どうして「スバラシキ英国園芸ノススメ」なのか

ちょっと読んで 「あんまり面白くないなぁ」 と思った方。
騙されたと思ってしばしお付き合い下さい。

7年間の英国留学中にしたためたメールは300を越えました。
そしてこれが 「尻上がり的」 に面白くなっていくのです。

当初の初々しい苦学生の姿から、徐々に英国に馴染んでいく様子は100%ノンフィクションのリアルストーリー。

「スバラシキ英国園芸ノススメ」の旅はまだ始まったばかりです。

2011年4月19日火曜日

1999年10月17日 「秋の夜長に」

こんばんは。

現在金曜日21:00、一週間を終え一息ついているところです。

先週、先々週と週末は2週連続でラグビーのワールドカップ観戦に片道6時間ほどのウエールズまで行ってきました。チケット代、交通費、宿泊費と随分な出費でしたが、開催国に住んでいながらナマで見ないテはないとムリムリ行ってきた次第です。


日本代表チームの結果は残念でしたがナマの迫力、雰囲気を存分に堪能しました。特に先週のウエールズ戦では、スタジアムに向かう電車のなかはほぼ90%ウエールズの赤いジャージを着たサポーターで埋まる「ラグビー列車」で見たところ車内で唯一の日本人である僕は皆の好奇な視線にいたたまれなくなりタヌキ寝入りをしてその場を凌ぎました。

ラグビーは観戦にとどまらず、学校のクラブに所属し月曜と水曜の週二回ナイターのもと練習しています。チームメイトは20代前半のイキのいい奴らが大半で30を超えたオッサンは僕一人ですが、植木屋で鍛えた基礎体力をいかして若いモンには負けません。先週の火曜日の夜の練習試合でおでこを蹴られてものすごいコブができて、またしてもイビツ頭に拍車がかかってしまいました。さらに次の朝鏡を見てみると目の周りが内出血して四谷怪談のような風体で学校でも皆が振り返る目立った存在でした。

今は金曜日の夜ですと書きましたが、ようやく訪れた平和にホッとしています。というのは学校そのものは年配の生徒もいるのですが、寮にいるのは10代、20代の若者がほとんどで夜中に酔っ払ったヤツらが叫んだり、廊下を走り回ったりと大変なのです。そんな彼らも金曜の夜から日曜日にかけて帰省するため寮はひっそりと静かなのです。

授業も本格化してきまして、当初は何のことやらということが多かったのですが、最近は手探りながらもナルホドと理解度があがってきました。科目としては「芝から雑草までの草全般」「挿し木、接ぎ木、植物の繁殖」「土壌」「病害虫」「生物学」「樹木、森林管理」「エンジニアリング」「ランドスケープ」「野菜・果実」「ガーデンデザイン」などなのですが、「こりゃあまり関係がないな」と思われるものもあります。

エンジニアリングなんてその最たるものでチェーンソー、トラクターといった機械を使うことがあるためか、2サイクルエンジンとは、4サイクルエンジンとはなどと言いながら「つなぎ」と「安全靴」といった工業高校的いでたちで授業をやっているんですから、どこが園芸?って感じです。


授業の科目のひとつに「Plant ID」というものがあります。ID はidentification ということで、日本語でいうと植物同定試験となるでしょうか。これは毎週20の植物の課題を与えられ、試験のときには机の上にならべられた番号をふられた植物の名前を解答用紙に書いていくというものです。ここでいう植物名は学名、すなわちラテン語で「属」「種」「品種」についてスペルも含めて正確に答えねばなりません。植物の特性を判断するのはモチロンですが、記憶力がポイントで脳みそが硬くなりつつある自分には毎週ツライです。人間の記憶容量に限界があると仮にしたら、もっと他に覚える英単語とかありそうですが。

周りが静かなためでしょうか、筆がのってきました・・・。


こちらの生活にも慣れてきましたが、少々飽きてきたのは食べ物でしょうか。毎日イモばかりで、しかも脂っこいものが多いので日本食が恋しくもあります。でも、日本でフィッシュアンドチップスを食べたときに2,000円近く払ったのに味が似て非なるものであったことを思い出すと、いまの内に本格的イギリス料理を食べておくべきだなと思っています。

こちらの人は日本人と基本が違うと思うこともあります。例えば寮の食堂で朝食に僕は目玉焼き、ソーセージ、ベイクドビーンズ、牛乳、トースト、紅茶といったものをチョイスするわけですが、その隣で10代の太ったクラスメートはコーラとポテトチップスを食べています。彼が特殊な人間で例外なのではなく、結構そういう輩が多いのにはタマゲます。

朝食8時、昼食12時、夕食17時となっており、特に夕食はさしてお腹も減っていないのに、「これを逃すと翌朝までなにも食べるものがない」と思うとついつい食べてしまいます。学校のまわりにはコンビにはおろか「店」というものは一切無く、この村の唯一の商業施設であるパブまで街灯のない牛がモーッという脇を15分歩いてようやくたどりつくといった辺鄙さなので、まさに夕食は何かを口にするラストチャンスなのです。この食堂での食事はバランスも悪く、間違いなく肥満をよぶものですので今度会ったときに別人のごとく丸くなっているかもしれません。

毎日欠かさず図書館で復習、テスト勉強をし、クラブ活動で汗を流し、繁華街にも滅多に繰り出さず、テレビも見ないと品行方正な清く正しく美しい生活を実践しております。この一年の留学を終えて何をするのかといった問題も未解決ですので、その辺も日々思案しておりますが、まだこれといった考えも浮かばず不安です。

筆がのってきたのをいいことに随分長くなりました。今日はこのへんで。

日本は今が一番良い季節ではないでしょうか。どうぞお元気で。

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