どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2012年5月20日日曜日

2001年08月13日 「キューのことなど」




残暑お見舞い申し上げます。


先週キューガーデンにての交換研修に行ってきました。


英国最高峰の王立植物園とは、かくも地方のちっぽけな植物園と違うのかとオドロキの連続でした。


初日の午前中にゲスト扱いをしてくれて担当者が植物園内を案内してくれましたが、とても午前中で全てまわれる規模ではないのでかなり端折ってまわりました。


主な温室だけでも3つあり、そのコレクションたるや開いた口が塞がらないというか、塞がった口が開かないという位にスゴイものでした。


この植物園には地上で花を咲かせる植物種の10分の1以上が集められているって、そんなに欲張っちゃぁイカンでしょう、という気になります。


その広さは300エーカー(=121万㎡=37万坪)だそうで、我がケンブリッジ大学植物園は40エーカーですのでその広大さがしれます。
まぁこの場合ヘンな単位は置いておいて、ウチが40でアッチが300だってことで充分です。


交換研修中は温室の中の養苗セクションでベゴニアの部屋を任されましたが、15×25メートルほどの部屋一杯にベゴニアがあり、掃除をして水を遣って摘み芽をするだけで午前中一杯かかるほどのスケールです。


それぞれ異なるベゴニアで中には希少な種類もあり、よくぞこんなに集めたなっと腹が立つくらい沢山あり、ややウンザリしてしまいました。


午後は日替わりでサボテン、多肉植物、食虫植物などの世話をしたのですが、これは面白かったです。


特にサボテンはとても個性的で可愛気があって「もっと知りたい!」という欲望が沸いてきました。


サボテンの責任者が「これ良かったら持って帰っていいよ。どうせ処分するやつだから。ナイショだからコッソリ目立たないように持っていってね。」と、可愛いサボテンを2つ貰ってきました。
食虫植物とはウツボカズラ、ハエトリソウ、モウセンゴケなど昔小学生のころ興奮して図鑑をみていたもの達です。


これだけの数を世話するということはスタッフの数も相当なものだと思われます。


ケンブリッジは20人前後ですが、恐らくキューでは100~150位はいるのではないでしょうか。
園内ですれ違って挨拶をしたとしても、「ハテ誰かしらん」ということは往々にしてありそうです。


色々と教えてくれるスタッフに「キューの良いところ」「キューの悪いところ」を聞いてみると、良いところはやはり「最高の設備、品揃え」「スタッフ全員のレベルが高い」悪いところは「官僚的」「保守的」「融通がきかない」といったところでした。
しかし、一度キューで働いたとなるとその後はヘッドハントがあったり、転職の際に有利になるといったメリットもあるようでした。


宿泊は植物園裏に隣接するコテッジに泊まりました。


若手スタッフ計8人が住んでいるのですが、夜にコテッジのラウンジで情報交換をしたりしてなかなか良いものです。


そのコテッジは表通りに面しているのですが、さすがにロンドンだけあって交通量はかなりなもので寝る段になって車の音がうるさくて参りました。
数日間珍しく暑い日があって窓を開けないと寝苦しかったのですが、窓を開ければうるさく、閉めれば暑く、とやや寝不足になりました。


キューはヒースロー空港から近いこともあって飛行機がひっきりなしに低空で飛んでいきます。
毎日飛行機を見て、音を聞いているうちに旅心に火がつき「どこかに行かねば!!」と妙に興奮してしまいました。


短い期間でしたので植物のことで学んだことは僅かばかりでしたが、普段とは違う目線でものを見るきっかけになったことや、今後の自分の見の振り方にもヒントが沢山あった気がして有難いチャンスに恵まれたと感謝しています。


そんな王立植物園での夏の一週間でした。

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