どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2012年2月15日水曜日

2001年02月03日 「2月」



早いもので2001年も1ヶ月が経ちました。


私にとっては会社を辞めて丸2年という節目の月でした。


あれから2年というのが長いような短いような、とても不思議な感覚です。


東京で植木屋を手伝っていたのは遠い昔のような気もすれば英国に来たのはついこの前という感じもします。


昨日は高木潅木セクションのリーダーだったアンディが一身上の都合ということで植物園を辞めていきました。


彼は30代後半で細長い顔に突き出た尖ったあごのアメリカンコミックから抜け出してきたような風貌の良いオトコで、まさに樹のスペシャリストでした。
日本でも最近は樹木医という職業を耳にしますが彼は植物園内の樹木の健康状態を把握して的確にさまざまな処置をほどこしていました。


Tree Surgeryといって文字通りチェーンソーをもって病気の部分、怪我をしている部分をバッサバッサと切ったりします。


ここ英国ではチェーンソーを扱うのには免許が必要で彼は植物園内で数少ない免許保有者で知識、経験も豊富で皆からの信頼も厚かったわけです。


彼がチェーンソーを扱うのはカッコが良くて、見とれることもしばしばでした。


服装も免許にしたがって定められていて、足元は安全靴よりも丈夫なチェーンソーブーツ、ズボンも特殊繊維入り、特殊な手袋、フェイスガード、耳当てつきのヘルメットなど。


ちょっと待てよ、と思ったのが日本で植木屋にいたときのこと。


とあるお宅の庭に枕木を置くことになり、親方に言われて安全面で注意すべきことなどの説明も装備もなくチェーンソーを使っていたのです。
飛んでくるおがくずを目に入らぬように目を細めたりしていましたが、まさに無防備でした。
「ウオッ、右足がちょんぎれたぁ」ってなことがあってもおかしくなかった状況で、今思えば恐ろしいことをしていたものです。


植木屋の足元は地下足袋で、これはこれで木登りの際に足先に木の枝の感覚が伝わってきたり、グリップが良かったりとメリットはあるのですが安全面ではちょっと疑問も残ります。
そしてはしごを使い、あとは木にするすると登ります。


英国での木登りは登山のようにハーネスとロープで安全を確保しながら徐々に登りつめます。
最初は見ていてまどろっこしいと思っていましたが、とても合理的で落下の危険もなく、最近はこうでないと危ないと思うようになりました。


仕事に無理がないというのが基本的な考え方のようです。


話を戻すと、昨日は15時で皆仕事を切り上げてホールで彼の送別会がありました。
ザッと30人ほどのスタッフが集まり、紅茶にビスケットをかじりながら立ち話をしたあとに植物園の最高責任者であるプロフェッサーがはなむけの言葉を述べ、最後にアンディが挨拶をしました。


「ケンブリッジを本当は去りたくない。皆と仕事ができてとても楽しかった。とても感謝している・・・」と簡単に挨拶しましたが彼の目は赤く腫れていました。


よく卒業式で泣くのは日本だけなどと聞きますが、植物園を愛し、皆から慕われたアンディの目に涙が溢れたのはとてもよく理解できましたし、どこでも溢れる感情を表現するのは一緒だなぁと思ってみていました。


一身上の都合というのは聞くと彼はそもそもイングランド北東部のスコットランドに程近いニューカッスルの出身で、彼の奥さんがケンブリッジにどうしても馴染めなくて帰りたいという彼女の希望に沿った決断だったようでした。


自然に溢れた人情味ある北の出身であれば、どこかよそ行き顔のケンブリッジに馴染めないというのは理解できる気がしました。


今日から6カ国対抗ラグビーが始まります。
テレビでの中継もあるので、この週末は自宅にてビールを飲みながら観戦して過ごすつもりです。


寒い毎日かと思いますがどうぞお元気で。

2012年2月12日日曜日

2001年01月28日 「勤労学生より」



東京も3年振りの大雪だとのことで相当混乱しているようですね。


こちらも相変わらず寒いです。
雪こそ降っていませんが0℃を挟んでの毎日です。


植物園では各セクションを定期的に移るのですが、来週から外働きから温室の担当に変わるのでなんともグッドタイミングだと喜んでいます。
温室は気温が常に15度前後に保たれているので寒いということはありません。
湿度も意図的に上げられているので、さながら南国にいるかのようでもあります。


寒いとことのほか体力を消耗すると気付かされます。
1日を通して首をすぼめたりして寒さに抵抗するため全身に力が入っているようで、常に腹筋あたりに緊張感があります。


お茶の休憩時間などに室内に戻ると全身が弛緩されますが、それでも温泉につかるような暖かさではありません。


寒いです。


アパートにはシャワーのみで湯船につかることはなく、自室の電気ヒーターは電力だけイッチョ前に消費する割りにさっぱり暖まりませんので、靴下、靴を履いて、フリースジャケットを2枚重ねし、膝には湯たんぽを置いて暖をとっています。


それにしても安普請で窓からかすかに吹き込む隙間風に耐えながら生活しています。


寒いのは仕方がないとしても、1日のなかのどこかで暖かい体験をしないとかなり辛いというか、ネガティブな気持ちになります。


最近はアルコールを飲んで湯たんぽを抱えて寝るというのが寒さを忘れる手段になってきています。


一方、春は確実に近づいているようすで球根がここそこに芽を出し、落葉樹は硬い蕾をつけていますし、日の出7:45日の入り16:43と日照時間も徐々に延びていっています。
冬至のころピーク時には16時前には太陽が姿を消していましたので大進歩です。


そういえば土曜日に電話代の振込みに銀行へ行ってきました。
もと銀行員なので英国の銀行がどうなっているのかは結構興味のあるところです。


銀行は全ての支店で土曜営業しているわけではなく、市街地、繁華街の一部に限って時間を短縮して営業しているので平日は仕事がある僕としては大変助かります。


通帳というものはなくて月1回送られてくるステートメントという明細書のみ。


科目も普通預金ではなく当座預金でキャッシュカード以外にも小切手帳をくれます。
初めて自分の小切手を切ったときにはとてもエラくなった気分だったのを覚えています。


ときどき自分の口座から誤って引き落とされていることがあるので、買物のときのレシートとステートメントを突合させて消し込んでいくという作業は自分の責任です。


先月のスーパーで買物をしたといわれるもので手元にレシートが無く腑に落ちない41ポンドの買物があったので、請求書に自分のサインがあるのか現在調査を依頼していますが、請求書のコピーを取り寄せるのに6~8週間掛かるというので気長に待っています。


あれ?と思ったら主張しないといけません。


口座を開設するのは結構大変で、僕はヨークで学校にいろいろ書類など揃えてもらってやっとのことで開設できたのですが、ケンブリッジで植物園に一番近い銀行に口座を開こうと思ったら、あれこれとフクザツな書類を揃えろと言われ、「ウチではお断り」ってことだなと察して諦めました。


現在取引のある銀行に一旦口座を持った後は、どういうわけか優良顧客と思われたのかいろんなセールスを受けました。


この前はISAという高金利、非課税の商品を勧められました。


一年での非課税受け入れ上限額が3000ポンドで年利6.75%とのことで、一年で利息が200ポンドもつくので即申し込みました。
利息でちょっとはマシなものでも食べられそうだったので有難い申し出です。


あるときは僕のキャッシュカードを一瞥して「これは新規のお客様に発行しているもので、今日はこれをVISA付きのカードに切り換えておきます。」と言われて怪しい一見の東洋人客から優良顧客様にたちまち大変身です。


その担当者と話していて、僕の口座には当座貸し越し枠が1500ポンド、キャッシュローン15000ポンドも設定されていることが判明し、「オイオイ、大丈夫かよぉ」とこちらが心配になりました。


年収以上のキャッシュローン枠ですよ。


諸手続きのなかで色んな質問をされるのですが、いつも戸惑うのが職業を訊かれたとき。


学生でもあり、勤労者でもあり、何なんだろうオレは?と難しいところです。


学生証も持っていれば、定期収入も僅かながらある。


まぁ勤労学生ってことです、と説明します。


何かしら罪を犯して新聞沙汰になったらどういう風に自分の肩書きが載るのかなどと想像した土曜日の昼下がりでした。

2012年2月2日木曜日

2001年01月14日 「ジョン」


ジョンというのは何も犬の名前ではございません。

植物園に勤めるスタッフでなんと16歳からこの植物園に勤めているという、植物分類花壇セクションのリーダーで僕と同じ年の独身英国人です。

彼の天性のユニークでオープンな性格と歳が同じだということで仲良くなりました。

彼のユニークなことは、他の人の趣味や主張に迎合することなく、我が趣味、主張を貫くことです。

しかもそれがお人柄なのでしょう、まったくイヤミがないというかむしろ僕は好感を持ってみています。
オモシロイやつだな、と。

彼の趣味の代表は「天気」でしょうか。
それはもう趣味の域を超えライフワークといえるかもしれません。

一旦天気の話になると止まりません。

雲のこと、気温のこと、降水量のことなど、特に大雨、豪雨、雷、雪、最低・最高気温など何かに特化した異常気象に尋常ならぬ興味を示します。
もともとは植物園内に百葉箱があり日々温度や知湿度などの基本的な気象要素を記録する係になったことに端を発しているようです。

地声がとても大きくて、それだけで裏表のないストレートな性格だと想像できるのですが、その大声で延々と天気の話を聞かされるとドッと疲れてしまいます。

他にも彼の趣味は、旅行、ワイン、チーズ、買物、株などで、買物といってもブランド品を買い漁るのではなく、近所のスーパーのポイントを貯めてそれを使って旅行をしたりするのです。

それはコツコツと貯めるといった感じではなく、車のない若手トレーニーを相手に「車でスーパーまで買物に付き合うからポイントはオレに頂戴ね。」という交渉をして一度に3人くらいの引き連れてスーパーに行くという貪欲さです。
この発想がすでにユニークというか笑っちゃうわけです。

それ以外は質素なもので着るものなどにも頓着しません。

この前ジョンが「あのサ、スエーデンのカルーナというところに氷で出来たホテルがあって、それがスゴク良いらしいんだけど興味ある?」と聞くので「あるある」と答えたところ、彼の家でパンフレットを見ながら一緒に検討しようということになりました。

その日の夕方植物園で仕事を終えると「何時頃来る?」と聞くので「そうねぇ、19:30頃かなぁ。」というと「分かった、食事も用意するから。遅れても良いけど19:30より早く来ないでね。」と不思議なことを言われました。

この辺もジョンらしいところです。

僕は約束の19:30よりも早まることなく手土産の定番であるワインを持って彼の家に到着しました。

飼い犬のBodo(ボードー)が狂ったように大歓迎してくれました。

家には彼の母親と妹がいてしばし雑談を交わしたのですが、二人ともジョン同様に声が大きいので笑ってしまいました。

1時間もしたでしょうか、そろそろお腹が減ったなぁと思った矢先にタイミングよくジョンが「マサヤ、ハギス食べたことある?」といいます。

ハギスはスコットランド料理ですがクセがあるので嫌いだという人も多いのです。
僕は結構好きだと伝えると、おもむろに袋に書いてある調理法を読み始めました。
それは単にお湯で茹でるだけのはず。

「ナニナニ、あーナルホド、お湯に入れて60分茹でるのかぁ。」ってこれから更に1時間ってことか?と空腹感がつのっていたのでちょっとカチンときました。

ことはそれで終らずさらに続きます。

付け合せのポテトを茹でているときにも会話に熱中して時間を忘れたためマッシュドポテトでもないのにマッシュしたかのようにイモの原型をとどめていません。

なんかマズそうなのです。

途中で旅番組でアイスホテルについてやっていたのでビデオに撮ってあるのでそれを見ようということになったのですが、そもそも整理整頓とは無縁の性格のようでビデオのどの部分にそれが録画されているのか自分でも分からなくなっていました。

大笑いしたのは、その旅番組を探すためにビデオを早送りしたのですが、そこに映っていたのはほとんどが「天気予報」だったことです。

天気予報を録画してみるっていうその天気オタク度に頭が下がりました。

早回ししながらも、最近の英国の異常気象を伝える場面になるたびに早送りを止めて「ホラ、これがこの前大風がふいた時サ。分かるだろ、この低気圧がさ・・・」と延々と解説を加えるのです。

お母さんも妹さんも頷きながら聞いています。
どうやらとてもユニークなお宅にお邪魔したみたいです。
お腹減ってないのかなぁ。

アイスホテルはその名のとおりホテルそのものが氷で出来ていて、マイナス××度というなか氷でできたベッドにトナカイの毛皮をひいて寝袋でねるというもので、追加オプションで空港からは犬ぞりでホテルまで行けるのだとか。

普段節約家で好きな言葉が「バーゲン」というジョンが選ぶ旅なので本格的な安上がりな旅を想像していたのですが、そのツアーは1週間で総額1000ポンドもします。

「ウエッ、高い!」とおよび腰になっていたら「どうよ、マサヤ。いいだろ?」とウインクします。

「思ったより高いんじゃない、コレ」「そう、ちょっと高いんだ。でもサ全て氷でできたホテルに泊まって、今の時期昼でも薄暗いっていう極地の体験ができるんだからサ。オーロラも見れるかもしれないし、人生何度もある旅じゃないヨ」なんて会話があってどこかスッキリしないながらも話をすすめることにしたのでした。

そんなやり取りの末、ようやく待ちに待った夕食にありつきました。

時間はなんと22時15分。

家にきてからおよそ3時間たって食事になると分かっていれば何か軽く食べてきたのに。
呆れるよりはむしろジョンらしくて笑ってしまいましたが。

彼はいつか日本にも来たいと言っています。

ここにも彼の壮大な計画がありました。

それはスーパーのポイントを貯めてくるというもの。
僕も何度か一緒に行ったことがありますが、彼はスーパーに到着するとまずエントランス脇にある専用マシーンで「今日のお買い得」「今日のボーナスポイント商品」といった情報を取り出して、どうやったら効率的にポイントを稼げるか目処をつけます。

笑ってしまうのはこれをスーパーの店員よろしく僕らに売り込んでくることです。

「ハムいらない?ハムは今日だけ200ポイントボーナスがつくんだけど。」とすり寄ってきますので、必要のあるものであれば協力しますがそうでなければ無視です。



彼も一緒に買物をするのですが、その買い方も徹底していて笑ってしまいます。

夜のスーパーは賞味期限切れが迫っているものに赤札が付けられて安くなります。
彼の買物用の押し車(トローリー)には赤札商品が満載です。

嬉しそうに僕に見せたのはタラのすり身ペーストでなんと10ペンス(18円)で、本日賞味期限の赤札商品でした。

よくこんなもの探してくるなぁと感心してしまいます。

こちらのスーパーでよくあるのが「buy 1 get 1 free」というもので「ひとつ買えば次のひとつはオマケ」みないなもので、これと赤札商品をうまく組み合わせると節約効果は高く、彼はそのあたりも抜け目がありません。

彼に今日までの成果を尋ねると「パリ往復分くらいはある」と胸を張って言っていましたが、彼がマイレージを使って来日するのはいつの日でしょうか・・・。

そんなユニーク英国人ジョンのお話でした。




2012年1月22日日曜日

2001年01月07日 「年末年始」


気が付いてみればアッという間に新年も1週間経ちました。



暮れに降った雪は元旦に少々気温が上がったのと、雨が降ったため跡形もなく消え去ってしまいました。
どんどん下がる気温に恐れおののいていたのでホッとしています。
冬至以降僅かながら日の長さも着実に延びてきているようで春はまだ遠いながらもどことなくウキウキしてきます。
早く芝生の上でゴロゴロしながらビールを飲みたいものです。


クリスマス、正月と休むことなく通常通りに植物園で仕事をしていましたが、ちょっとくらいはクリスマスのスペシャルな気分を味わおうとちょっとだけ贅沢を試みました。


いつもは1本500円前後のワインですが奮発して3500円のワインを飲んでみたり、いつもはセインスベリーという庶民的なスーパーを利用していますがマークスアンドスペンサーといったチョイ高級スーパーでラム肉を買うなどささやかなスペシャルを楽しみました。


クリスマスといえば七面鳥でしょうけど、僕一人ではとても食べきれませんのでラム肉になりました。
七面鳥はニワトリの比ではない大きさで、冷凍の七面鳥はバスケットボールくらいの大きさがあり、専用の大きなアルミホイルも売っていてアルミホイルの幅が1メートルもあります。


大晦日の夕方から植物園のなかでスタッフのジョンとマークと僕の3人で焚き火をして過ごしましたがこれが結構楽しかったです。


ジョンが「夕食は心配するな。焚き火でバーベキューするから。」と言われビールとワインを持って集合しました。


しかしバーベキューとはいってもソーセージを一人当たり3本焼いてそれをパンにはさむだけの英国人好みの質素なものです。


しかも1本目は焚き火の薪のやまが崩れてバーベーキューの網を直撃しソーセージは見事に灰の中に埋もれてしまう大失態。


気を取り直して2本目3本目といきましたが火力が強いのと会話に夢中になるためアッという間にソーセージは真っ黒になってしまい、お世辞にも美味しいものではありませんでした。


途中から大粒の雨が降ってきて、簡単な雨よけを丸太とトタンでつくって雨に耐えながら酒をのみ更に話が弾みました。


酒がすすみ、徐々に良い気持ちになってきて酔った勢いで3人で深夜の植物園をわがもの顔で闊歩し、まだ厚い氷のはった池の上に立てるかと度胸試しをしたり、植物園の外周を流れる小川にボートを浮かべ一人が乗り込み残り二人がロープで引いて遊んだり、さらにはそのボートを今度は陸に上げて園内の雨にぬかった歩道をドロだらけになりながら押して滑らせたりと、まぁメチャクチャでした。


23時には解散したのですが相当飲んだためフラフラで自宅に戻りそのまま眠ってしまいました。


ケンブリッジで新年を迎える瞬間とはどんなものかと興味があったのですが、日付が変わる前に既に正体不明で気が付いたときには既に21世紀に突入していました。


元旦の植物園は閉園で一般開放されていないので、最低限の3人のスタッフで植物の世話をしました。


ジョンもいて「昼飯は昨晩の焚き火の残り火で楽しまないか?食材は心配するなよ。」というので、あまり期待せずにいると昨晩と全く同じソーセージとパンでした。


しかもジョンが「悪いけど今日のパンはあんまり良くないんだ。」というのでどういう風に良くないのかと思ったら冷凍したパンを解凍したもので一部はべチョべチョ、一部は「おふ」のように乾燥して硬くなったスゴイものでしたが今更驚きませんでした。


それにたっぷりケチャップをかけて缶ビールを飲みながら焚き火にあたり、なんともノンビリしたお正月でした。


振り返ると寂しい思いもせずまずまず楽しい年末年始だった気がします。





2012年1月14日土曜日

2000年12月31日 「御挨拶」



いよいよ大晦日です。


寒いです。


木曜日に雪が降ったあともその積もった雪が解けることもなく寒い日が続いています。


ナント昨晩は一部の地域でマイナス11度まで下がったらしく、ラジオではケンブリッジの日中の最高気温も0度もしくはマイナス1度などと言っています。


もはや倹約、節約などと悠長なことは言っておられず寝ている間も電気だけくってあまり効かないラジエーターをつけているのですが、それでも寒くて靴下を履いてフリースの帽子をかぶって寝ています。
頭から奪われる熱というのもかなりのものなのでしょう。
帽子ひとつで随分暖かく感じます。


夕食に牛肉を焼いたのですが、換気をすると部屋が寒くなるのに加えて料理も片っ端から冷めてしまうので、換気は無視して煙に包まれながら食事をしました。


植物園への道も凍ってスケートリンク状態でしたので慎重に自転車を操り、どうにか今日のお勤めをこなしてきました。


現在任されている温室は常に15~20度に温度が保たれていて、一旦働き始めるとすぐに身体が暖まってティーシャツ一枚になり天国のようです。


植物園のキューレーターであるティムに「年末年始はハンガリーに行くのでその間猫の面倒をみてくれないか。」と頼まれ、植物園の中に建つコテッジに住むティムの家に2匹のクロネコの面倒をみにいくことも日課です。
猫たちとちょっと遊びたいところですが、僕は猫アレルギーなのでエサをやってサッサと帰ります。


ティムの家は温室のボイラーと熱源をともにしているため24時間暖かいのです。


フト自分の部屋の寒さを思い出し悔しくなりました。というのはこの暖かさを今享受しているのは人間ではなくネコ様だからです。


そのネコ様が召しあがるのは缶詰とフレークタイプの2種類のキャットフード。
フレークは「Go Cat」というもので袋には「ビタミンAが視力を守り、カルシウムが強い骨と歯をはぐくみ、シャキシャキした食感がネコの歯を丈夫にし・・・」とあります。


ネコ2匹で豪邸を独占し、人間の専用飼育係(この場合、僕)を擁し、暖房がきいて、栄養バランスの良い食事をして・・・と「なにやらオレよりもよっぽど良い暮らしじゃん。何がゴーキャットじゃっ!」と本気で嫉妬してしまいました。


ティムが戻るのは1月2日。
それまでネコ様のお世話は続きます。
ネコアレルギーだというのに。


日本との時差は現在9時間。


そちらで新年を迎える頃こちらはまだ31日15時で植物園にてバタバタしていると思います。


天気次第ですが今晩は植物園内で丸太などを燃やして焚き火をしようとジョンというスタッフと話をしています。
ワインやビールを持寄ってトコトン飲もうじゃないのということで楽しみです。


元旦のいつもの時間通りに植物の世話とネコの世話をします。


ラジオでは2001年へのカウントダウンなど大騒ぎですが、そんなことはどこ吹く風といった感じで平常心にて淡々と21世紀を迎えます。


2001年はヘビ年ということで僕は年男です。


36歳、まがうかたなきオッサンですが、新たなる21世紀は庭師として開花することを目標に日々一歩一歩階段を上がっていきたいと思います。


どうぞ2001年もよろしくお願い申し上げます。


21世紀問題や、大晦日、元旦のメールは混み合うのだそうですので混乱を避けて一足早く暮れの御挨拶と新年のお喜びを申し上げる次第です。

2012年1月11日水曜日

2000年12月29日 「異常気象」



昨日、一昨日と寒い寒いとは思っていたのですが、ついに昨夜未明より雪が降りはじめ15~20センチ積もりました。


今朝5時半に起きて外を見たときにはあたり一面雪化粧でした。
これはイングランド東部にあるケンブリッジにして珍しいこととのこと。


いつもより30分早く植物園に行ってまだ暗い植物園を一人歩いてまわりました。


今日は平日ながらクリスマス、年末年始休暇中ということもあり予定されている出勤メンバーは7人だけ。


さらに定刻に植物園にいたのは僕一人だけで、皆「雪で車のバッテリーがあがった」「雪で車が動かない」など、雪を理由に悠然と悪びれる様子もなく遅刻してきます。
日本でサラリーマンとして10年間過ごしてきた者としては、雪ならそれを計算して家を出ろという教育を受けてきたので、改めて英国のノンビリした様子に文化の違いを感じました。


あたり一面の銀世界、しかも水をうったように静かな植物園というのはどこか浮世離れしていて神秘的ですらありました。
ただ静寂は開園までで、開園と同時に結構な人が押し寄せて雪景色を楽しんでいました。


園内では各セクションのリーダーがトランシーバーを持って連絡を取り合っています。


屋外にいるスタッフもいるので内線電話というわけにもいかないわけです。


普段ぼくのようなトレーニースタッフにはあまり関係ないのですが、申し上げたように今日は7人で植物園を運営し、僕は温室を任されていたのでトランシーバーを渡されました。


トランシーバーの音が良くないこともあって聞き取りずらいので僕はあまり好きではありません。


「もう一度言ってください。」と言うのも1回、2回が限界ですし、いつもそうしていると信頼を失いそうです。


かといって分かったフリをするのも意味がありません。


トランシーバーの会話はトランシーバーを持っている全ての人の耳にはいるのでそのへんも緊張感を煽ります。


まぁ内容的には大した内容でないことが多く、例えば、
「アー、BG5からBG10へ。ドウゾ。」
「こちらBG10。ドウゾ。」
「アー、間もなく温室の扉の鍵を開けるけど、準備はどの程度進んでいますか。ドウゾ。」
「全く問題無いッス。ドウゾ。」
といった他愛のないものです。
いざトランシーバーを渡されるとイッチョ前のデキるスタッフになった気分です。


と、マジメに仕事をしていそうですが、一通り水遣りをすませると皆大してやる仕事も少なかったため、カメラ片手に植物園内を散策したり、雪合戦をしたり、雪だるまを作ったりしてノンビリしたものでした。


一般の来園者がいるのをよそにスタッフが真剣に雪合戦に興じるというのも御愛嬌でしょうか。


いつも節約してなかなか自分の部屋の電気ラジエーターのスイッチを入れないのですが、さすがにこの寒さにはそんなことを言っておられず、寝ている間もつけっぱなしにしました。
それでも部屋で吐く息が白く危険な感じがします。


そんな2000年残り3日の雪便りでした。

2012年1月5日木曜日

2000年12月26日 「ボクサー」



本日は12月26日。
ボクシングデーという国民の休日で世の中はまだまだお休みです。


さすがボクシングの発祥の国イギリスだけあってこの日は国民全てがボクサーと化します。


新年を迎えるニューヨークで誰かれ構わずキスをするのと同様、今日は誰かれ構わず殴って良いということになっているようで、ヘッドギア、マウスピース、グローブといったいでたちの人が目立ちます。
僕も早速体格の良いおばさんから2発食らってしまいました・・・というのがボクシングデーかなと思ってしまいます。


ボクシングデーって何でしょう?


そもそもはクリスマスプレゼントの箱(box)を開ける日ということに由来するようですが、とにかく街はまだお休みモードです。


昨日のクリスマスにケンブリッジの街の様子を観察してきましたが、見事なほど閑散としていて廃墟のようでした。


歩いているのは東洋人の観光客程度で、店は軒並み閉まっていて、昼の2時間だけパブが時間限定で開店しビールが飲めるといった程度でしょうか。


街に出ても寂しいだけで、加えて今日の最高気温が4度などといっており、ひょっとするとホワイトクリスマスになるかもしれず自宅でノンビリするのが正しいと申せましょう。


ボクシングデーの今日はマクドナルド、スターバックス、バーガーキングなどのアメリカ資本のファストフード店と一握りの店が開いており、人出は昨日よりも多く活気がありました。


多くの人は明日からあちこちで始まるクリスマスセールの下見兼ウィンドウショッピングを楽しんでいるようでした。


僕はまったくの平常通り、植物園にて水をやっていました。


結構大きな温室があり熱帯植物の世話が欠かせないのです。


熱帯の環境により近づけるためにヒーターで15度くらいに保たれています。
水をやると湿度もあがり、熱帯のそれに近づくので寒さの厳しい外とは別世界でちょっとした海外旅行をしたような気になり楽しいものです。


温度をあと10度ほどあげたほうがより熱帯らしいのでしょうが、それにはコストとの兼ね合いがあります。


あまり植物にとって理想的な環境に近づけると育ち過ぎてしまって温室という限られたスペースで育てるにはその辺のコントロールも考慮せねばなりません。


生かさぬよう、殺さぬようといったかんじでしょうか。
ちょっと可愛そうな気もします。


動物園で飼育係がライオンに襲われたというニュースを時々耳にすることがありますが、植物園では植物に襲われることはなさそうで胸をなでおろしています。
しかし全く安全かといえば否で、鋭いトゲが突き出した植物もあれば、毒性の強い植物もあります。
芝刈機など機械を使っていてケガをすることもあえるでしょう。


安全のために植物園ではつま先に鉄板の入った安全靴の着用が義務付けられています。
日本の植木屋で素足感覚の地下足袋を履いていたというのは英国の安全基準に照らすととんでもないということになりますね。


確かに作業中に丸太が足に落ちるという経験を日本でも英国でもしましたが、コチラでは涼しい顔、アチラでは悶絶でした。


植木屋でキョウチクトウを剪定して、切ったものを担いでトラックに積む作業をしていて樹液のついた首周りがものすごくかぶれてニッチもサッチもいかなくなったことがありました。
植物園では一番初めにそういった毒性のある植物に関しての講義がきちんとあり安全に関する認識の違いを感じます。


そんなわけでクリスマスのつつがなく過ぎてあとは21世紀を迎えるのみといったところです。