どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2011年10月30日日曜日

2000年10月30日 「サマータイムさようなら」


昨年もサマータイム終了時にメールを書いた気がするのですが、早いものでもう一年経つのですね。

昨年の今頃は学校の1週間の中休みで、ケンブリッジの友人を訪ねたついでにこの植物園を見学したのですが、まさかその一年後にその植物園で研修生になろうとは想像だにしていませんでした。
人生の不思議を感じてしまいます。

そんなわけで本日未明にサマータイムが終了しました。
サマータイムという制度が日本にはないため、昨年は随分戸惑いましたが今年は少し慣れてきて落ち着いていつもより1時間ゆっくり眠りました。

とはいってもそれを見越して1時間夜更かしをしてしまったので差し引きトントンですが。

最近は日の出7:45、日の入17:40とかなり日が短くなってきました。

この調子で冬至にむけて日が短くなると、子供たちが朝登校するときには辺りはまだ暗いという状況になり安全上問題があるとのことでサマータイムで調整すると聞いたことがあります。

そんなわけで日本との時差がこれまでの8時間から9時間になります。

がぜん冬の様相を呈してきて、暗く、寒い鬱陶しい季節となります。



植物園内の紅葉も日に日に彩りを増して、外で一日を過ごす醍醐味を味わっています。

本日は日曜日でしたが植物園では「アップルデー」という恒例のイベントがあってその手伝をしていました。

リンゴにちなんだ料理、ジュース、お酒の紹介、関連書籍の販売、リンゴ試食、リンゴの分類などリンゴづくしです。

イギリス人にとってリンゴはとても身近な果物のようで、いろんな場面でリンゴにかじりついているイギリス人を見かけます。

お弁当にもリンゴを持ってきたり、ポケットにも忍ばせているようです。
これはイギリスのリンゴがテニスボールもしくはそれ以下のサイズなのでなせる業で、日本のリンゴのように大きなリンゴはあまりお目にかかりません。

この悪天候にもかかわらず、かなりの人出があったというのも彼らのリンゴに対する愛情が偲ばれます。
僕は本の販売を手伝ったり、リンゴの袋詰めをしたりしていました。

昨日ケンブリッジにきて以来、初めて映画を見に行きました。

Billy Elliotという映画ですが、これはなかなか面白かったです。

イングランド北部の炭鉱町が舞台で映画全編でイングランド北部訛りの英語が話されていました。
ヨークもこれに近い訛りがあるのですが、典型的なアメリカハリウッド映画と比べると英語と米語ってこんなに違うのか、と分かることうけあいです。

この映画は全英映画ランキングではここしばらくトップを走っていますし、実際面白かったです。

映画に出てくる景色も典型的イングランド北部の労働者の住む街並みで、「イギリスってお庭がキレイなんでしょ」という方にはイングランドの一面を見る良い機会かもしれません。

いよいよ10月も終了。

どうぞお元気で。



2011年10月24日月曜日

2000年10月25日 「最近」



気付いてみれば10月も後半に突入して秋たけなわです。
お元気でお過ごしでしょうか。

僕もケンブリッジ生活に慣れてそれなりのリズムができてきました。

朝が早く、身体も使うので早めの就寝を心がけてとても規則正しい生活です。

料理も相変わらず楽しくて仕方ないのですが、冷静に考えるとちょっと食に時間をかけ過ぎているような気がして「学生らしい時間配分とその有効活用」という見地からちょっと改善しなければと思っています。

10月から習い事を始めました。
ケンブリッジはやはりアカデミックな街なのでしょう。
大学の夜間講座がかなり充実していて、僕はその中から「ボタニカル・イラストレーション」という、植物を写実的に細かく正確に描くという全20回のコースを受講することにしました。
毎週火曜日19:15-21:15です。

ここでちょっとカチンときてしまうのは、自分ではなかなか上手く描けているじゃないのと思っていても講師が回ってきて「大丈夫、気にしなくていいのよ。20週ちゃんと受講すれば必ず上達するから・・・」と慰められてしまうことです。

べつに慰められるような絵は描いていないと思うのに、ちょっと腹立たしいです。

今週末にはサマータイムが終了して再び寒くて暗い冬がやってきます。

2011年10月17日月曜日

2000年10月18日 「ハチとモンゴル人」



唐突な題名ですが雑談をふたつ。

最近は毎日セクションのリーダーから「今日の植物」と称して植物を分類してその名前を覚えるというトレーニングをしています。
というか、やらされています。

彼は本当に博識で僕の知識の無さを嘆いて、というか心配してくれて愛情をもってこういったトレーニングを課してくれているわけです。

昨日は大きな針葉樹の絡みついた植物をさして「明日までに分類して正確な名前を学名で答えろ」と言われて、その植物を切って持ち帰り調べようとしました。

剪定ハサミで切れば問題なかったのですが、ちょうどハサミをロッカーに置いてきてしまったので持ち合わせず、手でちぎろうとムンズとその植物を掴んで引っぱりました。

するとモノスゴイ激痛が左中指に走りました。

大きなトゲが刺さったのかと思って慌てて握った葉を放して指を見てみると大きなハチがまだ指にとまっていました。

トゲではなくハチに刺されたのです。

一人でのたうち回っているとリーダーである彼が「そりゃハチじゃない、WASPだ。ハッハッハッ。じゃぁまた明日ね。」と自転車で家に帰りがけに声をかけていきました。

WASPってスズメバチってこと?!園芸の道がまだ浅いひよっこの僕はこれまでケムシには刺されたことはあってもハチはまだ経験したことがありませんでした。

トゲに刺されたような、指を切ったような、火傷をしたような刺激的な痛みがジンジンと続きます。
指の毒を吸いだしつつ、恨めしげにその植物をよく見るとおびただしい数のハチがブンブンたかっています。

気付かなかったとはいえ、よくもこんなものを掴んだものだと我ながら感心してしまいました。
リーダーは「失敗から学ぶのダッ」と言って去っていったのですが、これは失敗じゃぁないよなと指を吸いつつ心の中で彼に反論していました。


そして次はモンゴル人のお話。

なにかと申しますと植物園に出入りしているボランティアのおばさんと話をしていたら「アナタはどこから来たの?」と聞くので「東京ですよ」と言うと「あなたはモンゴル人?」とトンチンカンなことを言います。

「東京って言ってんでしょっ!」
と思いつつもやんわりと
「いいえ、日本人ですよ。」
とスマイルで返すと
「アナタは日本人には見えないわ。私はちょっと興味があっていろんな国の人の特徴を研究しているんだけど、アナタはもっと北の大陸の人よ。同じ東洋人でも地域によって人は違うものなの。アナタは背の高さや体格、頭のカタチ(?!)が日本人じゃぁないわ。モンゴル人よ。」
と人の気にしていることも省みずズケズケと言いたい放題です。

「モンゴル人ですかぁ。言われたことないんスけどねぇ、これまで。」
と言うと、
「アラッ、褒めたのよ。」
ですって。

実は自分って大陸っぽいかもって少しだけ思ったことはあったので、まさかそんなことを初対面のおばさんに言われるなんてちょっとドキッとした次第です。

2011年10月13日木曜日

2000年10月16日 「修了式」


14日は植物園を休んで日帰りでヨークに出掛けていました。
なんでこんな時期に?というほどタイミングがずれていますが、修了式があったのです。

一ヵ月半振りに訪れたヨークは、やはり良いところでした。

人の多さもほどほどで、なぜかしらホッとします。
ヨークの駅から学校まではいつものようにバスに乗って行ったのですが、街を離れるほどに見慣れた田園風景が目の前に広がっていきます。

「良いねぇ。とっても良い。」と胸のなかでつぶやきながら景色に胸を躍らせていました。

時間には余裕をもってヨークに着いていたため、雑事をいくつかこなしたあとにどうしてもヨークでしておきたいことを。

そうです、なんとしてもここヨークで好物のフィッシュアンドチップスを食べておきたかったのです。
ケンブリッジでも何回か試しましたが揚げたてではなかったりと、どれもこれも期待はずれでしたのでなにはなくともフィッシュアンドチップスと決めていました。

魚にコロモをつけて揚げるという至極簡単なことが、同じ英国内でかくも味がことなるのだというのは本当に不思議です。

塩、ヴィネガーをいつもより多めに振って小雨の中をハフハフかじりつきながら歩きました。

学校の講堂の前にはすでに何人かの友人達が集まっていて、近況を報告しあってキャンパスを歩いてまわりました。

自分の丹精込めた畑はすでに今年の生徒に引き継がれ、昨年自分がしたように全てが取り除かれて肥料を鋤き込みつつ耕されている最中でした。

式は14:30から始まり、校長の長い祝辞のあとにひとりひとり修了証を貰います。

その後に賞の授与があり、僕は「ベスト・花畑」ということで賞状、トロフィー、図書券を頂戴しました。

これは本当に嬉しかったです。

カップは甲子園の優勝旗のように一年後に学校に返還しなければなりませんが「1999-2000 MASAYA TATEBAYASHI」とシッカリ刻まれています。
誕生日に約2リットルのビールをイッキ飲みして楯に名前を刻まれたことがあるのですが、それとは重みが違います。
英国に名前を残したような気になりました。

式のあとは英国らしく講堂で紅茶とビスケットが振舞われて世話になった先生やスタッフと談笑してアッという間に時間が過ぎたのでした。

式のあと寮で隣の部屋同士でクラスも同じだったロブ君とパブに行き、お互いの健闘を称えて帰りの電車までの90分間ハイペースで祝杯をあげました。


電車の時間の30分前にパブを出て向かったのはまたしてもフィッシュアンドチップス屋でした。
これまでに1日に2回食べたことはありませんでしたが、当分これが食べられないのだなと思って迷わず注文しました。
駅に向かい歩きながらハフハフと食べたのですが、正直食傷気味ではありましたがそれでも美味しく完食して電車に乗り込んだのでした。


そんな、ヨークってやっぱり良いところと実感できる一日でした。

2011年10月3日月曜日

2000年10月08日 「寝袋」



昨日は珍しく一日中雨が降って気温も上がらず寒い土曜日でした。
そんな中「ケンブリッジに行く用事があるので会わないか?」といってヨークの友人2人が訪ねてきたので、一緒に昼食をとって楽しいひとときを過ごしました。

午前中は食糧の買出しに出かけたついでにアウトドアショップで寝袋を買いました。

流行りのマミー型ではなく封筒型のもので、

1.ジッパーを全開にすると掛け布団になる
2.もうひとつの寝袋のジッパーとジョイントすれば二人くっついて寝られる
3.来客があった場合、泊めてあげられる
4.あちこち安上がりに旅行できる
5.レンタカーで旅行しても車の中で寝ようと思えば寝られる
6.部屋が寒い場合、とりあえず暖がとれる

など、それはそれはメリット満載の一品です。
ふたつの寝袋をジョイントして誰と一緒に寝るのかなんてことは気にしないように。

僕の部屋のベッドは備品として既にあったもので、マットレスはかなりへたっていました。

いまだに腰の具合がおもわしくなくて眠れないこともまれにあって、昨晩試しに部屋の床に寝袋に包まって寝てみたところ、ことのほかグッスリ眠ることができました。
床の固さが程よかったみたいです。

家賃には水道代が含まれているのですが、電気代、電話代は別になっています。

英国では普通に見掛けるセントラルヒーティングもこのボロアパートには導入されておらず、電気をつかうラジエーターで暖をとることになっています。

しかしながら僕のカラダに脈々と流れる節約魂と申しましょうか、ケチ根性がこのラジエーターのスイッチをオンにさせないのです。

特に部屋の隅に電気メーターがあり、この目盛が動くたびにヒヤヒヤしてしまい、精神的にラジエーターは最後の手段と思っているフシがあります。

ラジエーターは家電のなかでも特に消費電力が多そうで、冬本番までは辛抱してしまいそうです。

ちなみに近所のパブの暖炉には既に火が入っていて、世間は既にその寒さであると知れます。

こういった事情もあって、この寝袋はまこともって有難いアイティムなのであります。

寝袋にも色んな種類があり、ダウンなどの高級素材が入った3シーズン、4シーズン用などは結構なお値段ですが、僕の寝袋はポリエステルの心細い薄さのものです。

お値段もとにかくお安くて3000円です。
この値段でこれだけのメリットと使い出があれば充分で、昨日は「ウーン、良い買物をしたなぁ。」と一人悦に入っていました。

街の木々は既に紅葉しはじめて落ち葉が道を覆う季節となってきました。

どうぞお元気で。