どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2012年2月15日水曜日

2001年02月03日 「2月」



早いもので2001年も1ヶ月が経ちました。


私にとっては会社を辞めて丸2年という節目の月でした。


あれから2年というのが長いような短いような、とても不思議な感覚です。


東京で植木屋を手伝っていたのは遠い昔のような気もすれば英国に来たのはついこの前という感じもします。


昨日は高木潅木セクションのリーダーだったアンディが一身上の都合ということで植物園を辞めていきました。


彼は30代後半で細長い顔に突き出た尖ったあごのアメリカンコミックから抜け出してきたような風貌の良いオトコで、まさに樹のスペシャリストでした。
日本でも最近は樹木医という職業を耳にしますが彼は植物園内の樹木の健康状態を把握して的確にさまざまな処置をほどこしていました。


Tree Surgeryといって文字通りチェーンソーをもって病気の部分、怪我をしている部分をバッサバッサと切ったりします。


ここ英国ではチェーンソーを扱うのには免許が必要で彼は植物園内で数少ない免許保有者で知識、経験も豊富で皆からの信頼も厚かったわけです。


彼がチェーンソーを扱うのはカッコが良くて、見とれることもしばしばでした。


服装も免許にしたがって定められていて、足元は安全靴よりも丈夫なチェーンソーブーツ、ズボンも特殊繊維入り、特殊な手袋、フェイスガード、耳当てつきのヘルメットなど。


ちょっと待てよ、と思ったのが日本で植木屋にいたときのこと。


とあるお宅の庭に枕木を置くことになり、親方に言われて安全面で注意すべきことなどの説明も装備もなくチェーンソーを使っていたのです。
飛んでくるおがくずを目に入らぬように目を細めたりしていましたが、まさに無防備でした。
「ウオッ、右足がちょんぎれたぁ」ってなことがあってもおかしくなかった状況で、今思えば恐ろしいことをしていたものです。


植木屋の足元は地下足袋で、これはこれで木登りの際に足先に木の枝の感覚が伝わってきたり、グリップが良かったりとメリットはあるのですが安全面ではちょっと疑問も残ります。
そしてはしごを使い、あとは木にするすると登ります。


英国での木登りは登山のようにハーネスとロープで安全を確保しながら徐々に登りつめます。
最初は見ていてまどろっこしいと思っていましたが、とても合理的で落下の危険もなく、最近はこうでないと危ないと思うようになりました。


仕事に無理がないというのが基本的な考え方のようです。


話を戻すと、昨日は15時で皆仕事を切り上げてホールで彼の送別会がありました。
ザッと30人ほどのスタッフが集まり、紅茶にビスケットをかじりながら立ち話をしたあとに植物園の最高責任者であるプロフェッサーがはなむけの言葉を述べ、最後にアンディが挨拶をしました。


「ケンブリッジを本当は去りたくない。皆と仕事ができてとても楽しかった。とても感謝している・・・」と簡単に挨拶しましたが彼の目は赤く腫れていました。


よく卒業式で泣くのは日本だけなどと聞きますが、植物園を愛し、皆から慕われたアンディの目に涙が溢れたのはとてもよく理解できましたし、どこでも溢れる感情を表現するのは一緒だなぁと思ってみていました。


一身上の都合というのは聞くと彼はそもそもイングランド北東部のスコットランドに程近いニューカッスルの出身で、彼の奥さんがケンブリッジにどうしても馴染めなくて帰りたいという彼女の希望に沿った決断だったようでした。


自然に溢れた人情味ある北の出身であれば、どこかよそ行き顔のケンブリッジに馴染めないというのは理解できる気がしました。


今日から6カ国対抗ラグビーが始まります。
テレビでの中継もあるので、この週末は自宅にてビールを飲みながら観戦して過ごすつもりです。


寒い毎日かと思いますがどうぞお元気で。

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