってのは、不良品を売ってるってことじゃない?部品交換でお茶を濁すんじゃなくて新しい自転車に替えるのが普通じゃあない?」

「生憎このフレームサイズ(L)は切らしていまして」

「またぁ、そこにあるじゃぁないLがサ」

「アラ、これは気付かなかった。でも新車に替えるのはオーナーに相談してからじゃあないと。替えるとしても今日はムリで、後日となると思いますよ」

アラ、気づかなかったじゃないよ、とムッとしつつも、
「相談でもなんでもしてよ。ついでに、後日取りに来るんだったら、車のガソリン代も出してもらいたいとオーナーに伝えてね」

なーんてやり取りがあって、結果新車に今日替えることに。

しかし、話はここで終わらないのでした。

新車のクセに横に割と大きな引っかきキズがあるのを発見し、普段なら「カタチあるものはいずれは壊れるもの」と割り切るのですが、今日はどうも割り切れない気分で、キズを指摘すると、

「お客さん、私は出来る最大限のことをしているのです。これ以上となると、お代をお返しして、この話は無かったことにさせてもらいます」

「結構。返してもらったお金で納得した自転車を買うから、お金、返してちょうだい」

現金を取りにレジに引き返したと思った担当者はまたオーナーにボソボソと電話で相談したようで、暫くしてボクのところに来て、

「このグレードの2つ上の自転車で手をうちませんか?」ですと。

それは同じくGIANTのアルミフレームのなかなかいいヤツで、コレまでのものより50ポンドほど割高のものでした。

「これってラッキーなんじゃぁない?」と思わずニヤけそうになるのを抑え、作ったしかめっ面で「ウーム、仕方が無い、それでいいや。でもまた調子悪いのはカンベンしてよ」・・・・

そんなこんなで、ボクはさらに滑らかなる「きんと雲2号」のオーナーになりました。

こうやって書いてみるとなんてことはないようですが、この類の交渉事を英語でするというのは、身も心も消耗します。

まずは、自分の主張を通すこと、理屈を通すこと、ナメられないこと、かといって激高しないこと、など注意を払い、身振り手振り、そして表情をつけて言葉の足りない部分を補います。

そうやって勝ち取った2グレード上の自転車は価値があると思われます。

盗難が多いので盗られないよう注意しつつ、これでロンドンを疾走する決意でございます。

では、また。

2014年7月17日木曜日

2006年11月03日 「キント雲」



買いました。自転車。

もうかれこれ3台目。

一台目はヨークにいたときに、クラスメートから貰ったポンコツ自転車。

しかし、これはケンブリッジでペダルがもげて修理代が、安い新車のそれを上回った為に100ポンドの新車を購入しました。

安物買いのゼニ失い、なのでしょうか。

その新車も3年経ったところで、先週またしてもペダルがもげてしまい、自転車屋に持ち込んで修理の見積もりをしてもらったところ、「100ポンド」と言われ、今度はちょっと予算を上乗せしてでも信頼の置けるモノを、ということでGIANTという、定価185ポンドのいわゆるブランド自転車を、安売りしている店を探しに探して150ポンドで入手しました。

大満足。

基本的にお金に余裕の無い、貧乏暮らしをしているのでこの150ポンドの自転車はスーパー・リッチな気分に浸らせてくれます。

しかも乗り心地、とてもスムース。

たかも孫悟空の乗っている雲(キント雲)のような滑らかさです。ホント。

この自転車購入に弾みをつけたのが、「バイト」でした。

ヨークにいた際、隣村のおばあさんの庭の手入れをして少々お小遣いを稼いだことがありました。

これは時給7ポンド。

しかも過少払い気味で、お金目的というよりは、おばあさんの飼っている犬と遊ぶためといった感じでした。

そして、ここキューはやはり相場が違います。

クラスメートの女の子が、「土曜日暇だったら手伝ってくれない?」というので引き受けたのは、キューの高級住宅街の邸宅の庭。

約300坪位でしょうか。



ヨークのおばあさんの庭はせいぜい30坪でしたので、スケールが違います。

ボクはあくまでも手伝いですので、彼女のアシスタントに徹しました。

この家は年に2日間だけ、チャリーティーのために自分の庭を一般に公開します。

ボクのクラスメートの仕事はその日に向け、今から手入れと準備を進めるというもの。

土曜日の朝9時から昼の1時までの4時間、寒いながらも天気が良い中で気分よく仕事をした結果、貰ったお金がナント53ポンド!!!!

ザッとヨークの時給の倍。

日本円ですと時給約2500円ですよ!

ご苦労様、と差し出された紅茶をすすりながら、「ウーン、こんなに貰って良いのかなぁ・・・」とフクザツな気分でいるとクラスメートの女の子は「来週も手伝ってくれる?」と言うので「ハイッ、ハイッ!是非是非」と思わず手を挙げて二つ返事で請け負ったのでした。

なんでも、この家主はキューディプロマの学生を好んで使っているそうで、彼らにとっては金は全く問題ではなく、自分の庭が公開されるその日までにいかに良いモノに仕上げるかが一番の関心事とのこと。

それだけに責任も重い気もしますが、ナンノ、ボクはクラスメートの助手に過ぎませんので気楽なモンです。

53ポンド現金払いですので税金も掛からず、久し振りに懐がイッキに暖まった気がして、「ヨーシ、自転車買ったるゾ!!」と気分も大きく繰り出したという訳。

ヨークで10ポンドを貰って、喜んでパブに繰り出し、ほぼ全額飲んでしまったことを思い出すとスケールの違いはあれども、あまり成長していないなぁ、と少々反省もしますが、でも自転車がないと生活できない環境ですので、まあバチはあたるまい、と。

そんなブラン・ニュー・バイシクルのお話でした。