どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2014年9月3日水曜日

2003年12月21日 「サクラ散る・・・」


英国では「HEALTH&SAFETY REGULATION」という規則があり、いわば安全衛生に関してかなりうるさくなっています。

園芸上は避けて通れない雑草駆除、病害虫駆除などの薬剤散布に関しても試験を受けて資格を持たなくては作業は出来ないことになっていて、この度、費用全て植物園持ちでこの資格の試験を受けました。

見よ、この真剣なまなざし



3日間の講義と実技を経て、半日掛かりで一人づつ試験を受けます。

よって試験は一日二人。

僕は3日目の午後。

それより前に受けた5人はことごとく合格し、準備も万端だった僕は自信満々で試験に臨みました。

試験とはいっても言わば運転免許のようなもので、常識的でさえあればマア問題なく受かるハズ。

前半は試験官が矢継ぎ早に理論についてアレコレと質問してきて、それをなんとかクリアし、今度は実際に長靴、専用のつなぎ、手袋をして擬似薬剤(水)の入ったタンクを背負って芝に薬剤を散布します。

これは与えられた場所の面積から、散布する薬剤の濃度、分量を正確に計算し、散布終了時にはタンクが「ほぼ」カラになってなくてはなりません。

芝には4本の細い竹が刺さって、散布するエリアを示しています。
例えば幅9メートルのエリアであれば1.5メートルの幅で散布しながら3往復すれば良いという訳。

問題は、散布し損ねた部分があったり、逆に2重散布する部分があってはならず、これを成し遂げるために1.5メートル間隔で竹の棒を目印に地面に刺していきます。

さて、実際にそのエリアに行ってみると・・・。

現在英国の日照時間は非常に短くなっており日没は16時前。
しかもあろうことか、当日は厚い霧が発生して目を凝らしても、25メートル先にある竹なんぞハッキリ見えやしないのです。

それでも我が良好なる視力(裸眼両目1.5)を信じ、霧の中をシューシューと薬剤散布の真似事をしつつ、突き進んだのでした。
おごれるもの久しからず。

最後の竹の棒を通過し、背中のタンクがほぼカラになり、勝利を確信した僕は得意満面で「終了しましたッ!!」と試験官に告げると、「ウーン、悪いが試験は不合格だよ」ですと。

「えっ?何でですか??」と尋ねると、竹の棒を一本見過ごして、一箇所に二重散布、その分一箇所には未散布という一番やってはいけないパターンをやらかしたとのこと。

がーーーーーーん。

「え、あの、その、霧でですね・・・。あの、そのもう一回やらせもらえませんでしょうか?是非、是非」

「良いけど同じ日の再受験は出来ないことになっているのだ」

ということで、ガックリし試験官と教室に戻り、事務的な書類のやり取りを済ませ、「理論合格。実技不合格。」という大して有難くもない書類を貰い家路に着いたのでした。

その晩はクラスメート全員が集まりクリスマス夕食会となっており、「不合格だった」と告げると「それウソでしょ、冗談でしょ」と取り合ってくれません。

でもホントに落ちたとようやく伝わったようで、笑う者、真剣に慰めてくれる者、など様々でしたが、僕としては笑ってもらったほうが有難かったかな。

3日間の講義期間中に教官が「この竹の棒を見誤って不合格になる人が毎年います」なんてのを聞いて「アホよのー。そんな大事なもん見誤るなっつーの」なーんてうそぶいていたのに。

そうです、そうなんです僕がそのアホなんですぅ。

日本で植木屋で修行をしていた頃。

この薬剤散布の手伝いをさせられたことがありますが、これはホントいい加減だったです。

今思えば。

僕がタンクを背負って親方がホースを持って梅の木などについたアブラムシなどに散布するのですが、風向き次第で目に入り「染みるなー」等と思っていたのですが、これは英国ではありえません。

着ていた紺色のティーシャツの薬剤が染みた部分だけ色が抜けていたりしましたから、かなり危ない橋を渡っていたのでしょう。

親方も、「時々気分が悪くなるんだよー」なんて言っていましたが、コレはいけません。

くだんの試験は再試験を翌週に受けて(快晴、霧なしの日)、合格しましたことを付け加えておきます。
では、また。

0 件のコメント:

コメントを投稿